View of the World - Masuhiko Hirobuchi

August 26, 2005

「メンター」って何? -学生へのメール

何年も前から「メンター(メントール)」という名前の大切さを授業の中で話してきました。大学によって講義のタイトルは変わりましたが、「国際教養論」というのが主です。授業を受けた学生は1,000人を越しているはずです。しかし多くの学生にはまったくぴんと来ていませんでした。「それがボクの実生活とどんな関係がるの?」という顔をしていました。アメリカやヨーロッパのインテリたちはまず100パーセントこの名前を知っています。もとは固有名詞だったものを今は普通名詞として、ひんぱんに使っています。しかし日本での知名度はいまひとつです。ところが、8月20日の朝日新聞 Be on Saturday の中に、ようやくこの言葉が登場したのです。伊藤忠商事が創設した、女性による社内カウンセラー制度のことです。さすがは世界の伊藤忠です。これを提唱した女性が大きく扱われていました。2面に「メンター」の語源が解説してあり、「ギリシャ神話の英雄の助言者」とありました。ちょっと物足りない解説です。 Mentor は、トロイを木馬の計で滅ぼしたイタケの王オデッセウスの息子テレマコスの家庭教師。人格識見ともにすぐれた「師匠」です。オデッセウスが全幅の信頼を寄せていた人物。このあまりにも有名な「先生」は、のちのちまでお師匠さんの模範とされ、「私のかけがえのない恩師」といった意味に使われてきました。 He is my mentor. といった具合にです。このメントールが、21世紀の日本の代表的商社のきちんとした役職名になったのです。古典についての知識の重要性を知ってください。

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COMMENTS

1 : エセ男爵 : August 27, 2005 11:34 AM

はじめてコメントさせて頂きます。
わたくしこと、monkyさまからご紹介頂いた不肖「エセ男爵」です。
宜しくお願い申し上げます。

さすが、素晴らしいブログです。
mentorの意、同感です。
たびたびお伺いし、可能な限り既投稿記事を拝読させて頂きます。
尚、
まことに恐縮ですが、当記事に深く感銘し興味を持ったものでありますから、関連記事を我がブログに記載させて頂きました。ご覧下さればまことに光栄です。
宜しくお願い申し上げます。
http://blog.goo.ne.jp/baron24ese/

2 : 湖の騎士(相当にキザなニックネームです) : August 27, 2005 08:11 PM

エセ男爵様

こういう優雅なニックネームをお作りになるセンスというのはすばらしいと思います。私の「メンターって何?」をお読みくださり、ただちに英々辞典、英和辞典をお調べになる行動力の早さに敬意を表します。私の場合はメンターは英語の普通名詞として認識するより前に、オデッセウスの息子の家庭教師としての情報が頭に入っていたので、あまり迷うことはありませんでした。現代のアメリカ企業に「制度としてのメンター」が定着しているのかどうか、この点については朝日新聞を読むかぎりでは相当に普及しているようですね。さらによく調べてみます。高校生の会話をはじめ諸現象にお腹立ちのようでうすが、ブログ上でそうした具体例をまた公開なさってください。 [from Hirobuchi]

3 : いじわるじじい : September 6, 2005 02:00 PM

朝日のメンターの記事は読んでいたのですが、私は陸上自衛隊のプロペラ練習機T-34が頭に浮かんでしまいました。これも「師匠」からきたのですかね?

4 : ラ・マンチャの男 : September 6, 2005 06:38 PM

いじわるじじい様 コメントを有難うございます。「湖の騎士」というニックネームはさすがに「カッコよすぎる」とのご批判によりこのたび改名(?)して「ラ・マンチャの男」を名乗ることにしました。さっそく読者の方から「せっかくコンピューターに覚えさせたのに」とお叱りが来ています。さてメンターと陸自のT-34の関係ですが、これはやはり「師匠」から来たのだと思います。本文中にもありますように、メンターはもともと「固有名詞」ですから、この意味しかないといえます。命名者は意識してこの名前を用いたのでしょう。詳しいことが分かったらまたお知らせします。