View of the World - Masuhiko Hirobuchi

May 19, 2006

許せない「お前」という呼び方 -

18、19両日のNHKテレビ「純情 きらり」で東京音樂学校生タツヒコは、ヒロイン桜子を「お前」と呼びました。これはもう許せない言葉づかいです。前の記事でも書きましたが、このドラマの舞台は昭和13年ごろの日本です。当時の日本で、元旧制高校生で東京音楽学校生が高等女学校を出た同年輩の女性を「お前」と呼ぶことは絶対にありませんでした。「君」でさえはばかられたでしょう。いまの高校卒と違い、当時の高女出はエリートであり一人前のレディでした。男子は敬意をもって彼女たちに対していました。そういうヒロインに「お前」というのは、考えられないことです。ドイツ語でもフランス語でも「君と呼ぶ」という表現があります。duzen と tutoyerです。これは肉親や親戚の男女以外では本当に「親密な関係の」相手にしか使わない言葉です。du(ドゥ)とかtu(テュ)とかtoi(トワ)という言葉は、それこそ「特別な関係になった」という相手にのみ使うものです。「お前」を使わないのが文化であり節度であり、たしなみなのです。当時の高女卒に「お前」といったら、ただちに平手打ちを食わされただろうと思います。「そんな呼び方をされる覚えはない!」と。1か月前にNHKに「俺の使用はおかしい」と抗議しましたが、完全に無視されました。NHKは受信料という「公金」を使って文化を破壊し、歴史を作り変えているのです。その悪影響ははかりしれません。

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COMMENTS

1 : mix : May 20, 2006 08:02 AM

私も「お前」は嫌いです。
若い子達は使っているようです。きれいな言葉には聞こえないのでいやですね。
夫は普通は私のことを名前で呼んでいます。もちろん、呼び捨てですが。でも、たまにけんか腰のときなどに「お前」と呼ぶのです。夫婦でもこう呼ばれるのは馬鹿にされているようで気分よくありません。
冷静になった夫に「お前」はやめてくださいといったら、「御前(おんまえ)は昔の言葉で相手に敬意を持って呼ぶいい言葉なんだ」とのたまわく。そこだけ昔の言葉使われてもねー!

2 : tiakujo : May 20, 2006 09:31 AM

困ったことに、小2男児孫2人は、得意げに、オレ・おまえ を使ってます。
ママにこの話題を伝えたけど、現状云々で、、、。
すでに世間は、完璧に侵されてますね。

3 : 湖の騎士 : May 20, 2006 11:29 AM

mix様 「お前」が丁寧語だった時代はたしかにありました。しかし「拙者」も「お前様」も「お手前」も使われなくなって以来の「お前」は美しくありません。むずかしい教育論などより、こういうことから言葉を立て直していかないと、文化も上品さも死んでしまいます。「俺」「お前」で育った子供たちは、外国人に対してもTPOをわきまえたコミュニケーションができないで、「粗野で」「野卑な」人間とみなされるでしょう。これらに加えて私はヒロイン桜子の「稚なさ」が気になります。当時高等女学校を卒業した女性ははるかに大人であり教養もありました。桜子には「知性」「教養」といったものが感じられません。

4 : 湖の騎士 : May 20, 2006 11:36 AM

tiakujo様 「上品さ」「つつしみ」「節度」「誇り」ーーこうした美徳はことごとく消えていきます。幕末に日本に来た西洋人は、日本人のこうした美徳に感銘を受け、日本を侮らなくなったのですが、お孫さんの世代が外国人と接するころには「野卑で」「文明化されていない」と映るのではないかと心配です。世の悪童たちとは違った教育を家庭でしてほしいですが、そうするとまた「変わっている」ということでいじめにあったりするのでしょうか? 

5 : ひばり吹雪 : May 20, 2006 07:13 PM

公金を使って歴史を変えているのは確かですがそういう-面だけではないと思います。確かに歴史的問題について問うのもいいですがもう少しよいところにもこのブログでやっていただきたいと思います。この記事の内容についてはそのとおりだと思います。

6 : yoyo : May 20, 2006 10:26 PM

あまりテレビを見ないので コメントのしようがありませんが、"お前" と呼ばれたことの記憶もないし、( おい! あ~ の方がもっと 品性が無いかも?) "オレ"も 耳に残っていない?  上品な家庭とは程遠いですが、一般の大人が 家庭内で使われているかは?です。 テレビを見て 耳障りに聞こえるのは 普段耳にしないからではないのでしょうか?

7 : 湖の騎士 : May 21, 2006 08:53 PM

ひばり吹雪様 NHKがファインプレーをすればもちろん褒めます。この「純情 きらり」は、これから日本が戦争に突入する時代を扱うと思うので、「正確に事実を伝える義務がある」と思って書いているのです。一人称や二人称さえも正確に書けない作者やディレクターに中途はんぱな知識で戦争を語ってほしくないのです。皆さんは気付かないでしょうが、こういうことをないがしろにしていくと、気付いた時には日本人の歴史観はおそろしく歪んだものにんっているのではということを心配しています。

8 : 湖の騎士 : May 21, 2006 09:03 PM

yoyo様 実生活で「おれ」や「お前」を聞かずにお済みとは非常に恵まれておいでです。現代ではそういう方は少ないでしょう。私がこれらの言葉を咎めるのは、「ひばり吹雪」さんへのお礼でも書いたとおり、これからこのドラマは「戦時下の日本」を扱うからです。一人称や二人称の用い方についてさえ正確な知識をもたぬ作者やディレクターが、日本の現代史を扱う恐ろしさを予感するからです。視聴者は素朴で、「天下のNHKが放送したのだから、その内容は正しいのだ」と思ってしまいます。このドラマ一つで、癒しがたいほどの心の傷を受ける人たちが何百万人も出てくるでしょう。それは日本の未来を危うくするものです。先に先にと頭が回転して申し訳ない気もしますが、これが私の本音です。

9 : yoyo : May 22, 2006 12:17 AM

耳ざわりに聞こえてくるようなら まだいいのかもしれませんね。これが当たり前に 何の抵抗も無く、受け入れてしまうようなら 恐いことです。人間の慣れ,順応は早いものです。このように警笛を鳴らしてくださることは ありがたいことと思っています。

10 : 湖の騎士 : May 22, 2006 11:17 AM

yoyo様 警笛を鳴らすと耳障りと感じる人もいるでしょうが、このようにおっしゃっていただきありがとうございます。今後は少しは楽しいことも書くようにしましょう。

11 : カスミ草 : May 23, 2006 10:03 PM

やはり関西は言葉が汚いのでしょうか?
「お前」なんて当たり前に耳にしています。
主人も当たり前のように私に使います。
YOYO様が羨ましいです。
子供たちも遊びの場で使っています。
環境に慣らされるのは怖いですね。

12 : yoyo : May 23, 2006 11:24 PM

いえいえ 会話そのものが 乏しくて ?なんて呼ばれていたか 思い出せない? "あ~,ウ~、" で終わっているような? 不思議な夫婦です。

13 : 湖の騎士 : May 23, 2006 11:45 PM

カスミ草様 いえいえ関西の言葉が汚いということはありません。関東よりも洗練された言い方はいくらでもあります。しかしこのNHKドラマは、昭和13年代の日本を扱っているのであり、そのころの旧制高校生で大店の若旦那が同年輩の高等女学校卒業生を「お前」などと呼ぶことは絶対になかったーーといっているのです。夫婦の間ではむかしもいまも「お前」はごく自然に使われており、それはそれでいいと思います。私はあくまで「昭和10年代を描くのなら正確に描いてほしい」といっているのです。

14 : 湖の騎士 : May 23, 2006 11:52 PM

yoyo様 カスミ草さんへのコメントに書きましたが、夫婦間の呼び方はそれぞれの自然体でいいと思います。しかし繰り返しますが、このドラマの背景は昭和13年ごろの日本であり、タツヒコが未婚の高女卒の桜子を「お前」と呼ぶことはありえない。もっと正確に時代を描いてくれーーといっているのです。65,6年前の若者は異性に対してもっと紳士的に振る舞っていました。お騒がせして申し訳ありません。

15 : yoyo : May 24, 2006 02:24 PM

記事の本質から離れ,井戸端会議化してしまい 申し訳ありませんでした。(主婦丸出しでしたね。) 私たちの親が 青春時代の時代背景なんですよね。何の時代でおいても しっかりとした考証をして、正確に伝えてほしい、なし崩しにならぬように危惧されての 今回の記事でしたのに。そして今に繋がる悪影響を憂いていられるのに、とんだ脱線をしてしまいました。 どうしても自己中心に考えてしまいますので、先生のあわてていられる様子が感じられて 不謹慎ながら 舌をぺロッと出しています。

16 : tiakujo : May 25, 2006 09:05 AM

先生、今朝は「キミ」と言ってました。
先生の抗議がごもっともとなったのですね。
そうでなくちゃー・・・ネ。

17 : 湖の騎士 : May 25, 2006 03:23 PM

yoyo様 私が心配していることを正確に理解して下さってありがとうございます。ご自分の日常感覚丸出しだったと正直に話して下さり、本当に好感がもてました。少し重いものを続けたかもしれませんが、つくづく思うのは日本語に品がなくなってきたことです。高価なブランド品をもつ人の数は、ドラマの時代に比べれば1000倍以上になっているでしょうが、言葉は数段劣化していますね。

18 : 湖の騎士 : May 25, 2006 03:26 PM

tiakujo様 今朝は私も見ました。たしかに「キミ」と言っていました。私の抗議が効いたのかどうかは分かりません。一方で「オレ」と言っていましたのでーー。少しは脚本かもディレクターも「考える」ようになってくれればと願っています。