View of the World - Masuhiko Hirobuchi

May 25, 2006

W杯に全く興味がないドイツ人 -

ドイツに住む友人のJさんからメールが届きました。親友が訪日することについての連絡ですが、その末尾に「ワールドカップ開催中のドイツでの大騒ぎはいやだ」とあり、おそらくフランスあたりへ逃げ出すだろうという含みでした。そして「夫も私もサッカーには全く興味がない」と結んでありました。私がイギリスでの生活で見聞したことを裏付けるメールでした。見聞したことというと、「イギリスでは知的な人々はサッカーを見ない」ということです。サッカーに熱中するのは、もっと「大衆的な」人たちであり、紳士淑女というのはこのスポーツに興味がないーーというものでした。彼らはクリケットやラグビーには興味がありますが、サッカーには興味がないのです。この「イギリス人」は「ドイツ人」にも「フランス人」にもほぼ当てはまるのではないかーーと思っていたのですが、そのことが確認できた思いです。
こういうことをいうと、日本では大きな誤解を招きます。「大衆が愛するもののどこが悪いんだ!」と叫ぶ人が多いでしょう。しかし、メディアは「ヨーロッパの知的階層は、サッカーにほとんど興味がないのだ」という情報だけは、なんらかの形で伝えるべきだと思います。21日日曜日の夕7時のNHKニュースは、日本チームの福島での合宿を長々と伝えましたが、牝馬の最高のレースである「オークス」については、一言も伝えませんでした。いちじるしくバランスを欠いたニュースセンスでした。
ドイツでは国を挙げてワールドカップに夢中になっていると思うのはまちがいです。全く興味がない人々も相当数いるのだということを知って報道するのと、知らないで報道するのとでは、ニュースの組み立て方もちがってきます。
もうひとつ、サッカーをあまりにもすてきなものだと思い込みすぎて育った青少年は、大人になって欧米のインテリと会話をする場合に、かならず違和感を感じるだろうということをいっておきたいと思います。こちらが夢中になってサッカーの話をしても、向うは乗ってこずに、「ふんふん」と冷たくうなずくだけということが起こりがちです。これも「先方の生活感覚や価値観についての情報不足」のゆえです。以上あえて敵を作るようなことを書きましたが、こういうことを十分に心得た上で、「それでもなお、私はサッカーが好きだ」というのであれば、それはそれで結構なことだと思います。

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COMMENTS

1 : HANA : May 25, 2006 10:18 PM

 確かに今回のW杯の報道は過熱していると思います。
そんなに報道したら敵チームにすべて筒抜けになってしまうのに、と思うほどです。

 とはいえ、私はサッカーが大好き!!静岡育ちなので小さい頃からサッカーの話題は当たり前でした。体育の授業では女子でもサッカーをやりましたよ。
 
 ブログでも書きましたが、西ドイツ(当時)のベッケンバウワー選手が活躍していた頃も知っています。そんな私ですから世界の一流選手が出場するW杯は楽しみです。

 貧しい人々が世間で認められる手段としてスポーツで一流のプロ選手になることは最も効率がよいのではないでしょうか?もちろん、それだけの素質と努力あってのことです。サッカーが比較的貧しい国で盛んなのはそんなことも理由なのでしょうか。ボール一つあればどこでも練習できます。

 クリケットは映像でしか見たことがありません。エリートが主役のイギリス映画では必ずそんな場面がありますね。そういえば、「ハリー・ポッター」でも空中でのクリケットのような試合をやっていました。

 ラグビーは大好き!!生の試合はサッカーより面白い。でも、歴史はよく知りません。見ていて面白いというだけです。

 日本ではエリートのたしなみとしてのスポーツってあるんでしょうか?廣淵先生はどんなスポーツが得意ですか?

2 : 湖の騎士 : May 25, 2006 11:11 PM

HANA様 さっそくコメントをありがとうございます。人が気に入って楽しんでいるものをなにもわざわざ孤立を招くようなことをいわなくても、と思いましたが、「こういう価値観もあるのですよ。それを知った上であなたのお好きなように」ということを、だれかがいわなくてはと思い憎まれ役を買ってでたのです。そうですかHANAさんは静岡のご出身ですか。静岡はサッカー王国ですね。女の子もサッカーをするというのもいいですね。私が長年紹介している『ピーナッツ』(スヌーピーたちが活躍するマンガ)では、ルーシーも野球をしています。他の女の子はアメリカンフットボールをしています。さて、私が中学に入ったころは、日本は明日の食事にも困る時代でした。最もお金のかからないスポーツということで、卓球の選手になりました。草野球の選手もしました。テニスは卓球の延長の感覚で相当熱を入れましたが、自分よりうんと若い女性たちに負けるようになり、しばらく遠ざかっています。ゴルフもずいぶんやりました。いまは中断中です。競馬もかなり好きでした。ごく平均的な趣味の持ち主です。サッカーが貧困から身を起こして夢を実現する道だという見方に賛成です。夢をかなえる若者がどんどん出てきてほしいです。

3 : mix : May 27, 2006 10:08 AM

私もW杯の報道しすぎはどうかと思っていました。猫も杓子もW杯!みんなそろって応援しましょう!と、どのテレビ局も報道しているようで反感を感じていました。
「いろんな価値観があっていい」私もそう思います。でも、多くの日本人はそのように考えないのでしょうか?
ちょっと話が前の話題になりますが、日本のいじめのひとつの要因にそのあたりがあるように思います。みんな一緒でなくてはならない。
「出る釘は打つ」
すなわち、
「みんなと違うことをする子はいじめよう」
どうして、他の価値観を認めようとしないのでしょうか?

4 : 湖の騎士 : May 27, 2006 11:11 AM

mix様 W杯の報道について「全体主義のにおい」を嗅ぎ、「異論を認めない空気」を憂うる気持ちを抱いている人はけっこう多いと思います。この現象を「いじめ」の根にあるものと結びつけられたご着眼はすばらしいと思います。異質な意見を尊重することこそが戦後の誇るべき理念であったはず。右も左も、真中をよそおった俗論も、「全体主義」に傾斜するものはすべて危険で恐ろしいです。

5 : ひばり吹雪 : May 28, 2006 08:10 AM

まあ,まさしく日本とは正反対です。本当に以外です。でも,開催国が盛り上がらないと何かやる気出ませんな。日本から全世界へW杯ムードを・・・と,頼みたいです。はい。
また,こちらのブログの方にもコメントよろしくです。

6 : 湖の騎士 : May 28, 2006 11:36 AM

ひばり吹ヨーロッパにはサッカーに一喜一憂する人々と全く無関心な人々がいるということ。知的な人々の間にはサッカーに興味がない人が多いということを知っておいてほしいーーという単純な情報です。あんまりサッカーに夢中になっていると「カッコワルイ」という雰囲気が、あちらの知的階層の中にはあるのです。それをわきまえておこうというのが、この記事です。

7 : 湖の騎士 : May 28, 2006 11:40 AM

ひばり吹雪さま さきほどのお礼のコメントであなたのお名前が投稿の際に半分消えてしまいました。まことに失礼しました。なおご自分のブログもぜひご覧ください。

8 : Rei67. : May 30, 2006 07:00 AM

好きな方方が見れば良いのでは?、また、応援しれば良いのでは。私にとってはベースボールも大相撲、K1、ゴルフも同じ。いや、K1なんかの方がおもしろい、外国まで追っかけて騒ぐほどではない。と、言うと怒られるかな?。

9 : 湖の騎士 : May 31, 2006 01:21 PM

Rei67様 コメントありがとうございます。お好きなものを自由自在にご覧になっているようで、まことに結構なことだと思います。私の懸念は「日本のどのメディアもサッカーを持ち上げすぎていること」「サッカーに全く興味を持たぬ人々もヨーロッパには多数いるのだということを知っておくべきこと」の2点です。

10 : カスミ草 : May 31, 2006 08:33 PM

私も先生のコメントを見させていただき、
報道を気をつけていましたが、
NHK でさえ、先生のようなことに触れませんね。
日本のトト?その人たちはどんな目で見ておられるのでしょうか?
サッカーのお陰で知らない国の名前が覚えられたのには
感謝ですが・・・

11 : 湖の騎士 : May 31, 2006 10:56 PM

カスミ草様 「知的な人々はサッカーを見ない」というのは非常にきつく響く言葉です。こういうことをいうと、「みんなと一緒が大好き」という日本では袋叩きにされかねません。しかしこれはまずヨーロッパでは常識で、だれもあらためて口にしない暗黙の了解なのです。もちろんNHKのスポーツ担当者たちはこのことを知りません。しかしだれかが、どこかでこれを言っておかないといけないと思います。「サッカーはどこでもだれでもが愛しているもの」と思い込んで育った日本の子供たちが、成人してヨーロッパ人たちと会話をする際に、恥をかかないようにしてほしいという願いをこめてこれを書いた次第です。ずいぶん先のことまで心配しているようですがーー。

12 : 悠々 : June 1, 2006 06:37 AM

4,5日前、ボンにいましたが、サッカーのサの字も感じられませんでした。息子からメールが来て、ボンは日本チームが滞在する町だと言うことを知りましたが、サッカーの熱気は感じられませんでした。
私がボンに行ったのは、旧西独の首都がどんな感じの町なのか知りたかったからです。私はワシントンのような佇まいの街ではないかと想像していたのですが、そうではなく活気にあふれた普通の小さな街でした。
フランス大会の時のパリは、何処を歩いていても、町中がフットボールの熱気に溢れているという感じを受けたのですが、ドイツの印象は違いました。ドイツの他の都市に行っても、この国で間もなくサッカーの世界大会が開催されると言うことを感じる事はありませんでした。
日本の報道が過熱しているという印象です。
ドイツからルクセンブルグを経てフランスに入ったら、TVでもサッカーの報道が多くなって居ましたが、日本のような過熱ぶりではないという印象です。
蛇足ですが、フランスではサッカーとは言わず、フットボールと言うようです。

13 : 直 : June 4, 2006 02:32 PM

また、ちょっと遅めですがコメントさせてください。
 サッカーはずっと昔にまだ私が幼かった頃、大好きでグランドまで見に行ったこともありました。釜本や杉山が活躍していた頃です。飽きやすい人間なので、それからは世の中の会話について行ける程度の関心しかありませんでした。最近、テレビでワールドカップの話題で盛り上げているので、ついつい真剣に見てしまいます。ボールがまるで生きているかのように扱うブラジルの選手などは見とれてみていました。で、大げさだけどテレビは恐ろしいものと感じました。ワールドカップほどのことならいいけど、人々の関心を意図的にある方向へ持って行くことなど簡単にできるのだと感じました。株取引などで、ラジオ・テレビ局などが乗っ取られてしまうかもしれない世の中では、一人一人がしっかりと物事を見る力を養っていかなければならないと思いました。今の日本の民主主義が一般大衆のものである以上、一般大衆の知識教養を養うように持って行くのが、NHKの仕事だと思います。朝のテレビ小説で、先生が戦争のことが本当に正しく検証されて伝えられるのかが、心配だとお書きになっていました。これはとても重要なことで、イヤなことは忘れたい水に流したいとさっぱりとした国民性であるけれど、しっかりと第二次大戦のことを見極めていかないと、人の良い島国育ちの日本人だけに、世界の国々につけ込まれていいようにされてしまうと、先生は心配されているのだなと思いました。
 「俺・お前」とか主人公を一見格好良くみせて、深く先のことも考えもしないで視聴者に媚びを売る公共放送、もっと凛としてほしいと思います。
 すみません、一言のつもりがつらつらと長くなってしまいました。

14 : 直 : June 4, 2006 03:04 PM

追伸コメントです
 「脱皮するカニ」はユーモアがあってとても楽しく読ませていただきました。ベストエッセイおめでとうございます。
 先生の広く世界で培われた知識と教養そしてスヌーピーに通じる優しさ溢れるブログを読み、少しずつ目が開けていくことにいつも感謝しています。ありがとうございます。

15 : 湖の騎士 : June 4, 2006 09:06 PM

悠々様 お礼がおそくなり申し訳ありません。そうですか、ドイツはそんなにサッカーに燃えていないですか。フランスが燃えているのはなんとなく感じていました。日本ではそれを言うのはタブーかもしれませんが、ヨーロッパには「階層」というものがあって、階層によって趣味も生き甲斐も違うのだということが、日本のマスコミ人には分かっていないのです。もういい加減に常識として認識してほしいものです。貴重な情報をありがとうございます。

16 : 湖の騎士 : June 4, 2006 09:19 PM

直様 釜本や杉山の活躍していたころのサッカーと今では見にゆく人の構成もだいぶ変わっていると思います。あのころは「皆が行くから自分も行く」というのではなく「本当に好きだから行く」という人が多かったようです。皆さんは「群れて」いませんでした。川淵チェアマンがJリーグを作ってから、サッカーは変わりました。私が「純情 きらり」によってテレビの世論誘導に懸念を抱いていることを正確に理解してくださり、ありがたいです。さらに「脱皮するカニ」を楽しんでいただけたようで、本当に嬉しく思います。かなり強引な解釈をしていますがーー。

17 : 悠々 : June 5, 2006 12:20 AM

湖の騎士様
階級社会ーー確かにフランスには厳然とした階級の壁があります。SNCFのローカル線にも一等車が連結されていて、中の設備、椅子とかはエコノミーと何ら変わらないのです。でもエリートは一等車に乗ります。私もリッチな日本人として一等の切符を買ったりした時には一等車に乗りますが、心安まらない感じです。一等車の客は取り澄ましていて、私が何か話しかけても、返事はしてくれますがそれ以上に会話は発展しません。
二等車なら、英語は下手ですが、気持ちが通じます。
エリートは私を同等の人間とは認めてくれていないのです。
庶民はそんなことには頓着しないで、気の良い日本人として対等に付き合ってくれます。
フランスは厳然とした階級社会です。
ドビルバン首相が、貴族の出だから、庶民と距離を置かない姿勢を保てるのか、その辺が気になる所です。

18 : 湖の騎士 : June 5, 2006 02:37 PM

悠々様 「階級社会」にはよさも悪さもあると思います。日本では「階級」というとあまりに露骨なので、いつのころからか「階層」という呼び方がふえてきましたがーー。見知らぬ同士が電車で会話というのは無理かもしれませんが、業界内のコンヴェンションなどで知り合えば心は相当に打ち解けると思います。イギリスでは「上流階級」になることはだれも望んでいません。「中流の上」(アッパーミドル・クラス)になれれば立派な人生です。その条件は経済的な力でもなければ社会的な地位でもないーーという説が有力です。「読書」が決め手だそうです。そこから紡ぎ出される「言葉」の力、つまりは「会話力」です。実態はそんなに単純ではないでしょうが、こうした哲学は見習う価値があると思います。外国から見て日本が精神分裂に見えるのは、ルイヴィトンのバッグを持った人が読書をせず、サッカーを見ることです。