View of the World - Masuhiko Hirobuchi

September 01, 2006

「コンドルは飛んでゆく」の意味(1) -

サイモンとガーファンクルが歌って世界的に大ヒットした曲に「コンドルは飛んでゆく」があります。メロディーはもともとはいまのペルー、コロンビア、アルゼンチンにかけて栄えたインカ帝国の人々の民謡(フォルクローレ)です。ケーナという笛が奏でる物悲しい響きは、何の解説もなくても聴く人の心に迫るものをもっています。人々は詳しいことは分からなくてもその悲劇的な調べを愛してきました。
この曲に英語の歌詞を付けたのがポール・サイモンです。歌い出しは「カタツムリよりはスズメになりたい。そうだ、たしかにそうなりたい。できることならーー。釘よりは金づちになりたい。そうだ、たしかにそうなりたいーー」となっています。原語では I'd rather be a sparrow than a snail. Yes, I would,.If I could., I surely would --となっています。歌のタイトルは El Condor Pasa (コンドルは飛んでゆく)ですが、不思議なことにこの歌詞のどこにも「コンドル」という言葉は出てきません。
ではどうして、カタツムリよりはスズメがいいのか。クギよりは金ヅチのほうがなぜいいのか? 実はこの歌には征服された民族の悲痛な叫びがこめられているのです。征服者はフランシスコ・ピサロが率いるスペイン人たちであり、征服され奴隷同様の境遇に落とされたのは、インカの原住民たちでした。16世紀の話です。独立と自由への憧れがこの歌に表れています。みじめに這いまわるカタツムリはまさにインカの人々です。いつも頭をたたかれるクギもそうです。一方、金ヅチは征服者スペイン人です。自分たちが崇めるコンドルとまではいかなくともよい、せめて空を自由に飛ぶスズメになりたい。独立への悲願がこの歌にこめられているのですが、次回はインカ滅亡の悲劇にまつわる伝説と、この歌がいまの日本にとってどういう意味をもってくるのかを語りたいと思います。

[Post a comment]

COMMENTS

1 : yoyo : September 1, 2006 10:49 PM

いつも拝読しております。次回のエントリーが楽しみです。

2 : HANA : September 1, 2006 11:18 PM

「コンドルと車輪の物語」の感想を書いて、先生に読んでいただきたいと思っているのですが、うまくまとまらなくて・・・。

先生の文章はいつも分かりやすくて私のような者でも楽しめます。でも、もっと楽しむためには勉強しなくてはなりません。

何度か読み返してはその都度印象に残るところが違います。まだまだ理解ができていないようです。

不出来な生徒?ですが、見捨てないでくださいね。

3 : 廣淵升彦 : September 2, 2006 10:13 AM

yoyo様 1度に書くと長すぎたり重すぎたりしますので、分割しました。あまり間を置かないで次回を書きますので、よろしくお願いします。ご愛読ありがとうございます。

4 : 廣淵升彦 : September 2, 2006 10:20 AM

HANA様 「コンドルと車輪の物語」にご興味を示してくださってありがとうございます。できるだけ「心の胃」の負担にならないように心がけているつもりですが、つい欲張ると中身が重くなり、お読みいただくのも大変だろうと思います。イギリス皇太子とのジョークのような楽しい記事をもっと書きたいのですがーー。

5 : 悠々 : September 4, 2006 08:51 PM

「コンドルと車輪の物語」HANAさんのコメントを拝見して、掲載紙を検索し、バックナンバーをオーダーしました。
雑誌が来るのが楽しみです。
コンドルは飛んで行く、の続編も楽しみです。

6 : 廣淵升彦 : September 4, 2006 09:10 PM

悠々様 「コンドルと車輪の物語」をわざわざ取り寄せられるとか。恐縮しています。ご出費になるといけませんので、別途お送りしましょうか? だいぶ前にこの記事のことを当ブログに載せたときに皆さんあまりご興味を示されなかったので、それ以上は申し上げなかった次第です。失礼いたしました。