View of the World - Masuhiko Hirobuchi

September 30, 2005

日本語で小説を書くスイス人 -学生へのメール

9月28日の朝日新聞の2面に「命の風」という小説の広告が載っています。作者はデビット ゾペティ。10年前に「いちげんさん」という感動的な純愛小説で「すばる文学賞」を受けてデビューした作家です。「命の風」は途轍(とてつ)もなく甘美で大人のための恋愛小説」と銘打たれています。物語は晩秋の朝霧高原で2機のパラグライダーが衝突することから始まります。元・花形シェフの健と外資で働く瑞穂に起きた惨劇と愛の行方」を追う展開となります。実はこれを書いているのは、ジュネーブ生まれのスイス人ですが、驚くのはそのあまりにもみずみずしく完璧な日本語力です。これだけのスト−リーを彼は全部日本語で発想し日本語で書いているのです。話し言葉には外国人らしい変なアクセントはみじんもありません。同志社大学で志賀直哉を専攻。テレビ朝日の外国人社員の第一号で、記者・ディレクターとして活躍。「ニュースステーション」でもいくつものすぐれたレポートをしていた彼は、高額の年収と輝かしい前途を捨てて作家への道に突き進みました。しかしこの世界は実に厳しい世界です。彼の豊かでやさしい心が作家としての大いなる成功に結び付くことを祈りたくてこれを書きました。彼は母国語であるフランス語のほかに、ドイツ語、イタリア語、英語、ヘブライ語をほぼ完璧に話します。日本語についてはすでに書いたとおりです。こういう人がいると、「人間の潜在的能力というのはすごいものだ」と感じます。勇気が湧いてきます。皆さんこういう作家がいることをご友人に話してください。この本を買うことはともかく、お近くの図書館に注文していただけると有難いです。これだけ日本を愛し、日本文化を愛している作家を応援してください。

[Post a comment]

COMMENTS

1 : tiakujyo : October 2, 2005 02:02 AM

 やっと 『アチーブメント・ゾーン』が手元に届き、明日から読もうとしてるところです。  は~い、先生、次は、「命の風」ですね。 友人からは、「グロテスク」桐野夏生 を読むようにすすめられてるし、、。

2 : ラ・マンチャの男 : October 2, 2005 04:50 PM

tiakujyo様
『アチーブメント・ゾーン』を入手していただき有難うございました。それにしても図書館のサービスは早いですね。あの「50本のバラ」の話には、1か所記憶違いがありました。かの紳士が乗客に語りかけたのは、「機内」ではなく「待合室」ででした。まことに失礼しました。さて「命の風」ですが、これも少し最終部分を変えました。本を買って下さいというのは、少しお願いが強すぎると思ったからです。とにかく仏・伊・独・英・日それにヘブライ語までをほぼ完全にマスターしている作家が世田谷の一角に住んでいるということを知っていただきたのです。彼の外国語マスター法を知れば、すごく勇気が湧いてきます。「よし、自分も」という気になってきますし、自分の日本語の表現に磨きをかけようという気になります。彼は大いなる励ましを我々に与えてくれる存在です。こういう作家のことを皆さんでぜひ話題にしてみて下さい。すごいハンサムです。日本人女性と結婚し、子供もいます。

3 : rescue : October 2, 2005 07:27 PM

こんにちは、先生。
人間の可能性は定める事など出来ないという良いお話ですね。
前に進んでいく力、夢を持つ意志、勿論知識や心、どれをとっても素晴らしい方なのだなぁと、先生の文章から伝わってきました。

4 : ラ・マンチャの男 : October 2, 2005 09:00 PM

Rescue様 すばらしいコメントを有難うございます。一度この生身の作家をご紹介したいです。私にもっと力があれば、あらゆる情熱を傾けて彼を売り出すのですがーー。日本の出版界は作家や作品が多すぎ、読者がどんどん減っていますので、文筆だけで生きる者には厳しい世界です。ご友人やご家族にもこういう凄い可能性を持った人がいるのだということをどうかえて下さい。

5 : callaway : October 3, 2005 06:29 PM

ニュースステーションでもいくつものすぐれたレポートをしていたこのスイス人は、高額の年収と輝かしい前途を捨てて作家への道に進み、さらには、母国語であるフランス語と日本語のほかに、ドイツ語、イタリア語、英語、ヘブライ語をほぼ完璧に話すということは6ヶ国語を話すということである。自分自身、英語を話すこともままならないのに6ヶ国語を話すことができる人物は世界各国探しても数少ないであろう。普通に考えて、6ヶ国語を話せるという人間が存在するということは考えられない。人間には底知れぬ可能性と未来があるということを実感しました。

6 : ラ・マンチャの男 : October 3, 2005 10:46 PM

Callaway様 このスイス人に興味を持ってくださって有難うございます。この人はとにかくすばらしい男です。私はなんとか彼に成功してもらいたいと強く願っています。彼を見ていると「人間というのはすごいものだ」と思います。彼の苦労に比べれば、自分の努力なんて努力のうちに入らないとも思います。ところで6か国語くらいで驚いてはいけません。トロイの都を発掘したハインリッヒ・シュリーマンは、たしか11か国語を話せたはず。このゾペッティ君もさらにスペイン語、ポルトガル語、デンマーク語くらいは話せるかも知れません。人間というのは大したものなのです。

7 : cherry : October 4, 2005 01:51 AM

先生の文章を読んで、「命の風」、すばる文学賞を受賞した「いちげんさん」を読んでみたいと思いました。
察するに、ゾペティさんは日本人以上に日本の文化、歴史といったことに詳しい人物だと考えます。だからこそ素晴らしい作品を書けるのではないでしょうか。

8 : KKK : October 4, 2005 11:03 AM

スイスといえば主としてフランス語、ドイツ語、イタリア語を公用語とする国です。この中でも一番多いのがドイツ語圏で、ゾペティさんはフランス語圏出身のようです。スイスでは主要言語が異なると英語で話すとのことです。公用語が多いということは通じないこともあり、苦労する部分もあると思いますが、それだけ多言語を学ぶチャンスが多いということかもしれません。そのよう中、遠く離れた日本に学生時代から関心を持つ人はスイスではあまりいないと思います。海外から来るのはビジネスぐらいであまりなじみがない日本に早期から興味を持ってくれているということに私たちも見習う部分がたくさんあるのではないでしょか。

9 : メガネくん : October 4, 2005 11:10 AM

 世界でも最も難しいとされる日本語をこれだけ自在に使うことが出来るのは、それだけでも大変凄いことだと思います。デビット ゾペティという人は、どのような人生を歩んできたのか気になるところですね。
 何か、人間やれば何でも出来る!ということを感じさせてくれる人だと感じました。

10 : tiakujyo : October 4, 2005 02:31 PM

「命の風」は、上下巻2冊でした。これは購入しました。
作者について、[人間やれば何でも出来る!]、[人間には底知れぬ可能性と未来があるということを実感]とかいろんなご意見を聞かせてもらったけど、自分とはあまりにかけはなれた、能力的に違う人で、特別な人と思うしかない。
でも一方、『アチーブメント・ゾーン』を読んでると、私レベルでも、技(わざ)次第で変われると、励まされる。
今の私は、Hirobuchi World に"どっぷり"です。

11 : 市川正 : October 6, 2005 06:41 AM

ラ・マンチャの男様
昨夜は大変失礼しました。

うまくトラックバックできませんでしたし、急な紹介になってしまって申し訳なく思っております。

また、書き込みしていただきまして光栄です。
同じパラグライダー仲間に、こうした実績と人望のある方がおられるのが、フライト仲間として嬉しく思います。

まだ、小説は読んでいませんが、さっそく時間を作って読んでみたいと思います。

この度は、誠にありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。

12 : mix : October 7, 2005 12:44 AM

親友のblogからこちらに飛んできました。
「いちげんさん」が・・・賞と騒がれていた頃、読みたいと思っていたのですが、機を逃していました。
今回、この記事を拝見し図書館に走ったのですが、近くの図書館には「命の風」は置いてありませんでした。
でも「いちげんさん」を見つけて、一気に読んでしまいました。
本当にこんなステキな文章を外国の方が書いたなんて信じられません。
「一月が白い息を吐きながら静かな足取りで二月に向かうような・・・」
あー、どこを取っても絵になるようでところどころ声を出して読んでしまいました。
「命の風」はそのうち届くかな?

13 : 菅原 : October 9, 2005 11:31 PM

実は主人がデビットさんが、取材・執筆の為に当地に逗留されていた際に、料理を作り、その取材を受けておりました。
ノートに細かく取材内容を書かれていたのですが、全て見事な日本語、もちろん漢字混じりです。「俺も書けないような漢字をスラスラ書いていた・・・。」と随分驚いておりました。取材とは別に楽しくお酒を飲みあったりして、とても気さくで楽しい方です。

14 : ラ・マンチャの男 : October 10, 2005 10:13 AM

Cherry 様 お礼がおそくなり申し訳ありません。このデビット・ゾペティさんが、なぜそんなに日本が好きになったのかをいろいろと想像してみてください。かつて日本を愛し、日本人になりたくてさまざまな名作を書き残した作家がいました。イギリス人の父とギリシャ人の母を持った人でした。日本名でも有名です。ゾペティさんもこの人のようにみんなから愛され有名になってほしいものです。

15 : ラ・マンチャの男 : October 10, 2005 10:22 AM

KKK様 スイスの言語事情についてのコメントを面白く拝見しました。遠いジュネーブからまず京都にやってきて、そこで志賀直哉を卒論に選び、東京のテレビ局で記者・ディレクターを務め、さらに作家に転身する。一見華麗な人生ですが、厳しさもひとしおだと思います。彼の作品と人生に興味を持ち、スイスと日本の文化の違いや共通点に興味を抱いてください。お礼のコメントがおそくなり申し訳ありません。それから Cherry さんへの私のお礼もよく読んでください。この英・希の混血の作家というのはだれでしょう?

16 : ラ・マンチャの男 : October 10, 2005 10:27 AM

メガネくん ゾペッティさんを見ていて「人間やればなんでもできる」という気になったとしたら、彼の存在そのものが大きな人生の応援歌ですね。天才の真似をする必要はありませんが、自分の中に眠っている才能を開花させないままに人生を送り、晩年になってから「ああ、あの時もっとがんばればよかった」ということのないように祈っています。人間はいつまでも美しくもがいているのが望ましいと思います。

17 : ラ・マンチャの男 : October 10, 2005 10:36 AM

tiakujyo 様 コメントへのお礼がおそくなり申し訳ありません。デビット・ゾペティさんについては、能力的に違いすぎるとお感じなのも無理はないと思います。彼の場合、能力もさることながら意思力、そして日本文化への愛の力がすごいと思います。しかしけっしておごらずじつに素直で、気持のいい人です。『命の風』を早速お買い求めいただき、本当にありがとうございます。著者は店頭から荷が動いたと知るだけで喜びます。それが次の行動への大きなエネルギーになります。さらに『アチーブメント・ゾーン』をお読みいただき、「有益」と感じてくださり、心から御礼申し上げます。私も毎日少しずつ読み直し「うん、なるほど!」と納得しているところです。

18 : ラ・マンチャの男 : October 10, 2005 10:43 AM

市川正様 ゾペティさんを、全国のパラグライダー仲間にご紹介いただき本当に有難うございます。ネットの持つ力をあらためて感じました。そしてなによりも大切なのは「よし、この小説のことを紹介してやろう」というお心だと思いました。10日ほど前までは、想像の中にも浮かんでこなかったフライヤーの皆さんが、楽しく空を飛んでいるお姿が目に浮かんできます。大空には体だけでなく「心」も一緒に飛んでいるのですね。

19 : ラ・マンチャの男 : October 10, 2005 10:54 AM

mix様 個人宛てにお礼を申し上げて安心し、「公の場」(?)であるブログ上でお礼をいうのがおそくなりました。『いちげんさん』の美しい描写に感動していただき、作者に代わって心からお礼を申し上げます。あの本はたしかに外国人が書いたとは思えませんね。それにしてもtiakujyoさんのブログからこちらへ「飛んで」きていただいたというのは、嬉しく素敵なことです。そのお礼を早く tiakujyo さんにしなくてはなりません。雑誌の原稿締め切りのために、多くの方々に失礼を重ねています。

20 : ラ・マンチャの男 : October 10, 2005 11:00 AM

菅原様 コメントをありがとうございます。たぶん市川さんのメールマガジンで私のブログのことをお知りになったのだと思います。デビット・ゾペティさんが取材でお世話になったとうかがい、しかも好印象を残していったと知り、我が事のように嬉しいです。本当に気持のいい人です。彼はどんなに有名になっても今のままでしょう。おごらず、人を見下さず、どんなに辛い時期でも卑屈にならない。素晴らしい男です。どうかご主人さまにもよろしくお伝えください。そして彼を皆で応援してください。

21 : mix : October 13, 2005 08:56 AM

「命の風」読み終わりました。恋愛小説と思って読み出したのに、途中ティッシュの箱がいるではありませんか?(最近、涙もろくなったのかな?)
デビット・ゾペティさんの日本語の使い方に酔ってしまいました。シンクル モルト飲まなくてもね。それに展開の仕方も巧妙で一気に読み上げてしまいました。
スポーツで好きなのはなんといってもスキー、次がヨット、ちょっとかじったカヌー、次はー。そう、パラグライダーをしてみたいと思っていたのでした。でも、どういうわけか違うことに夢中になってしまったのです。

22 : ラ・マンチャの男 : October 13, 2005 10:01 AM

mix様 「命の風」をたちまち読了してくださった由、本当に有難うございます。若く才能ある友人への何よりの励ましになります。私はまだもたついていまして、健が妻と子を失い、パラグライダーの助手になり、いかにも魅力的な「瑞穂」と知り合うところまでです。皆様にお奨めした当人がこれではいけないと、来週半ばまでには一気に読み上げるつもりですが、書くべき手紙や卒論の相談などでなかなか集中できません。ゾペティさんの日本語は、本当に美しくて、それを感得してくださる人がおられることが嬉しいです。

23 : ラ・マンチャの男 : October 14, 2005 09:27 PM

mix様 素敵なスポーツのご趣味ですね。スキーはともかくヨットを楽しまれる方はそんなに多くはないでしょう。加えてカヌーとくれば、『命の風』の主人公たちの世界と重なります。この本を昨日からだいぶ読み、ゾペッティ節(?)にしびれています。あと20ページで上巻を読了です。

24 : mix : October 15, 2005 10:29 AM

素敵なスポーツのご趣味といっていただいて、ありがとうございます。でも、スキー以外はかじった程度なのです。スキーは子供の頃から親に連れて行ってもらっていました。我が子ができてからはこの楽しさを味あわせてたいと思い、よく連れて行きました。私がそうであったように、子供たちはそのうち友だちと行き始めます。取り残された私は行かずじまいとなっていたのですが、、、、。5年前にスイスに行ったとき、久しぶりにスキーを楽しむことが出きました。よかったら、私の blog を覗いてみてください。