View of the World - Masuhiko Hirobuchi

November 17, 2005

アメリカのWとK -学生へのメール

このタイトルを見て、「おっ、アメリカでも早慶戦をやってるのか?」と勘違いするのは相当に年配の方でしょう。いまWとKという頭文字を見て、即座に早稲田と慶応を思い浮かべる人はそんなに多くないと思います。ここでWとKを見出しにしたのは、じつはこれアメリカのラジオ局とテレビ局の頭についている記号なのです。旅行中にあるいはある地域に住んでおられて、新聞のテレビ番組欄にWABCとかKHVHといった名前が載っていたり、中継車にこういう文字を書いてあるのをご覧になった方も多いでしょう。このWとKには本当は深い意味があるのです。しかし多くの人々は何の疑問も抱かずに帰国してしまいます。大まかに分けて、アメリカ合衆国の東の地域の局(ステーション)はWの頭文字を持ち、西のステーション(中西部からハワイまで)はKの頭文字になっています。シカゴ、デトロイトといった地域は当然Wです。WGNとWXYZといった局は有名です。では東と西を分ける境界線は何か? はっきり文献で確認したわけではありませんが、「ミシシッピ河の東がW,西がK」と聞いています。しかしこの河は相当に蛇行していますので、はたしてこれが本当の境界なのか、もう少し調べる必要があります。
なぜこんなややこしい話を載せるかというと、せっかくアメリカを訪れたのなら、生活に密着したラジオ・TV局の名前にも興味を持っていただきたいからです。そうすれば今まで見えなかったことがよく見えてきます。そしてこれにはもっと大きな「国際的取り決め」が絡んでいるのです。
ジュネーブにある「国際電気通信連合」(ITU)がいわば「電波の交通整理」をしており、北米の東部のステーションは頭にWを、西のステーションはKを付けるという決まりになっているのです。
しかしここに一つだけ例外があります。それはペンシルヴェニア州ピッツバーグにあるKDKAです。ペンシルヴェニアはれっきとした東部の州です。ではなぜKDKAだけがWでなくKなのか? この局はアメリカで最初のラジオ局として有名で、放送開始当時の局名をそのまま保存することを認められているからです。いわばこれは「栄光の局名」なのです。
最近は日本のテレビ局は、自社の「コールサイン」(局名信号)をあまり放送しませんが、日本の各局はJOから始まります。これも国際取り決めによるものです。JOAK-TVは、NHK東京の総合テレビ局、フジテレビはJOCX-TV、テレビ朝日はJOEX-TVです。テレビ業界でフジテレビのことを短く「CX」と呼んでいるのはそのためです。

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COMMENTS

1 : 悠々 : November 17, 2005 10:20 PM

JM1XLZ・・・これは 私のアマチュア無線のコールサインです。アマチュア無線のコールサインも世界中の無線局が地域によって決められた頭文字を持っています。日本の場合、JAから始まり、真ん中の1は関東地方をあらわします。
私はアメリカはハワイしか行っていませんから、放送局のコールサインについては全く注意したことはありません。飛行機の機体番号が、日本は戦前はJだったのが、戦後JAの二文字になって、なんだか二等国に格下げになったみたいな屈辱感を覚えたことがあったから、ハワイ島でヘリコプター観光した時に、機体番号がAの一文字だったのを見て、やっぱりね?なんて感想を持った位です。何が、やっぱりね?なのかというと、日本は二等国で、アメリカは一等国だ、と言う感じが納得できたからです。
KDKAだけがKDKAを名乗れるなんて、粋な計らいですね。 私はこうゆうお話が大好きです。

2 : cobi : November 18, 2005 02:36 AM

こんばんわ。
WABCやKHVHこれらの言葉は今回、初めて聞きました。コールサイン一つ一つに意味があってそれらの名前が決められているなんて初耳だったのでこれでまた一つ新しい知識が身につきました。どうもありがとうございます。
また、日常的ないろいろな物事に興味を示す好奇心こそ向上心に繋がるものなんだなぁと感じられました。小さい物事から大きな物事に展開して行く力とは日々の好奇心の積み重ねによってつくものなのかなぁとも思いました。

3 : ラ・マンチャの男 : November 18, 2005 10:45 AM

悠々様 アマチュア無線家とは優雅なご趣味ですね。実は放送という世界も元々は、発信局(BBCなど)と受信局(ステーション=各家庭の受信機)との「契約」に基づくものでした。したがってイギリスでは「受信料」といわずに「ライセンス・フィー」といいます。「受信局としての免許(ライセンス)を得て発信局の電波を受けている」という考えです。何年アメリカに住んでいてもWとKの違いに注目して帰ってくる日本人は少ないと思います。でもこういうことはけっこう大事なのですね。飛行機の機体に2文字が書かれているだけで二等国という着眼をなさるとは鋭いです。私の友人で航空評論家でハムの愛好家がいます。今日これから彼に電話をしてこの件で話すのが楽しみです。新知識を賜わりありがとうございました。

4 : ラ・マンチャの男 : November 18, 2005 10:52 AM

Cobi様 こういう小さなことから大きなことに興味を繋いでゆかれるというのは非常にいいですね。「好奇心」こそ人間の元気の素です。さてWABCはニューヨークにあるABC(アメリカン放送)の「直営局」ですが、同社のロサンゼルスにある直営局はKABCです。覚えやすいでしょう? アメリカの放送会社は複数のステーションを所有し運営することが認められています。日本では一社一局しか所有できません。そうした国情の違いも頭に入れておかれると面白いです。ありがとうございました。

5 : エセ男爵 : November 20, 2005 12:12 PM

まったく、このお話をお聞きして納得、更に想いが広がります。
あの広大な大陸に存在する「一つの国家」、この100年間、いや、独立してすでに200年以上。アメリカ合衆国の発展に、最も必要且つ貢献したのはまず「電波」。さらには「航空機」であった。と、思います。
未だモールス信号が主流の時代、さらにラジオの時代、近年のTV報道時代、いまやIT時代。全て「電波」のさせる技です。
ご承知のとおり、
アメリカ大陸には「時差」が存在します。
たしか、
東部時間、
中部平原時間、
山岳(ロッキー山脈を云う)時間、
西部時間、
それぞれ1時間ずつの時差がある。
ニューヨークを朝9時発のジェット機で、ロサンゼルス出張に出発。4~5時間経てばロサンゼルスに着く。
到着時、ロサンゼルスの時刻は、午前9時過ぎ・・
ロアンゼルスの仕事は始まったばかり。
でも、今の時代、出張しなくてもよいかも、インターネットがかなり貢献しているのでしょうね。

てな、感じですね。

日本では考えられない。

でも世界には、こんな国があり、24時間仕事をしている。人間が活動している。よい意味でIT技術を駆使したいものですね。 

6 : ラ・マンチャの男 : November 20, 2005 06:30 PM

エセ男爵様 ラジオ・TVのコールサインと「周波数」はITUで交通整理をしないと「混信してしまいます」。一般の方はこの交通整理の係りがジュネーブにあるということにまでは頭が回りませんが、バロン様はそうした「基準」にはお強いのでしょう。ハンガリーなどでは、自局のコールサインをアナウンスしているかどうかをいつか教えてください。それにしてもアメリカはメインランドだけでもこれだけ時差があり、ハワイ、アラスカまであるのですからつくづく広いですね。ご投稿の趣旨からは少しはずれたお礼になったかも知れませんが、ありがとうございました。

7 : rescue : November 21, 2005 12:36 AM

こんばんは、先生。
「栄光の局名」そのラジオ局で働く人々は、自社の名前をさぞかし誇りに思っていることでしょう。KDKA以外のラジオ局で働く人々が彼等を羨ましがるのではなく、「偉人達に続け」という思いで仕事をしているに違いない、とこの記事を読んで推測しました。私も悠々さんと同じように、「粋なお話」が大好きなものですから、思わず「お、いいね!」とニコっとしてしまいました。

8 : ゆっきー : November 21, 2005 12:14 PM

テレビを夜更けまで見ていて、その日の放送が終了する時に、このように先生がおっしゃったようなコールサインを見かけたことがあるような気がします。今日この記事を読むまで、「いったいなんのこっちゃ?」と思い、大して気に留めることもありませんでした。が、今回このような意味合いがあることを知り、頭の片隅で消えかけていたことが1つの線を作ってまた復活し、どこかスッキリしたような感覚になりました。また1つ勉強になりました。

9 : ラ・マンチャの男 : November 21, 2005 12:19 PM

Rescue様 「粋な話が好き」とは頼もしいです。KDKAはラジオ受信機や他の家電メーカーとして有名なウェスティングハウス社の所有局です。ラジオの初期については数々のロマンがあります。それらを知るというのは実に楽しいものです。単なる懐古趣味ではなく、「未来に繋がるヒント」が「最も基本的な過去」の中にいっぱい詰まっています。ここに書いた「ITU」という組織に興味を持ってください。非常に重要な国際組織です。さてこのコメントはいま有楽町の外国人記者クラブのパソコンから入力しているものです。

10 : ラ・マンチャの男 : November 21, 2005 12:27 PM

ゆっきー様 コールサインを見たり聞いたりしたことがある人に出会えてこの記事も喜んでいると思います。頭の中で消えかかっていた記憶・知識が一本につながっておめでとうございます。ジュネーブにあるITUは「電波の国際的交通整理」をしています。こういう組織がなければ各国の電波はたがいに「混線して」収拾がつかなくなってしまいます。みんな目に見えないところで、人に知られず頑張っているものです。これも有楽町の外国人記者クラブで書いています。先ほど日本を占領していた連合国総司令部があった第一生命ビルに行き、「マッカーサーのオフィス」を見てきました。歴史の重みを感じました。

11 : 恭華留斐 : November 21, 2005 02:52 PM

ITUという組織名は耳にしたことがあったのですが、その組織が果たして何をしているのかということや、コールサインの頭文字のことなどに関してはまったく知りませんでした。日本に関しても、CX、EXなどは割りと頻繁に耳にしていたのですが、コールサインにすると、JOがつくというのも、初めて知りました。今度テレビやテレビ番組欄を見るときは、コールサインが記載されているかどうかもチェックして見たいと思います。

12 : ラ・マンチャの男 : November 21, 2005 05:27 PM

恭華留斐様 皆さんが「すでに知っているだろう」と思って言わなかったことが数々あります。この「コールサイン」も「ITU」もその一例です。スポーツでも「ルール」が分からなければ目の前でプレーをしているのを見ても、「なにがなんだか」分かりません。国際社会のことも諸々の地味なルールに基づいて運営されているのであり、「周波数」(frequency)の取り決めも、宇宙に浮いている衛星の位置も「多くの人の目には見えない国際的合意」に基づいているのです。

13 : callaway : November 21, 2005 08:33 PM

アメリカも日本のテレビ局もコールサインがあるということを初めて知りました。局名信号をあまり放送しませんが、日本の各局は国際取り決めによるものでJOから始まるのですね。また新しい知識を得ることができました。ありがとうございます。

14 : KKK : November 21, 2005 11:33 PM

局にアルファベットの名前がついているのは知らなかったですし、知らない人はたくさんいるのでないでしょうか。境界線をミシシッピ川にしたのはわかりやすいからだと思います。確かにニューオーリンズ付近からミネソタ州ミネアポリス、セントポール付近までしっかりと続いていますし、東西を2等分に分けているようにも見えます。州と州の間にするとたくさんあって複雑になってしまうような気がします。CXがフジテレビなど由来がよくわかりませんが、このようなことがわかってくるともっと大衆にも広がってくると思います。

15 : 電波少年 : November 22, 2005 12:20 AM

昔からフジテレビのことを「CX」と呼んでいるのか疑問に思っていたので、先生の文章を読んでスッキリしました。これは世界的に決められた局名信号だったんですね。
たとえば、BBCにも局名信号はついているのでしょうか?

16 : ひよこ饅頭 : November 22, 2005 01:11 AM

 東がW、西がK、なるほど、そう教えていただければそういうものなのだと納得は出来ます。しかし、日本のコールサインの場合はどういう決め方で今のような表記になっているのかと考えると、ちょっと頭がこんがらがります。
 話は変わるのですが、よく車に乗るときなどに聴くNHKのラジオ放送で時折聞くことのある「JOAK」というものは、NHKのコールサインだったのですね。このことだけでも一つ賢くなれたような気がします。

17 : ラ・マンチャの男 : November 22, 2005 10:40 AM

callaway様 今回の記事は「世の中のルール」「国際的取り決め」といったものを分かりやすく示したものです。こういう題材に興味を持っていただけて嬉しいです。日本のラジオ・TV局のコールサインでいちばん有名なのは、おそらく文化放送の「JOQR」でしょう。しょっちゅう「文化放送、文化放送、JOQR--」という歌を流していますから。

18 : ラ・マンチャの男 : November 22, 2005 10:45 AM

KKK様 コールサイン一つが分かるだけで、世界がだいぶくっきりと見えてくるようで、この記事を書いた甲斐がありました。ミシシッピを思いアメリカの広大さを思い、人間同士の「国際的取り決め」を思うというのは楽しいことです。大いに想像の翼を広げてください。

19 : ラ・マンチャの男 : November 22, 2005 10:51 AM

電波少年様 フジはCX、テレビ東京はたしかTX,東京メトロポリタンテレビはMXのはず。ちなみにNHK大阪のラジオ第一放送はJOBK(東京のラジオ第一はJOAK)。「NHK全体を指す
コールサインというものはない。あくまで各「ステーション」がコールサインを持っている」のです。BBCにしても同じです。ロンドンの局、グラスゴーの局という具合にーー。

20 : ラ・マンチャの男 : November 22, 2005 10:59 AM

ひよこ饅頭様 「電波少年」さんへのお礼に書いたとおり、NHKの「東京第一放送」はJOAK,大阪はJOBK,すると名古屋や福岡の人はJOCKとかJODKとかいうコールサインを聞いているのかなあ? と考えてみてください。コールサインは旧郵政省(現総務省)が一方的に決めたのか、そてとも各局の意見がある程度とおったのか、その辺も興味のあるところですね。どんどん関係機関に電話して聞いてみてください。電話することで、人はけっこう自信がつくものです。

21 : リッキー : November 22, 2005 01:09 PM

 アメリカのWとKについて、ラジオ局・テレビ局の記号の頭文字であること、今回初めて知りました。アメリカを西と東に分ける境界線がミシシッッピ河であることも初めて知りました。コールサインひとつをとって見ても、深い意味があったんですね。

22 : ボブ : November 22, 2005 01:27 PM

タイトルを見てアメリカのwとKとは何か全くわかりませんでした。ミシシッピ川を境界線というのも初めて知りましたがまだ不確かなものなのですね。コールサインというのもTVやラジオ聞くときにも全く気にしていませんでしたが、この記事を見てから少し耳を傾けてみようかと思いました。

23 : ラ・マンチャの男 : November 23, 2005 09:44 AM

リッキー様 WとKという簡単な話、しかも毎日みんなが新聞のラジオ・TV欄で目にするおなじみの記号から、アメリカの東と西、さらには遠いジュネーブにあるITUにまで想像を広げてくれたとしたら、筆者としては嬉しいかぎりです。日常のなんでもないことの中に世界に通じるものがいろいろ隠されているものです。幼児の目で、何事にも好奇心を持ってください。

24 : ラ・マンチャの男 : November 23, 2005 09:56 AM

ボブ様 コールサインはいまでも放送終了間際か放送開始の時にはアナウンスしているようです。文化放送のJOQRという局名告知はしょっちゅう耳にします。コールサインというのは「ステーション」(局)のIDです。存在証明というか「自分が何者であるか」を示すもので、しかもそれは「世界に向けて登録され承認されたIDです」。世界は緊張し衝突の危険を常に抱えながら、協調するところでは協調しているのです。新聞はこういう協調的な努力を必要としないメディアです。「だから国際性がない」とまでいうと袋叩きにあうでしょうし、「テレビはそれほど国際性があるのか!?」と開き直られたら、胸を張って「ある!」ともいえませんが、新聞記者の知らない実務面で、テレビ人間は国際協調の現実を知っているとはいえます。