View of the World - Masuhiko Hirobuchi

April 01, 2006

ドビルパン首相は貴族の血統 -

フランスが揺れています。つい最近も政府の労働政策に反対するデモで、警察の発表でも100万人規模のデモがありました。デモを組織する側の発表ではフランス全土で300万人に及んだそうです。私たちは遠いヨーロッパで何が起きていようと、自分の生活には関係がないと思いがちです。逆に向こうの人たちは日本の民主党の首脳部が総退陣しようとしまいと、そんなことは自分たちの生活に関係がないと思っています。靖国参拝で中国が日本にどんな注文をつけ、両国の関係がいかにきしんでいても自分たちには関係ないと思っています。
しかし、フランスで起こっていることは、けっこう重大です。20年後くらいには、日本女性が大好きなルイ・ヴィトンのバッグなどに大異変が起きているかも知れません。この国の政情不安定は、国内にイスラム教徒を多く抱え込みすぎたためというのが、大方の見方です。これを語ってゆくと話はけっこうむずかしく深刻になってゆきますので、今日は週末らしく、「日本のメディアではまず伝わってこない軽い話題にしぼりましょう。
日本の新聞やテレビは、「ドビルパン首相」と伝えています。「あ、そうかドビルパンという姓の人なのだな」とだれでも思い、そこから先には頭が回りません。しかし英語やフランス語では、この姓は重要な意味を持ってきます。彼の名のスペリングは Dominique de Villepin だからです。貴族の出自であることを示す de が Villepin という姓の前についています。もともとは「ヴィルパン家のドミニック」ということです。欧米のメディアに接している人々は、誰もとくに何も言わなくとも「そうか、彼は貴族の家柄なのだな」ということがただちに分かります。しかし日本のメディアのように、ただ「ドビルパン」と表記してしまうとそういうことはまったく伝わりません。
彼が貴族の出身だから、エリート意識が強く、庶民の苦しみが分からないために、騒ぎが大きくなっていると思うのは短絡のしすぎでしょう。もっとこの不安定の底にある原因を冷静に見つめるべきだと思います。しかし、日本人の多くが大好きなフランスが変質しつつあるという事実、そしてシラク大統領に次ぐ実力者である「ドゥ・ヴィルパン首相」の家系が貴族のそれであるということだけは、頭に入れておきたいものです。日本のメディアの人名表記では見えてこない真実が見えてきます。

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COMMENTS

1 : カスミ草 : April 1, 2006 07:37 PM

恥ずかしいです!
フランスに首相がおられることさえ知りませんでした。
タダ、こんな法律って許せない!と思っていただけです。
首相の上にシラク大統領がおられるのですか?
若者が希望を持てない国は日本だけではないのですね。

2 : 湖の騎士 : April 1, 2006 10:07 PM

カスミ草様 率直にお気持ちを語ってくださり、幸せです。ドゥ・ヴィルパン首相は3年前の今ごろは、外務大臣でした。アメリカのイラク攻撃に反対して国連で大演説をぶち、日本の一部の新聞は千両役者のように持ち上げました。その彼がいま首相として内政問題で苦しんでいます。やはり首相には庶民の気持ちが分かる「苦労人」の方がよいのでしょうか?

3 : Jules Verne : April 2, 2006 12:24 PM

首脳の名前の意味は全く知りませんでした。知らないということは物事の全体像が捕られないということですね。大変勉強になりニュースの見方が変わりました。

若者に不利な労働関係の法案が可決され大学生がデモを起こしているニュースは私も見ました。
このニュースを見て今後国政を担う若者がいるフランスは期待出来るのではと思ったの私だけでしょうか。

一見すると暴力的なデモ行為は中途国家が行うイメージですが、それだけ国民が国家に対して主張している証拠ではないかと考えています。
過去には安保や自治問題により大学闘争やデモ運動はありましたが今の大学生にはその原動力もないでしょう。日本の大学生は他方に関して無関心です。自己に対して利害があったとしても大多数はデモなどの行動は起こさないでしょう。日本でも同じような法案があがったときどうなるのか興味があります。

4 : 湖の騎士 : April 2, 2006 12:42 PM

Jules Verne様 貴方のような前途ある若者にとって、この記事が役に立ったとすれば、大変うれしいことです。日本語の人名表記は時にあまりにも原音に忠実すぎ、時には元の意味など考えずに変に崩してしまうので、物事の真実が見えなくなることが多いです。さてこのデモを見て、「フランスには未来がある」という見方と「フランスの未来は暗い」という相反する二つの見方があります。日本の大学生が、理不尽な政策に対しても立ち上がって抗議する情熱を欠いているというのは事実で、それはそれで心配ですが、フランスの場合は旧植民地からイスラム教徒の移民が大量にやってきています。フランスの法律に従わず、イスラム法が支配する地域があり、そういう所では警察も手が出せないそうです。今回の労働法はそうした状況を踏まえてのもので、この国は次第に「分裂に向かう」だろうという見方が強いです。

5 : 悠々 : April 2, 2006 11:29 PM

フランスでは未だに階級社会ですから、貴族の称号が幅を利かせるのかも知れませんね。
SNCF(フランス国鉄)には一等車が連結されていますが、座席とかは普通車と全く変わりがないのです。単にドアに一等車の標識が付いて居るだけです。
それでもエリートはそれに乗るし、乗らないのは自分がエリートでは無いと宣言するに等しい行為と言うことになるのです。
AF(エールフランスの機内も同じ事で全く同じ座席ですが、一等とエコノミーに歴然と分けてあるのです。
ドゥ・ヴィルパン首相が敢行しようとしてる若年者切り捨てとも見える施策は日本から見ているとかなり乱暴な施策ですが、フランスの国内事情からするとやむを得ない方策なのだと思われます。
これに大声を上げて反対しているのは若者集団だし、おそらくはイスラムの人が大部分を占めているのではないかと私は推察しています。
フランスは旧宗主国として、旧植民地の人間は無条件で受け入れてきています。そのために黒人とかイスラムの人がフランス本土へ大量になだれ込んでいるのです。
植民地主義の負の遺産です。
これらの新国民を企業が受け入れやすいようにと考えたのが、今回の法改正です。
3年間の無条件解雇条項は両刃の刃物です。
新国民を企業が採用しやすくする訳で、善良な労働者なら継続雇用するし、ぼろを出す不良労働者なら解雇するという選択を企業に与えるもです。
この改正法を悪用する企業も有るでしょうし、質の良い労働者は就業の機会を得る訳です。
フランスという国は、バランス感覚に優れているから、多発する交通ストでも利用者は何とか折り合いを付けて居るし、共産党政権になっても極端な左傾化は起こらないで、国全体として上手い舵取りが行われてきました。
今回の騒ぎも、上手く折り合いが付いて、落ち着くものと信じています。

6 : 湖の騎士 : April 3, 2006 10:36 AM

悠々様 さすがにフランスにお詳しいコメントで、おかげさまでこの記事が立体的になりました。たしかに日本で見ていると乱暴なように見える施策でも、宗教も皮膚の色も価値観も違う人々を抱え込んで企業経営をしてゆく難しさを考えれば、やむをえないことが多々あるのだと思います。そういうことを総合的に考える習慣が日本に根付いてほしいと願っています。