View of the World - Masuhiko Hirobuchi

August 17, 2005

旅立てない若者たち -学生へのメール

「サマータイム」の歌に幸福の原型が歌い込まれているーーということを前回書きました。この大ヒット曲の2番がまた胸を打つものです。正確な歌詞をインターネットなどで調べているのですが、まだ手に入りません。そこで記憶に頼ったものを記します。「ある朝お前は両の翼を広げて旅立ってゆく。希望に燃えて父さんと母さんのもとを去って行くのだ。前途にどんな苦しみがあるのかだれも知らない。でもね、その日まで、母さんと父さんはお前のそばにいてあげるからね」。小さい赤ん坊に歌って聞かせた第一節に続くものです。アメリカといわず、ほとんどの先進国では、子供は大きな可能性と夢を求めてある日両親のもとから旅だってゆくものです。親は子供の可能性や将来を縛るようなことはしない。愛する子が自分たちのもとを去るのは寂しいにきまっている。でも本当に子供を愛している親は、寂しさをぐっとこらえて、旅立ちを祝福するものです。私の『スヌーピーたちのアメリカ』の中にもあるように、「若者はある日、希望に燃えて旅立たなければならない」のです。だがが今の日本で、大学4年生の男子の中に、「実家から通える会社に就職したい」とか「転勤がある会社はいやだ」とか、「転勤がまったくない市役所か町役場に就職したい」と堂々と(?)いう人が多数います。地元企業や役所に入って「何がしたい」という目標はない。生まれた所に職を得て、一生その町で暮らすのが理想の生き方だと心得ている若者がじつに多いのです。「自分の可能性を試すためなら世界のどこへでも出かけてゆくという気にならないのか?」「生まれた所で一生暮らす人生なんて平凡で退屈すぎないか?」と聞いても、「そのことのどこが悪いの?」という顔をしています。こうした好みの背景には、親が息子を手放したくないという気持が働いているようです。親の利己主義なのか、過保護なのか? 私などから見れば実に情けない話です。あまりにもスケールが小さすぎます。「サマータイム」が歌われるオペラ『ポーギーとベス』は、1930年代のアメリカ南部の貧しい黒人たちの物語ですが、「ある日お前は翼を広げて旅立ってゆく」というイメージがじつにいいです。でもその時までは母さんと父さんがお前のそばにいてあげる。(だからいっさいの心配なくぐっすりとおやすみ)。私などには「じーん」とくる歌なのですがーー。

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COMMENTS

1 : tiakujyo : August 18, 2005 03:28 PM

「じーん」ときて、読みました。
生まれ変わっても、「母さん」になりたいと思ってます。
そんなこととはつゆ知らず、わが子らは、できるだけ早く親元から
離れたいと、旅立ってくれました。それでよかったんですね。


[from Hirobuchi]

いただいたコメントにお礼を言いますとかえって恐縮される方がいらっしゃいますが、やはりこのコメントには私も感動しました。学生たちは『自分がなにか批判されてる』と思った人もいるようで、反応はいまひとつです。ここは現在の若者がどうのというより、永遠に変わらざる母親の愛に感動する場面なのですがーー。そこのところを的確に捉えていただき感謝の気持でいっぱいです。