View of the World - Masuhiko Hirobuchi

December 11, 2005

人生という海には道路標識がない -学生へのメール

(教え子のゼミ生同士の結婚式での祝辞)K君、Yさん本当におめでとうございます。ご両家の皆さん、本日の佳き日を心からお祝い申し上げます。私はお二人を4年間拝見してきました。キャンパスの並木道を仲良く並んで歩いている姿、ゼミのとき一緒に坐っている姿、それから時々私の研究室に話しにきてくれた姿を生き生きと思い出します。学友たちは「あの二人はいつかかならず結婚する」と祝福をこめてあたたかく見守っていました。でもこんなに早くとは思っていませんでした。これは私にとっても、そしておそらくは学友たちにとっても嬉しい驚きです。
人生はよく大海原を行く船の航路にたとえられます。しかし最近の若者の中には、人生という海にも道路標識が付いていると錯覚している者がいます。そんなものはついているわけがありません。でも幼いころから教えられたことだけを忠実に学び、いつも答えがあるような学校生活に慣れてしまうと、応用問題の連続である人生という航路にも標識がついているという錯覚におちいるのかもしれません。これは小学生のころに、夏休みの宿題で昆虫採集をするようにいわれて、カブトムシやクワガタムシをデパートで買ってくるといった経験が影響しているのかもしれません。「なんでもデパートへ行けば売っている」「ほしいものはコンビニで手に入る」といった今の風潮は「幸せまでコンビニで売っている」というような錯覚を生み出している気がします。
人生という航路に必要なのは「心の羅針盤」であり、「大きな座標軸」「度胸」などです。そうしたものが一体となった「常識」や「他人への思いやり」「方向感覚」といったものです。
新郎はそうしたものを十分に備えています。けっして人生という海に道路標識がついているなどとは思わないタイプです。そして新婦は、そうした新郎を頼もしげに見つめ、控えめに協力してゆくタイプです。
お二人の前途はまことに安心して見ていられます。
(時間の関係で言いつくせなかった言葉を補っています。このスピーチは後半の「幸福のシナリオを書く天使」へと続きます。もう1回お付き合いください)

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COMMENTS

1 : rescue : December 12, 2005 09:32 PM

こんばんは、先生。

デパートで昆虫を買うお話には、共感いたします。今の子供達は、「楽に手に入らないものはない」と錯覚していることだけは確かです。

余談を2つします。

私は道路を挟んで反対側が険しい山という田舎で育った人間です。それこそ子供の頃は、山、川、裏庭で遊んだ記憶しかありませんでした。ある夏休み、昆虫採集の宿題をしようと山に入りました。私は低学年だったからか、それとも才能が無かったのか、1匹も採れませんでした。最終的には泣く泣く兄に分けてもらったのですが、未だに悔しい苦い思い出です。

その時の悔しさからか、ある時私は1人で山に入ったことがありました。多数存在するカブやノコを捕まえるためにです。やがて引き返そうとしたとき、辺りは既に真っ暗で、道が分からなくなってしまったのです。ちょっとした遭難ですね。何故か下山することが出来たのですが、その時の怖さは忘れられません。先生は、海を人生に例えた話をされましたが、どうやら山もなかなか味のある厳しい人生に例えられそうですよ。

カブトムシやノコギリクワガタだけではなく、世界のありとあらゆる昆虫がデパートで手に入る時代ですが、ちょっと視点を変えてみます。
今の大人達が子供だった時代には、見ることさえも夢のようだった昆虫。そして彼等が
「自分達の子供達にはヘラクレスやアトラスを沢山見て欲しい!」
という夢を持ちそれが現在のような形になって表れているのだとしたら、ちょっと素敵な話ではありませんか?確かに結果だけ見ると悲しいものですが--。

とにかくも、私は面識がありませんが、ご結婚された御二人、おめでとうございます!

2 : のりまき : December 13, 2005 01:33 AM

聞いてください!!私がバイトしている店で二次会が行われたんです☆そして偶然、出勤日だった私は二人に会うことができました。
予約の時は気づかなかったのですが、二人が現れてびっくり!なんと大学の先輩ではありませんか☆新婦さんがとても美人で大学のころからファンだったのでよく覚えていたのです(><)わたしも大学で二人を見かけるたびにぜったい結婚すると思っていたので、とってもとってもうれしかったです☆☆
私も結婚したいです^^

3 : 湖の騎士 : December 13, 2005 10:43 AM

rescueさん このコラムから今の若者論を展開し、あらゆるものがデパートで手に入ることを、世の識者とは逆に「面白い世の中だ」というふうに捉える思考は柔軟で面白いです。子供のころの悔しい体験、山で遭難しかかった話も、「観念的でなく具体的で」非常に説得力があります。山の場合はそれでも「山頂まで何キロ」とか「左OO峠」などという標識がありますが、海にはそれがいっさいありません。このスピーチは人生の航路で、右に行くか左に行くかを決めるのは「自分しかない」ということを言いたかったのです。

4 : 湖の騎士 : December 13, 2005 10:51 AM

のりまきさん 人生は本当に意外性の連続ですね。まさにこれはエキサイティングなドラマです。まさか新郎新婦が友人たちと二次会で貴方のアルバイトしている店に行くとは! そして私が「スピーチの一つの参考に」と思って、こういうコラムをブログに載せるとは、一昨日まではだれも考えなかったことでしょう。幸せな二人を見て結婚願望をかきたてられたとしたら、この二人は偉大な貢献をしたことになります。なんだか日本の前途が少し明るく見えてきました。コメントをありがとう。

5 : Lucy : December 14, 2005 10:40 PM

Kさん、Yさんは私も知っている方達で、ご結婚されると聞いて本当に嬉しかったです。なぜなら私もあの二人に憧れていた一人だったからです(*^_^*) どうぞ末永く御幸せに…

さて、話は変わりますが先生のお話を拝見させて頂いて改めて人生には道路標識はないのだと再認識しました。道路標識があるんだと信じている若者が多いのは悲しいことです。私も道路標識があったらどれだけ楽かと思います。しかし、人生は自分が持っている羅針盤や地図を使って切り開いていくものだと思うのです。

余談ですが、私も田舎で育ったので小さい頃は様々な昆虫や動物を捕まえに行ったものでした。夏には近くの田んぼに蛍もいて、たくさんの光を子供ながらに感動して見ていたものです。今の子供達はデパートやコンビニに何でも売っていると思っていると知った時は驚きを隠せませんでした。若者の心が豊かになっていくことを願っています。

6 : 湖の騎士 : December 15, 2005 12:05 AM

Lucy様 K君とYさんをご存知だったとは嬉しいです。あの二人は本当に人に祝福される何かを持っている人たちです。かならず幸せになれるカップルです。 さて私が言いたかったことの本質にズバリと迫っていただいて幸福です。人生という名の海に道路標識が付いていると思っている若者が多いのですね。本当に大切なのは心の羅針盤であり、一瞬の判断力であり、意思力なのですが、それらが欠けている人が多いです。でも貴方はそれを意識して補おうとしておられるところがすばらしいです。 昆虫の話にしても書き手の意図を正確に捉えていただき心強いかぎりです。