View of the World - Masuhiko Hirobuchi

July 07, 2006

統計の嘘を見破る方法 -

5日(水)は朝から夜中までテレビは北朝鮮のミサイル発射でもちきりでしたが、日本の近海に着弾しなかったこともあって、またもや日本人特有の「のん気さ」が頭をもたげてきているようです。そういうムードに相乗りするわけではありませんが、頭をまったく切り替えて、全然違う話をしてみたいと思います。「統計の嘘を見破る方法」についてです。これはいわば私の「持ちネタ」になっているもので、教室や講演会場では何回か話しているものですが、初めての方のほうが多いと思うので、あえて書かせていただきます。
今から50年以上も昔の話ですが、アメリカ東部の名門大学が男女共学に踏み切りました。それまでは男子ばかりだった大学に、初めて花の女子学生が入ってくるというので、大学当局もマスコミも固唾をのんで「どういう女子が入ってくるのか?」と見守っていました。入学式がすんで間もなく、一つの統計が発表されました。それは「女子学生の33.3パーセントは入学前にすでに同じ学部の男子と結婚していた」というものでした。これは大きなニュースでした。「ふーん、今どきの女子学生はなかなか進んでいるじゃないか!」と感嘆する人が圧倒的でした。
しかしここに一人ヘソ曲がりがいました。彼はこの統計数字を「なにやらうさんくさい」と感じたのです。そこで彼は「33.3パーセント」の中身を具体的に調べたのです。調査の結果判明したのは、初入学した女子は3人でその内の1人が結婚しているに過ぎないということでした。3人に1人でもたしかに統計的には33.3パーセントに違いありません。しかし「3人に1人」というのと「33.3%」というのでは、与える印象はまるで違います。パーセンテージで示されると、あたかもそれが全体の傾向のように錯覚する人が続出するでしょう。統計を扱う官僚たちは時にこうした意図的なトリックを用いることが多いものです。よくよくだまされないためのご用心が肝腎です。
これはダリル・ハフというアメリカ人が書いた『統計を使って嘘をつく方法』というベストセラーに載っている話です。ほかにも笑いがとまらない実例がいくつも紹介されています。

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COMMENTS

1 : yoyo : July 8, 2006 12:33 AM

不穏な社会情勢になっています。ヒステリックな世論に踊らされること無く、考えていきたいと思っていますが・・・ 統計のトリックも あちこちに(悪用?)されているのでしょうね。国民年金不正免除等もその類かしら? どの情報を信頼すれば良いのやら? しっかりアンテナをはって、意識を持てば ???と感じるのかもしれませんが、ウン十年前の日本のような状況になっている 遠いお隣の成り行きが心配です。

2 : 悠々 : July 8, 2006 01:07 AM

統計の誤魔化しの良い例がごく最近ありました。
某国営放送局が、視聴者に面接して調査したんだそうです。
その答えが今の受信料より高くても良いという答えが大多数だったんだそうです。
何回も繰り返し放送していたからご覧になった方も多いと思いますが。
投書についても分析したそうです。多数の投書の中から(総数は言わない)今の経営が良いという投書が何千通とかで、何々が何通とか言うのですが、みな今の状態を是とする物ばかりを取り上げていました。
例えば10万通の内、是とするもが2000通、非とするもが
9万通かも知れないのです。
こうゆうのは統計とは言えません。
天下の国営放送も姑息な事を臆面もなく公共の電波を使ってしゃあしゃあと宣伝するんだから、鉄面皮も良い所です。

3 : 湖の騎士 : July 8, 2006 02:50 PM

yoyo様 今回の話はむしろ笑って楽しんでいただけたらという類のものですが、でもけっこう深刻なトリックが隠されていますね。「統計を使って人を騙そう」と思ってもこちらには手品のタネはばれてるんだぞーーということを知る人がふえてくれば、インチキ情報も少しは減ってくると思います。遠い隣国で政治的ジョークが自由に言える日はいつ来るのか、見当もつきません。

4 : 湖の騎士 : July 8, 2006 02:56 PM

悠々様 数字を使って人を説得しようとする試みは、大体が怪しいものです。自分に有利な数字ばかり提示するのはもっと怪しいもの。問題は「怪しまれているかも知れない」という意識すら当事者にないことです。恥の意識の欠如でありセンスの劣化現象です。

5 : ひばり吹雪 : July 9, 2006 08:10 AM

やはり,日本人の弱点は『数字から(統計からなど)の結果』なのでしょうか?私も実際問題33.3%とは凄いと思いましたがここである『一人へそ曲がりがいた』というそのへそ曲がりなる方は本当に当たり前の事ですが感心してしまいます。他国と日本の違いはここにあるのでしょうか?

6 : tiakujo : July 9, 2006 11:54 AM

いつもながら、難しいことは分かりませんが、楽しく笑いました。
他にも たくさん 笑いがとまらないお話があるそうですから、また聞かせてくださいませ。
何かの時の、話のネタにさせてもらってもいいんですよねぇ。
そんな意味でも、先生の記事は楽しみです。

7 : 湖の騎士 : July 9, 2006 09:18 PM

ひばり吹雪様 「へそ曲がり」というのは「常識を備えた人」ということでもあります。やたらに統計数字に感心しないで「ひとつ実態を調べてやろう」という好奇心がいいですね。権威を疑う心、あくまで「事実」を掴もうという心がある社会であってほしいです。日本にもそういう好奇心旺盛な人はいますから、大丈夫でしょう。

8 : 湖の騎士 : July 9, 2006 09:23 PM

tiakujo様 この種の「笑える話」をときどきご紹介しましょう。もちろんどんどん話のタネに使っていただいてけっこうです。ハフさんのこの本は日本であまり評判にならなかった気がしますが、おそらく生真面目な人が多すぎて「いたずら心」が当時は不足していたのでしょう。tiakujoさんは造語の名人ですから、こういう話から思いがけない新語を創り出されるかもしれませんね。

9 : カスミ草 : July 9, 2006 09:33 PM

数字ってマジックですね。
数字で何でも判断されたら、たまった物ではありません。
私たち商売人にも、市場調査が何年か毎にあります。
昨年もありました。
私の周りは大型店が競い合っています。
関西2号店となった今は名前が変ったヨーカドーなんか
出店の裏には中央政界のにおいがしそうです。
こんな所でも税金を使った調査があります。
私は断固「調査には協力しません」と断りました。
行政は私たち零細業者が死のうと何にも思わないでしょうに!
統計の為の統計なんか税金の無駄使いでしょう!
こんな声がある事を上の方に伝えといて下さい!
「解りました」と、公務員さんは帰られました。
%で示されると、いかにもその数字が全体を代表しているかと錯覚しますね。
「%/全数」の表示に代えて貰いたいですね。

10 : 湖の騎士 : July 10, 2006 12:35 AM

カスミ草様 お怒りが非常に説得力があり迫力があります。しなくてもよい調査を国税を使ってしたがるのが官僚です。今回私が提示したエピソードを知る人が仮に1000万人単位にふえてくれば、どんなもっともらしい数字を並べても「こっちにはネタは割れてるんだよ。嘘をつくのはいい加減にしろ!」というムードが世の中に広まると思うのです。気の遠くなる話ですが、大真面目な詐術を笑いのめす人々がふえてほしいです。

11 : HANA : July 10, 2006 09:42 AM

 主人と私は「85%の人が大満足!!」なんていうテレビショッピングなんかのCMでは「私は絶対残りの15%に入ると思う。」とお互いに言い合っています。

 数字を言われるとなんとなく真実味を帯びるのは確かですよね。テレビの「トリビアの泉」という番組でよく「~~で一番~~なのは?」という統計を取るとき、専門家が「日本の場合、2000人のデータを集めればほぼ正しい統計が取れる」と言っていたと思います。

 この番組はたわいないことを取り上げているので結果がどうであろうと笑っていられますが、最初から惑わそうとして数字を使う人がいるとしたら気をつけなければ!!

12 : 湖の騎士 : July 10, 2006 10:24 AM

HANA様 皆さんが統計を信じる気持ちは分かりますが、取り調べの刑事の心境で「嘘を言っちゃあいけないよ。こちらにはネタはあがってるんだ!」くらいの心構えで統計を見る人がふえてほしいです。そういう世の中は笑いがあり、風通しもいいはず。統計を悪用する輩も「恐れいりやした。旦那にはかないません」ということになればいいのですが、小悪党にかぎっていつまでもシラを切るものですね。

13 : amia : July 10, 2006 12:06 PM

統計からいうと。。って聞くと妙に納得してしまうことが多いです。
嘘といえば、大人になると嘘といえば嘘だけど、お断りの口実に嘘をつくことが多いでしょ、でも罪の意識はまったくなくて、大人の嘘は子供の嘘に比べて罪も重さはどんななのか?
なんて興味ありませんか?
 

14 : 湖の騎士 : July 10, 2006 02:57 PM

大人がお断りのために嘘をつくというのは、まあ「潤滑油」みたいなものでしょう。「婉曲法」などという言い方もありますしーー。やはり許せないのは、はじめから世論を誘導するつもりで使う統計です。統計を疑う人が多い社会は、姑息な数字を弄ぶ連中にはやりにくいでしょうが、一般の人々には明るくて笑いが多く楽しい社会だと思います。統計を疑う人がふえてほしいです。

15 : VIVA : July 13, 2006 04:21 PM

先生、拙ブログの「痛快!ローマ学」の方へコメントいただきありがとうございました。まさか先生と同じ本を、気に入って持っていたなんて、大変光栄です。塩野七生さんは元気が良く、好きな歴史家の一人です。
今年のベストエッセイ集も楽しみにしております。

また、今、統計のお話を拝読し、ブログの記事のヒントもいただきました。ありがとうございます。

16 : 湖の騎士 : July 17, 2006 12:37 PM

VIVA様 この統計の話がどんどん広まって、統計を疑う人の比率がせめて英米なみにふえてくれることを願っています。お力をお貸しください。では英米では統計を疑う人の比率はどんなものでしょうか? 政府発表に関しては49.5%、会社の場合は45.1%、民主主義がゆきわたっていない国の政府発表に関しては93.5%の人が疑いを抱いているーーというのもまた統計を悪用した(?)ジョークです。