View of the World - Masuhiko Hirobuchi

September 25, 2005

50本のバラ -学生へのメール

人は気の持ち方でどんな疲れも吹き飛ばせるし時には絶望感も希望に変えられるというお話。豪雪がコロラド州一帯を襲った夜、飛行機はどれも大幅におくれ、乗り継ぎで次の便を待っている客たちは待合室でくたびれ果てていました。ようやく数時間おくれで乗り継ぎ便が到着、乗客たちは航空会社の手際の悪さをなじり、豪雪に見舞われた身の不運を嘆いていました。機がようやく飛び立っても、だれもが不機嫌でした。そのとき一人の中年男性が乗客たちににこやかに語りかけました。「皆さん、実は私の婚約者が次の空港で待っています。今日は彼女の50歳の誕生日なのです。そこでお願いがあります。ここに50本のバラの花があります。次の空港に着いたら、彼女に「ハッピーバースデー」と言って、お一人が一本ずつこのバラを渡していただけないでしょうか? 乗客たちはにわかにざわめき始めました。この素敵な紳士の婚約者というのはどういう女性なのか、ということを皆があれこれと想像しました。そして自分が「ハッピーバースデー」と言って祝福したときに、彼女がどんな表情を浮かべるだろうかと考えました。それはワクワクするような楽しい想像の時間でした。疲れはいつのまにか吹っ飛んでいました。あれほど身の不運を嘆き運命を呪って(?)いた人たちの表情は一変しました。深夜を数時間回って翌朝になった空港に着いた乗客たちは足取りも軽く降りてゆき、お目当ての婚約者に「ハッピーバースデー」を言い、時に頬にキスをし、バラの花を一本ずつ手渡しました。皆が幸福感に包まれていました。疲れきり、不機嫌そのものだった客たちを幸福にしたのは、お金でもなければ、高価な薬でもありませんでした。かの紳士が与えてくれた一つの動機であり、想像力だけだったのです。これはシェーン・マーフィー博士が書いた『アチーブメント・ゾーン』(廣淵升彦訳、文藝春秋)という本に紹介されている実話です。授業で話したことはなく初公開のはずです。

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COMMENTS

1 : ゆうた : September 26, 2005 02:11 PM

そういったことは本当にあると思います。私自身も、就職活動中であった時に、不安とイライラから不機嫌になったり、何をしていても心から面白くなれない時期がありました。そんなときに、ある人の「別にこれで人生終わるわけじゃないんだから」という言葉に、とても和みました。
行き詰まっているときには誰かと少しでも交わってみることです。それにより、今までの想いとは全く正反対の思想が生まれることがある。。。そんなことを思わせてくれる文章でした。

2 : ラ・マンチャの男 : September 26, 2005 02:51 PM

ゆうた様 コメントをありがとうございます。この50本のバラの話はここ10年くらいの間に聞いた話の中で、私に最も力と勇気を与えてくれたものです。ご友人で落ち込んでいるような人がいたらぜひ教えてあげてください。人間というのは気の持ちようでずいぶんと変わるものですから。

3 : tiakujyo : September 26, 2005 03:46 PM

PCにむかって、きゃーきゃー声をあげてしまいました。
こういったのを、「最高に粋な計らい!」なんて言ったら、笑われますか? だって、こんなしゃれた心遣いができるなんて、そうざらにあるものではないですよね。こうした方に、一度でいいから、めぐり会いたいものです。でも、このお話を聞かせてくれた廣淵先生が、その方に匹敵すると思えます。とすると、私くらいのレベルの者にでも、[シェーン・マーフィー博士が書いた『アチーブメント・ゾーン』(廣淵升彦訳、文藝春秋)という本]読んでごらんなさいと、薦めてくださいますか?

4 : 恭華留斐 : September 26, 2005 05:52 PM

やはり言葉の持つ力はすごいなと思いました。来年就職したらテレビ番組を作っていくことになった私ですが、自分自身がこの紳士のようなことをとっさに言えるかといえば、今のままでは到底いえないと思います。しかし、言えるように、考えられるようにならなければ、そう強く感じています。先日も恩師にアドバイスをいただいたばかりですが、人が何を求めているか、自分がどんな気持を今表したいのかということをもっと深く考えられるようにならなければと、「50本のバラ」を拝読して、あらためて感じました。

5 : callaway : September 26, 2005 08:51 PM

肉体的にも精神的にも疲れ果てている乗客たちを元気にし、想像する楽しさをも提供したこの紳士はとてもユーモアがあると思います。見知らぬ乗客たちにも幸福を与え、そして自分と婚約者に「ハッピー」をもたらす。とてもいいお話です。お金では手に入れることのできない価値観や幸せがこの世界にはたくさんあります。 最近は愛する人とうまくいっていません。すぐケンカになります。少し前のころのようにいつも楽しく、仲の良い二人に戻りたいです。、「50本のバラ」を読み終え、自分の悪いところをかえりみ、もう一度初心に戻り愛する人を思い直そうと思います。

6 : メガネくん : September 26, 2005 08:59 PM

 人間誰しもうまくいかないことや不安なことなどがあると、物事をマイナスに考えてしまうものです。そんな時こそ、前向きに物事を考える大切さやそんな時こそ、楽しい事を考えることの大切さを感じました。老紳士のように、険悪な雰囲気の中で最初の一声を発するのにどれほどの勇気がいるかは分かりませんが、少なくとも今の日本人にはそうそう真似できない行為だと思います。いや・・・この老紳士は勇気がどうだとか、そんなことは考えていなかったでしょう。自然体でこの様なことが出来るということは、純粋に尊敬してしまいます。私自身、この老紳士のように周りの人達を笑顔にするだけの力は(ユーモア?)私には、まだまだありません。というか、全然無いです。いつかはこの様な人間になってみたいものです。
 久しぶりに小さな幸せを感じることが出来るお話でした。教訓としては、「全ては、心のあり方一つ」ということでしょうか?

7 : ラ・マンチャの男 : September 26, 2005 09:30 PM

tiakujyo様 コメントを本当に有難うございます。この実際にあった話がお気に召したようで嬉しいかぎりです。こういう人に私も会ってみたいですが、彼の持ち味というのはじつに素敵ですね。『アチーブメント・ゾーン』は岐阜県知事を務められた梶原拓さんが大変感動してくださって、マーフィー博士と私を講師として岐阜に招いてくださったのですが、残念ながら絶版になっています。もっと爆発的なブームになればよかったのですがーー。時々この本の最良のエッセンスをブログ上で紹介したいと思っています。

8 : ラ・マンチャの男 : September 26, 2005 09:40 PM

恭華留斐様 この話に感銘を受けられたようで私も本当に嬉しいです。来年就職してテレビ番組を作るようになったら、この紳士のようなことがとっさに言えるようになるだろうか? と考え込む必要はまったくありません。こんな素敵なことを考え付く紳士というのは、1万人に一人もいないでしょう。「人間的に熟成してくればそのうち自然に言えるようになるだろう」と気楽に考えたほうがいいです。こういういいお話をたくさん聞いていれば、精神的に豊かになるだろうと思って紹介した次第です。皆さんけっこうお元気になったみたいですね。

9 : ラ・マンチャの男 : September 26, 2005 09:49 PM

Callawa様 コメントをありがとうございます。こういう状況の中で、とっさにこのように頭が回る男になってみたいですね。もし飛行機がおくれ、皆があのように険悪な空気に包まれていなかったら、彼は一人で50本のバラを全部彼女にプレゼントするつもりでいたのでしょう。しかし乗客たちの気持をとっさに察知し、こういう粋な行動に出たのだと思います。50人からバラをもらった女性はどんなにか幸福感を噛みしめたことでしょうか? 貴方も早く愛する人と仲直りをして下さい。人生には楽しいこと、それこそバラ色のこともいっぱいあるのですからーー。

10 : ラ・マンチャの男 : September 26, 2005 09:58 PM

メガネくん様 この紳士の行動に共感され感銘を受けられたことが分かり、紹介した者として本当にうれしいです。ま、この紳士は人間が上等すぎますので、彼のように発想できないからといって嘆くことはありません。なかなか人間こうはいかないものですからーー。でもいい話をたくさん聞いていれば、人間はだんだん上等になってゆくというのが私の信念です。少し理想主義的すぎるかもしれませんが、このブログではときどきこうした感動的な話を紹介していきます。週に1度は覗いてみてください。

11 : tiakujyo : September 26, 2005 11:14 PM

若い青年たちにまざって、私までが、きゃーきゃーと喜び騒いで、うれしいような、恥ずかしいような。

[いい話をたくさん聞いていれば、人間はだんだん上等になってゆくというのが私の信念です。]
この一節も、うれしいです。次々これからも、感動的なお話を待ってます。

12 : cherry : September 26, 2005 11:45 PM

このような心暖まるお話を聞かせて頂きありがとうございました。
飛行機を降りてきた乗客たちと、婚約者のやり取りを想像するだけで、僕まで幸せになった気分になります。僕も想像力の大切さに最近気付いた一人なのですが、不快な気持ちになった時、落ち込んだ時、これから起こるであろう楽しいことを想像し、取り組むことでその後の結果にも大きく影響を与えることなると思います。
ここで紹介される乗客たちも、不機嫌なまま1日を過ごしたら、良い仕事も良い休暇も過ごせなかったのではないでしょうか?

13 : RESCUE : September 27, 2005 04:07 AM

紳士の心情を察するに、それはそれは乗り合わせた乗客と同じ位早く空港に着きたかったことでしょう。しかしそんなことは微塵にも感じさせない、いや、感じさせないからこそ皆が素直にこの紳士の対応を受け入れることが出来たのではないか、と私は考えています。「ああ、飛行機側の人間も故意に遅れているわけではないのだ。許すが紳士。そしてその時間さえも楽しませてしまう彼は最上の紳士だ。」と。
感情を抑え、無理に宥めるのではなく与えることにより実に心地よく解決してくれたお話、ありがとうございました。

14 : ラ・マンチャの男 : September 27, 2005 09:50 AM

Cherry 様 この話が貴方の想像力を掻き立て、雪の空港でバラの花を渡すシーンが目に浮かぶようでしたら、本当に嬉しいです。掲載した甲斐がありました。人間にとって想像力ほど強い味方はありません。どんなことにでも想像の翼を広げてください。

15 : ラ・マンチャの男 : September 27, 2005 09:56 AM

Rescue様 この紳士の行動に大いに感じることがあった様子で喜んでいます。我々の周囲にはこういう上等の人間が少なくなってきましたが、それでも世界は広く、胸を打つ感動や人を希望に駆り立てる言葉はまだまだあります。大いに目を開いて元気が出てくる事例に出会ってください。気の早い話ですがそうした感動を貴方の「次の世代へ」も伝えていってください。

16 : チャモ : September 27, 2005 01:16 PM

とても心温まるお話ですね。普通はイライラが募りそのようなことを口にできるような状況ではありません。しかし周りの空気を察し、一瞬にして素敵な時間に変えることができる彼は、本当に素敵な人だと思いました。
人間の想像力とは偉大な力を持ち、それ一つでいい方にも悪い方にも転がっていきます。その力を彼は知っていたのでしょうね。

17 : KKK : September 27, 2005 01:41 PM

 このような話を聞いているといかにもアメリカ人らしいと思いました。ロサンゼルスのユニバーサルスタジオのあるアトラクションで、司会者が劇のための役を求めました。すると子どもたちがいっせいに手を上げ始めました。「シアトル、シアトル」「メクシコ(メキシコ)、メクシコ」。しかし残念なことに「ジャパン」は聞こえてきません。(英語が話せないという事情もありますが…)次に司会者が「She is an actress」というと、「オー(日本語訳:いいねぇ~)」という声が聞こえ、その場が一気に盛り上がりました。彼らは学生時代は発言する機会が多かっただけに慣れているのかなという感じでした。それに対して日本人はこのような雰囲気をつくるのが下手で、このコロラドの話でいくと、ずっと我慢しているのではないかなと思いました。

18 : tiakujyo : September 27, 2005 01:45 PM

今日は、また昨日とは違うことで、心のうんざり疲れ(?)で、またこのお話が読みたくなり、訪問しました。 また、大勢の若者からコメントが届いてて、それも一つ一つ、楽しく読みました。
 この紳士のようなことがとっさに言えるようになれるかと考え込むとか、彼のように発想できないからといって嘆くとかは、私も若かりし頃、身に覚えがあります。 いい嫁、いい母、いい妻になるんだと、ムキになっていたのは、可愛くなくて、かえって失敗でした。

19 : いじわるじじい : September 27, 2005 04:35 PM

大変よいお話を読ませていただき、有り難うございました。バラの花を配らなかった人達も、多分ほのぼのとした気持ちで、空港を後にしたことと思います。老紳士と婚約者という取り合わせが良いですね。O・ヘンリーの短編小説のようでした。早速図書館に行き、「アチーブメント・ゾーン」を借りてきました。

20 : tiakujyo : September 27, 2005 10:35 PM

いじわるじじい様のおかげで、いいことを知りました。
図書館に行けば、あるのですね。 わ~い、借りてこなくちゃ~。

21 : Lucy : September 28, 2005 01:00 AM

このお話を読んでとてもさわやかな気持ちになりました。この男性の思いやりが素晴らしいですね。この一瞬の機転が自然に出てくるというのが羨ましい限りです。乗客達はどれだけわくわくした気持ちで相手の女性を考えたことでしょう。そして、その女性もさぞ嬉しかったでしょうね。この男性が花束を手渡す姿、受け取る姿を見て微笑んでいる場面が目に浮かぶようです。こういったことができる人に出会いたい、また、こんな素敵な紳士の心を持てる人になりたいと心から願うばかりです。

22 : tiakujyo : September 28, 2005 06:35 PM

なんと、地元の図書館にはないので、都立図書館から、取り寄せてくれることになりました。 今の市立図書館って、ここまでサービスしてくれるなんて、知らなかった~。

23 : ラ・マンチャの男 : September 28, 2005 10:37 PM

チャモ様 素敵なコメントをありがとうございました。この話をポジティブなものと感じてくださり、これを書いた甲斐がありました。想像力は本当にすばらしいものですね。もっと多くの人が豊かな想像力を発揮してくれれば、世の中が数段面白く明るくなるだろうと期待しています。子供のような好奇心と併せて!

24 : ラ・マンチャの男 : September 28, 2005 10:42 PM

KKK様 ユニバーサルスタジオでの非常に貴重なご経験と「50本のバラ」の話を結び付けたコメントを楽しく拝見しました。日本人がとっさの時に何かを言えるユーモア・ゆとり・度胸・洗練といったものがどうしてもほしいですね。せめて若者だけでも度胸とセンスを身につけて世界をのし歩いてください。

25 : ラ・マンチャの男 : September 28, 2005 10:55 PM

いじわるじじい様 この話をお気に召してくださり本当に有難うございました。お読みになってすぐにO.ヘンリーの短編を連想されるあたりはさすがだと感じました。それにもまして図書館へ足を運ばれ『アチーブメント・ゾーン』を借りてくるという行動力に感服しました。この本は残念ながら絶版になっていますが、図書館に行けばあるということが、翻訳者のくせに分からなかったことが面目ないです。今後ともよろしくお願い申し上げます。

26 : ラ・マンチャの男 : September 28, 2005 11:03 PM

Lucy様
素敵なコメントをありがとうございました。この場の光景を目に浮かべておられる様子が伝わってきます。翻訳をしていていちばん印象に残った話ですが、もっともっと日本中に伝えたいし、また伝える価値があるストーリーだと思います。こういうことを、とっさに思いつく日本人がふえてきて、世界を旅行するたびに周囲の人々を幸せな気分にするような時代がくるといいなと思います。今後もこのような話を発掘してゆきますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

27 : ラ・マンチャの男 : September 28, 2005 11:09 PM

tiakujyo様
図書館まで出向かれて「アチーブメント・ゾーン」の入手手続きをなさったとうかがい、感動しました。すごい行動力とバイタリティですね。いじわるじじいさんが、そのヒントを与えてくださったというので、ブログの楽しさというものを再認識しました。この本がお気に召すといいのですがーー。今後ともよろしくお願い申し上げます。

28 : 悠々 : October 21, 2005 09:05 PM

私は絵描きなので加藤登喜子の「100万本のバラ」をカラオケのレパートリーにしたいと思っています。
他の方のコメントと違って次元が低くて恥ずかしいですが、「50本のバラ」という表題に惹かれて読ませて頂きました。
「100万本のバラ」は愚かだけど一途な絵描きが女優に恋心を寄せる話ですが、男の純情さとか、儚い幸せを求める心情とかを加藤登喜子は巧く歌っています。
疲弊し混乱して怒りっぽくなっている飛行機の乗客に、夢と安らぎを提供した一人の乗客は、きっと加藤登喜子が歌う貧乏な絵描きのように、純真な少年の心と、熟年の思慮を兼ね備えた人物だったんでしょうね。
良いお話でした。

29 : ラ・マンチャの男 : October 21, 2005 10:50 PM

悠々様 加藤登紀子の「100万本のバラ」は私も何度かテレビで聴いて「いい歌だな」と思っていました。それをカラオケのレパートリーになさる絵描きさんというのは素敵ですね。一途で純情な絵描きが女優に恋心を寄せる話とは知りませんでした。でもこの歌は歌いにくいのではないですか? それに挑戦なさるというのは相当な歌唱力とお見受けします。「50本のバラ」を自然体で演出した紳士へのご洞察はさすがだと感心しました。コメントをありがとうございます。