View of the World - Masuhiko Hirobuchi

January 03, 2006

イヌ年・スヌーピー・年賀状 -学生へのメール

新年おめでとうございます。まずは穏やかな年のはじめでなによりです。
さて今年はイヌ年。いただいた年賀状には「わが家の愛犬」というのが非常に多く、写真入りのものも多数ありました。もう一つのジャンル(?)は、「おかしな世の中になってきた」と怒っておられるものです。これも毎年けっこう多いです。でもなんといっても圧倒的に多いのは、「無難なもの」です。「昨年は大変お世話になりました」という言葉は美しいのですが、その方には一度もお目にかかったことがなかったりしてーー。しかし大物はそういうことは気にしないものなのでしょう。
ところで「2006年はイヌ年だから、スヌーピーの人気がもっと高まるという声がつよいですが、先生はどう思いますか?」というコメントを求める電話が、昨年のクリスマス前に「デイリー・ヨミウリ」(英字紙)の編集部からかかってきました。虚を突かれたというか、そんなことは考えたこともありませんでした。「そうだ、いわれてみればそうなんだ」と当たり前のことを感心していました。
しかしただ感心しているわけにはいきません。とっさに頭に浮かんだコメントをしました。記者の質問の中には「スヌーピーへの理解が深まるか?」というものが入っていたのですが、これについては楽観的な答えはしにくいというのが、正直なところでした。いま、街にはスヌーピーたちがあふれています。ぬいぐるみ、文房具、衣類、ポスター、食品など、彼とその仲間に会わない日はありません。
では、天才チャールズ・シュルツが心をこめて伝えようとした重要なメッセージは日本に伝わっているのでしょうか? あの白いビーグル犬と飼い主の少年チャーリー・ブラウンたちが、控えめに発信している文学的香気ゆたかなメッセージを理解する人の数はふえたのでしょうか? ライナス少年が小さな頭で考える宇宙空間にまで広がる悩みは? 私が1993年に『スヌーピーたちのアメリカ』で伝えようとした漫画『ピーナッツ』の真価を理解する人はふえているのか?
答えは悲観と楽観の中間点あたりです。悲観材料は、この12年間で、日本の教育水準がいちだんと低下していること。したがって『ピーナッツ』を読みこなせる人の絶対数はへっているだろうこと。楽観材料は、そうはいってもこういう文化を愛し楽しむ若者はどこかで着実にふえつづけていると思えること。欧米で生活して帰国した人も多いし、私の本もテレビ・ラジオでの解説も、大学での講義もいささかの貢献はしているだろうと思えるからです。
ただ話しただけでは、記者も不安だろうし、こちらも過去にあまりにも主旨と違う編集の仕方をされた経験があるので、発言内容を文章にして送りました。
出来上がった記事は、みごとな英文になっていました。まずシュルツ夫人のコメントが入り、そのあとに私のコメントが来ました。愉快なのは私が「スヌーピー学」の研究家と紹介されたことです。そんな学問があるのでしょうか? その女性記者は Snoopiology (スヌーピオロジー=スヌーピー学)という言葉を使っていました。12月24日付けの新聞です。
今年もいろいろなことがあるでしょうが、楽しいことのほうが悲しいことよりも多い気がします。どうか「よいイメージ」「ポジティブなイメージ」を抱いてこの1年を送ってください。今年が幸多い年でありますようにお祈りしています。

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COMMENTS

1 : tiakujyo : January 3, 2006 04:20 PM

2005年は、先生ともあろう方と、お近づきになれました。この書き方も、おかしな間違った言い方かもしれないけど、ふつうのオバサンとして、見栄を捨て、学生さんと先生の会話のキャッチボールが楽しく、また私のためになりました。
『スヌピーたちのアメリカ』で、知らなかったことをたくさん教えてもらいました。戌年を機に、もう一度出版されるといいですね。

2 : 湖の騎士 : January 3, 2006 09:55 PM

tiakujyo

3 : 湖の騎士 : January 3, 2006 10:03 PM

tiakujyo様 今年最初のコメントをありがとうございます。最近愛犬をお持ちになった tiakujyo さんに関わりのあるこの記事へのコメントをしていただき本当にありがたく思っています。私の書くものと学生たちのやりとりを楽しんでくださり、さらに私について過分のお言葉を賜わり恐縮しています。学生たちも貴女さまのお書きになるコメントを心から楽しんでいます。どうか今年もよろしくお願い申し上げます。ときどき貴ブログにもお邪魔します。

4 : rescue : January 4, 2006 02:52 AM

先生、新年おめでとうございます。
去年も大変お世話になりました。今年で先生の下を離れることになってしまいますね。しかし感傷的になるには少し早いので、こういった話はまた後ほど。
「スヌーピーは犬なんだ」ということを再確認しました。スヌーピーがあまりにも有名すぎて何の動物であるか忘れてしまっていました。あくまでも犬なんですね。
イヌ年だからスヌーピーへの理解が深まるということがあるのでしょうか。どの年であってもスヌーピーから学ぶことは大きいものである、と考えるのですが・・。しかしそんなことは当たり前の話ですね。
とは言え私も、この記事を読んで『スヌーピーたちのアメリカ』を再読しようと思いました。また何か新しい発見があるかもしれません。

5 : ゆっきー : January 4, 2006 08:40 AM

明けましておめでとうございます。私事ですが、本当に昨年はお世話になりました。
さて、スヌーピーのことですが、私は明らかに先生の講義を拝聴したおかげで「ピーナッツ」への理解が深まった者の1人です。スヌーピーの人間的思考能力や、その仲間たちの考え方には、こちらがついていくのがやっとでした。できるならば、あの講義をまた聴きたい・・という思いもあります。日本中に「ピーナッツ」の真価が伝わる時が来ることを期待します。

6 : 湖の騎士 : January 4, 2006 10:17 AM

rescue様 スヌーピーが有名すぎて何の動物だったか忘れていたというのは、じつに愉快な話です。貴方は一流のユーモリストです。犬だということを思い出してくれただけでも新年の大収穫(?)です。さて『スヌーピーたちのアメリカ』を読み返してください。1年生の時に読んだのとはまったく違う世界が語られていると思います。人は成長するごとに同じ本から大きく異なる発見や驚きを得るものです。残り少ない学生生活を大事にして下さい。

7 : 湖の騎士 : January 4, 2006 10:27 AM

ゆっきー様 世間一般が理解しているスヌーピーと彼の仲間たちと貴方が理解しているものが違うということ、しかもその理解の深まりが私の講義を聴いたためだというのは、本当に嬉しいことです。『ピーナッツ』の登場人物たちは、じつに個性ゆたかですばらしい子供たち(それに犬と小鳥)です。彼らの心が分かれば人間の心がわかってきます。こういう上質の読み物を愛する人々が日本中にふえていってほしいと願っています。かつてアメリカに留学した超優秀な日本人たちが、『ピーナッツ』の会話で英語を学びなおしたということを思い出して下さい。この文化をもっと知らせるために、私ももう一ふんばりするつもりです。今年もよい年でありますようにーー。

8 : Lucy : January 4, 2006 04:25 PM

先生、明けましておめでとうございます。今年もご指導のほど宜しくお願いいたしますm(_ _)m

さて、新年の挨拶といえば年賀状ですが、近年は年賀メールというものが多くなり、年賀状を数えたり一人ひとりの言葉をじっくり見る楽しみも減ってきましたね。昔は芋版でせっせこ作ったものですが(笑) 絵柄はパソコンに頼ってますが今でも一人一人にコメントを書き、無難なことは書かないのがLucy流です。新年の挨拶として年賀状が始まったと思うのですが、最近は順序が逆になっているような気がします。

戌年にあやかって(?)今年も益々ピーナッツの世界が広まっていくといいですね。最初はスヌーピーをかわいいキャラの一つとしか見ていなかった私ですが、先生の講義の中で他国の考え方や文化といった様々なものがピーナッツ、またはキャラ達の中に詰め込まれていることを教えていただき本当に良かったと思っています。これからも先生にはSnoopiologyの第一人者として頑張っていただかなくては。
そして、いつかSnoopiologyを専攻する学生が出てきたらおもしろいですね。

9 : 湖の騎士 : January 4, 2006 05:55 PM

Lucy様  新年のご挨拶ありがとうございます。今年もどうかよろしくお願いします。年賀状についての、全体像(?)が把握できているところがLucyさんらしいですね。何事にも大局観は必要ですから。はじめはスヌーピーをかわいいキャラとしか見ていなかったのが、やがてそのただならぬメッセージ性に気付かれたとうかがい喜んでいます。Snoopiology に関しては、私の三冊目のスヌーピー物が出たのを読んで、「この本が1年前に出ていたら私の卒論のテーマは変わっていただろう」といった若い女性がいました。その人のピーナッツ文化についての知識も理解もすごいもので、この日本のどこかには Snoopiology を専攻しようとしている若者がけっこういるのだと思います。本家本元としてはもっと啓蒙活動に力を入れなければと思っています。

10 : mix : January 4, 2006 08:28 PM

あけまして、おめでとうございます。
お久しぶりです。2・3週間前より以前のようにブログチャックをはじめてはみたものの、最近痛いところを突かれて書き込めない状態でした。
何回か続いた英語学習についてはごもっとも、ごもっともと思うのですが、英語が出てこないときには「最近、使ってないから忘れちゃって」などと言い訳をしている私を発見。
また、今回の「イヌ年・スヌーピー・年賀状」では、私の年賀状を見られてしまったようで、お恥ずかしい限りです。
ま、何はともあれ、今年もよろしく!

11 : 湖の騎士 : January 4, 2006 10:46 PM

mix 様 お久しぶりです。英語に関する記事は、23、4歳の若者が「最近英語のレベルが落ちてきた」というので、「その若さでそのせりふはないだろう」と思ったのがきっかけです。(彼はこのコメントを読んで苦笑している可能性があります)。結果的にはずいぶん世の人々の反感を買ったでしょうね? みんな敬遠して近づかなくなるのは当たり前です。年賀状については、それこそ文房具屋さんで売っているような文面が何百通もきて、「もう少し体温が感じられるものを書いてくれ!」と悲鳴(?)をあげつつせっせと礼状を書いてきた過去の結果です。mixさんを傷つけてしまったら申し訳ありません。でも根は明るい人間ですから、お気になさらずどうかまた時々いらしてください。

12 : MH : January 7, 2006 12:56 AM

 あけましておめでとうございます。ブログの益々のご発展をお祈りします。
度々訪れては学ばせていただいています。実はこちらで初めて先生の素顔を知りました。それまでは御著書から「スヌーピー学」の権威であられることと信じきっていましたから。
 頂戴しましたお年賀状で改めて気がつきましたが、ブログのロゴマークもシンプルで格調高いデザインですね。これまた今年はスヌーピーが喜び踊る図柄に違いないと勝手に思いこんでいました。
 さて久々のスヌピオロジーに早速「デイリー読売」をWebで探しました。見つけた嬉しさで(www.yomiuri.co.jp/dy/features/scene/20051224TDY13005.htm)一気読み、、、したくとも、思いのほか長文なので一体どこに先生が登場されるのかと挫折しそうになりながらもなんとか読み終えました。シュルツ夫人の談話をからめながら、日本の東西での催しと「スヌーピー学者」の主張を対比させて日本社会におけるスヌーピーを外面と内面の両方から迫る段取りが巧みですね。先生の談話が締めくくりの未亡人のコメントの深い味わいを引き立てるように構成されていて見事です!英語が充分わかるわけではないのに心の温かさが直に伝わってきました。不思議です。 何となく今年がいい1年になりそうな気分になってきました。ありがとうございました。どうぞ本年もよろしくお願いします。

13 : 湖の騎士 : January 7, 2006 12:17 PM

MH様 デイリーヨミウリにまでアクセスしていただき本当にありがとうございました。この女性記者はシュルツ夫人と私のコメントを生かしつつ、自分の哲学を嫌味なく表現していて大したものだと思います。若い世代にこういう力をもった人が出てきているのですね。年賀状のデザインもお褒めいただきありがとうございます。あまりヘビーにならないように気をつけつつ書いていきますので、今年もどうかよろしくお願い申し上げます。幸多い1年でありますようお祈りしております。

14 : DY : January 11, 2006 10:10 PM

先生およびMHさま 記事を読んでいただきありがとうございます。お褒めにあずかり大変恐縮です。学生時代Peanutsを読んだことはあったのですが、当時は私の語学力が足りなかったため完全にはその世界を理解できていませんでした。今回の取材で先生の本を拝読してやっとその理解を深めることができました。ありがとうございました。

15 : 湖の騎士 : January 11, 2006 10:41 PM

DY様 コメントをありがとうございます。これだけの英文をお書きになる貴女様が学生時代は英語力が不足で『ピーナッツ』を読みこなせなかったというのはあきらかにご謙遜です。しかしもしこの漫画の中に理解しにくい個所があり、私の本がなんらかのお役に立てたとしたら、大変に嬉しいことです。大きな未来をお持ちの方ですから、今後ともますます充実したお仕事をなさって下さい。