View of the World - Masuhiko Hirobuchi

November 29, 2005

「注意! 男の子横断中」 -学生へのメール

「注意! 男の子横断中」ーーこういう道路標識が出ていたら、あなたならどう思いますか? よくアメリカの道路などには「注意! シカ(Deer)横断中!」などという標識が出ています。ドライバーは「そうか、注意しよう」という気になり用心して少しスピードを落とします。かつてアラブ首長国連邦のアブダビで真夜中にタクシーに乗ったとき、砂漠の中の自動車道にとつぜんニョキッとラクダの群れが現われてあやうく衝突しそうになったことがあります。しかしこの国ではラクダが道路に出てくるのは常識になっているらしくて、だれも「注意! ラクダ横断中」などという標識は出していませんでした。
話は元にもどって、これはイギリスでの話です。所はロンドンの郊外、ヒースロー空港の近く、もっといえばウィンザー城のごく近くで、いかにもシカやウサギが出てきそうな一般道路です。「Beware ! Boys Crossing」となっていました。しかし、「動物ならともかく人間が横断するのになぜ『男の子』だけなのか。女の子は横切ってはいけないのか!」と思う人もいるでしょう。日本の男女同権論者さらにはフェミニスト(女権拡張論者)で慌てる方の中には「これは男女差別だ!」とお怒りになる人もいるかも知れません。
しかしまあ、落ち着いてください。ウィンザー城の近くでこんな標識が出ているとすれば、我らのシャーロック・ホームズならずとも、「ふんふん、分かったぞ!」と会心の笑みを浮かべる方もいることでしょう。
そうです、ここは有名なイートン校の敷地内の道路でした。イートンは男子のエリートを養成する「パブリックスクール」の中でも、とりわけ有名な学校です。かつて何人もの宰相や学者、文人墨客を生み出してきた名門です。敷地の広さも半端じゃありません。いくつかの私道も敷地内を通っています。そうした道路を歩くのはまず boys なのです。いまでもこの標識が残っているのかどうかは分かりませんが、物事の表面だけ見て、こちらの常識で「男女差別だ」などと騒ぐのはやめましょうというお話です。
イートンについては、それこそ数えきれないほどの逸話も歴史もありますが、今回はちょっと肩のこらない話でした。「いやあ、大いに肩が凝ったよ!」という方もいらっしゃるかもしれませんがーー。

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COMMENTS

1 : tiakujyo : November 29, 2005 03:00 PM

は~~い、肩はこりませんでした。(笑)
「物事の表面だけ見て、、、」が分かればいいのですよね。
これまでだって、肩がこるな~ と思ったりはしてませんけど、、。

2 : rescue : November 29, 2005 06:28 PM

こんばんは、先生。さきほどはありがとうございました。とは言っても本当に「さきほど」ですが―――。

人間に入ってくる情報というものは、いつでも1番始めに表面的なそれです。しかし、それを疑い「本質」に迫ることは大事ですね。先生の今回の記事から、先走る事の危険さを感じます。

↑ここまで深刻に考えなくてもよろしいでしょうか。
肩が凝りそうです。

3 : 悠々 : November 29, 2005 07:34 PM

先生のこの記事を拝見していて、日本のマスコミの記事の書き方でも同じ事が言えるのではないかと考えました。
今のマスコミの取り組み方は付和雷同そのものです。連日トップ記事になっている、姉葉設計事務所の誤魔化し問題にしても、ホテルが休業したとか、何処かの市が入居者に立ち退き命令を出したとか同じ角度から見た記事ばかりを、新聞もTVも取り上げています。誤魔化したことは勿論重大な事ですが、これは現在の建築基準法に照らして強度が不足しているのです。
何処かのマスコミが既存不適格についても論究して欲しいと思うのですが、何処も書いていません。つまり50年前に建てた当時は適法なビルも、今の基準に照らせば不適格な強度しか持っていないと言うことです。
姉葉建築事務所が誤魔化したビルの強度と、以前作られて既存不適格となっているビルと、どちらも強度は不足しているはずです。もしかしたら50年前のビルの方が強度的には劣っているものも有るのではないかと、建築には素人の 私は気になっているのです。
何か事件が起こったら全部のマスコミが付和雷同して同じ記事を書く必要はないはずです。違った角度から掘り下げて独特の見識を示せる記者が一人位は欲しいものです。
スクープは早さの競争だけではないと思います。早さだけならnetの方が遙かに早いですからね。
見当違いのコメントになってしまい申し訳ありません。
平易なネタから深く考えさせるお話に持って行く手法は、学生さん達ががっちり食いついてくることでしょうね。
先生の教えを受けている学生は幸せですね。難しいこともスイスイ吸収できますからね。

4 : ラ・マンチャの男 : November 29, 2005 10:19 PM

tiakujyo様 肩がこらずにお読みいただけたようで嬉しいです。実ははじめてこの標識に出会ったとき、私は驚いたのです。「どうして断定的に『男の子』横断中といえるのか?」と。そこで武蔵は考えた(古いですねえ)。そうしたら「ああ、ここはイートン校の敷地なのだ」ということが、だいぶ経ってからやっと分かってきたという次第です。あまり人さまにえらそうなことは言えません。

5 : ラ・マンチャの男 : November 29, 2005 11:19 PM

rescue様 今回の記事の状況に自分が出会えば、先走って結論を出したくなるのはむしろ当然でしょう。しかし問題は「なぜだろう?」とまったく違う角度から考えることができるかどうかです。その場合、頭の中に「知的抽斗(ひきだし)」がるかどうかです。一か月後にでも、「あ、そうか。あそこはイートン校の敷地だったのだ!」というところへ頭が回るかどうかがポイントです。まあ、青年時代は少しくらい肩が凝ってもかまわないでしょう。いろいろなことをいろいろなアングルから考えてみて下さい。

6 : ラ・マンチャの男 : November 29, 2005 11:29 PM

悠々様 この記事から日本のメディアの画一性に頭を回転してゆかれるというのは凄いですね。たしかに現状は「付和雷同」そのものです。そして何十日かが過ぎると、もう誰もそのことを言わなくなります。ご指摘のとおり、今の基準には合わないかも知れませんが20年、30年前の建築物よりは安全ということがたしかにありうるでしょうね。なぜこういうふうに画一的になるのか。その原因はある程度わかっています。問題はこうした悪習慣を「一撃のもとに打破する決め手」があるかどうかです。私もその決め手を模索している一人です。それとはべつに私の授業がわかりやすいものだろうと想像してくださってありがとうございます。変にもって回らないかわりに、学生はふうふう言っているかもしれませんがーー。

7 : 横断歩道 : December 6, 2005 01:14 AM

 このお話は、以前どこかで聞いた覚えがあります。その場所が男子校でその学校の敷地内には、男の子しかいない状況では、「男の子横断中」という標識があってもおかしくは無いですよね?
 物事を見たり聴いたりするときには、そのことの背景を見通す眼や考える頭が必要だ、という教訓になるお話です。第一印象だけで物事を考えるのは危険だ、という良い例ですね。

8 : 湖の騎士 : December 6, 2005 10:52 AM

横断歩道様 この話は以前どこかで私が話した可能性はあります。慌てもののフェミニストたちへの友情あるアドバイスは一つのテーマで、もう一つは「イートン」という学校に興味をもっていただきたいということです。この名前を聞いて、10分でも20分でも自由に語っていただきたい思いがつよいです。