View of the World - Masuhiko Hirobuchi

October 11, 2006

決め手になるのは「アドリブ能力」 -

多くの若者および教育者が勘違いしています。「就職するときに必要なのは専門知識だ」という思い込みです。しかし「人間としての総合能力」がない人が身につけた専門知識が、どれほどの役に立つものかを考えるべきです。面接やセールストーク、さらには職場の同僚・先輩・上司との日頃の接触で最も大切なのは、状況に応じてとっさに口をついて出る言葉です。つまり「アドリブ」(ad lib)能力です。この言葉はもともとは、「芝居の台本には書いてなくて、役者がとっさに考え出して口にするせりふ」という意味でした。それがテレビ時代に入って、俳優やディレクターたちが使っていたものが、一般の人々にも知られるようになったものです。「アドリブがきかない人」というのは、「面白みがない人」ということです。「独創性もない」ということであり、「決まり文句しか言えない人」ということになり、「マニニュアルに決められたルーティンワークはできるが、ちょっと複雑な応用問題はできない人」ということになります。さらに言えば「退屈な人」ということになってきます。企業で面接をする人は、10分か15分の間に、面接を受ける人の「人間としての魅力」を探ろうとしているわけです。こういう場で、型にはまった決まり文句しか言えない人はまず採用されません。「専門知識」が役に立つ職場というのは「手作業的」職場であり「考える職場」ではないと言えると思います。
ではこうした「アドリブ能力」を磨くにはどうすればよいのか? この能力は「技術」ではありません。「人間としての総合力」が必要です。つまりは「教養」が物を言います。そうした力をつけてもらう努力の一環として、私は近著『スヌーピーの処世哲学』(海竜社)を書きました。しかし学生諸君の反応はにぶいです。これを最も必要としている若者、この本によって運命を切り開くこともできる若者の感度が劣化していると見なければならないのは辛いことです。
逆にこの本を読んで「感動した。もっと広めるためにがんばれ」というメッセージを送ってくれるのは、著名な経済学者、一流企業の幹部社員、経営者、TVや活字の世界で大活躍中の評論家、教養豊かな主婦の方々、官僚OBといった人々です。「メッセージというのは最も必要としている人々には伝わらない」ものなのかも知れません。しかしやはりこの本を必要としている人々に、これからじわじわと浸透してゆくだろうと思っています。すでにその兆候は少しずつあらわれてきています。

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COMMENTS

1 : 悠々 : October 11, 2006 09:06 AM

アドリブに富む会話というのは、話していて楽しい会話ですよね。
反対に話していて、楽しくない会話というのは、自分の仕事の話しかできない人、もしくは、自分の趣味の話しかできない人との会話です。
会話が弾むというのは、話の内容が回転していき、発展していく生きた会話です。
面接でも同じ事だと思います。
生きた会話の出来る人は、機転の利く人ですから、仕事の場面でもセオリー以外のシュチュエーションに出くわした時でも、的確な判断と行動が出来るはずです。
コンビニとかファーストフードの店で、客との応対の言葉が、マニュアル化されていて、一本調子のイントネーションで受け答えされると、げんなりさせられます。
本を沢山読む、落語とか演劇に親しむ、と言うのが、生きた会話を学ぶ良い方法だと思いますが、それほど多くの時間を学習に割けない人は、廣淵升彦先生のご著書『スヌーピーの処世哲学』 を熟読するのは良い方法だと思います。

2 : 湖の騎士 : October 11, 2006 02:32 PM

悠々様 自著についてはもう2、3回は語ることをお許しいただきたいと思います。国の安全を保ち、外交的に孤立を防のも会話能力ですし、個人の運命を切り開くのも会話力です。そういうことの大切さを日本の学校では教えません。落語でも浪曲でも講談でも、あるいは現代文学でもオペラでも、学ぶ材料はいっぱいありますが、そういうものを身につけようとする意思が不足しています。一人でも二人でも会話力の大切さに目覚めてほしいものです。ご親切なコメントをありがとうございます。

3 : tiakujo : October 11, 2006 08:22 PM

お二人のコメントを、大事に胸にしまいました。

4 : 湖の騎士 : October 11, 2006 09:15 PM

tiakujo様 胸にしみ込むコメントをありがとうございます。しばらく本の普及のために、自著のことを語りますが、間もなくまったく関係のない話題も取り上げます。もっと気楽に笑えるような話題についても語りたいです。

5 : rescue : October 12, 2006 01:39 AM

お久しぶりです。
本を出された事を知ってまず思ったのは「先生もまだまだご健在であられる」ということです。本の出版はもちろん祝福しておりますが、それよりも何よりも先生が現役で頑張ってらっしゃることに単純に勇気づけられました。
ありがとうございました。

さて、私は本の存在を知り、仕事帰りに本屋さんに寄って購入いたしました。176ページまでは読み終えたのですが次のページ数を見ると193ページでした。本日出版元へ連絡した次第です。読み終えたら感想を書くつもりでしたので、もう少し先の話になりそうです。
ただ一言だけ、先生のおっしゃりたい事は確実に伝わっている、ということだけ申しておきます。

6 : 湖の騎士 : October 12, 2006 09:52 AM

rescue様 お久しぶりです。私は元気で雑誌の連載も続けていますし、ブログも週に2回のペースで更新しています。健康を心配してくれてありがとう。それよりも卒業して職場でいろいろな問題にぶつかって相談してくる人と、悩みを自分の胸にしまいこんでいる人がいます。こちらとしては卒業生の心理状態が心配です。本に落丁があったとは初めて聞きました。今までだれからもそういうことは聞いていません。不思議です。すぐに取り替えたものがお手許に届くと思います。少しお待ちください。

7 : tiakujo : October 13, 2006 01:09 AM

手元の2冊を、思わず確認しました。落丁はありませんでした。

それにしても、rescue様、
先生が現役から引くなんてことは、私どもが当分の間了承しないつもりですよ。
まだまだ書いてもらいたいものがたくさんあると思えるからです。

8 : Jules Verne : October 13, 2006 01:12 AM

決め手になるのはアドリブ能力、それを習得するにはやはり教養を身につけるということですね。
教養に富む会話は非常におもしろいです。先生の授業や本にはそれがいっぱいに詰まっており、受講したときに目から鱗の連続で大変におもしろかったことを今でもよく覚えています。

「シーア派とスンニ派」「ベニスの商人への誤解」私はこれから、ただ年を重ねていくのではなく、先生のような教養溢れるアドリブを身につけ、友人とおもしろい話をしていきたいです。

9 : 湖の騎士 : October 13, 2006 02:39 PM

tiakujo様 落丁についての報告は、出版社には、この rescue さんからの一件を除いて1つも来ていないーーとのことです。1つだけ落丁というのは、珍しいことです。私が現役の書き手から退くことを「等分の間了承しない」と言ってくださり、ありがとうございます。まだまだ発表すべき内容が手許にあり、これらを発表しきるには相当期間が必要です。面白く刺激的なものを書き続けるつもりですので、今後ともどうかよろしくお願い申し上げます。

10 : 湖の騎士 : October 13, 2006 02:44 PM

Jules Verne 様 私の授業や書いたものを「面白い」と思っていただき光栄です。当たり前のことを当たり前に語っているだけですが、そうした内容を興味を持って聞いてくださってなんらかの刺激を受けられたとすれば、ありがたいことです。今回の本は教養というほどのものではありませんが、ここに盛られた「センス」の一端を味わっていただけたら幸いです。

11 : VIVA : October 13, 2006 10:16 PM

先生、ご無沙汰してすみません。VIVAでございます。拝読いたしました。大変おもしろく読ませていただきました。明日、記事をUPいたします。せっかく先生のご著書だと思うと、力が入って、難しいです(笑)。

よろしければご覧下さい。ますますのご活躍、祈念しております。

12 : 湖の騎士 : October 13, 2006 11:33 PM

VIVA様 練達の「読み手」に「面白い」と言っていただき、本当に嬉しいです。一度本文を読み始めたら一気に読めるように仕上げたつもりですが、そこは行くまでに二の足を踏む方が多いのかもしれません。かなり大きな書店でレジのまん前に置いてくれていたり、「厚遇」はされています。とにかくこの本を読んで笑える人がふえてほしいです。かなり良質のセンスの数々が詰まっているはずですのでーー。よろしくお願いします。

13 : dashi : October 15, 2006 08:21 PM

はじめまして、こんな面白いサイトがあると知らずに今までソンをしました(笑)。私はスヌーピーの登場人物、ことにペパーミント・パティが大好きです。
ライナスのキャラクターもとても興味深いです。
うちの娘は本をほとんど読まない無知な子ですが、ときどき鋭い(思慮深い?)ことを言います。この子もスヌーピーが大好きで普段の会話によく出て来ます。(スヌーピーのアメリカは愛読してました)
チャーリー・ブラウンがつぶやいた言葉などをよく言います。子どものころ、お父さんが運転する車の後部座席で味わった幸福感(安心感)のこととか。
スヌーピー(ピーナッツ)には処世訓がいっぱいで、それが説教臭くなくていいですね。アドリブの宝庫という感じで、センスいいなと思います。
近刊書も親子で読んでみます。

14 : nobless oblige : October 15, 2006 10:18 PM

 私の現在の仕事も、専門知識を基に人々に物を売る仕事であると思います。専門知識を身に付け、生きていかれている方々も、それはそれで素晴らしいと思います。
 しかし、毎日が同じことの繰り返し、毎日がダンボールの積み下ろし、頭で何かを創造するということが全く無いという現在の仕事には全く面白みや生きがいを感じられません。
 長く働けば働くほど偉い、休みの日に出勤して仕事をすれば偉い、「だからお前もサービス残業をしろ!休みの日に忙しいから出て来い!」という考え方にも到底理解が出来ません。
 ハッキリと言わせてもらえば、時間内に仕事が終わらない(ある程度は仕方が無いと思いますが)、休みの日にまで出勤してまで仕事をしなければならないというのは、「仕事の出来ない証拠」ではないかと思っております。
 アドリブ能力というものは、一朝一夕に身に付くものだとは思いませんが、なるべく早くアドリブ能力を磨き次の仕事へ転職できるよう、本を読みたいと思います。

15 : セントラルEP : October 15, 2006 10:51 PM

上司から「お前は自分で考えることをしないロボットのようなやつだ。」と評されたことがあります。おそらく私の会話や仕事が当たり障りのないものなのでしょう。仕事に関しては上司から指示されることだけでなく、その中で自分なりの工夫をしてみろと言われます。
この本を読んで励まされること・学ぶことは多々ありますが、今は仕事に慣れようと、もがいております。
一番身につまされたのはスヌーピーとルーシーの会話(?)です。『上司の教育がわかりにくいから仕事の覚えが悪い』などと文句を言いたくなります。すっかり自分の非を棚に上げた格好で恥ずかしいです。一度自分の思っていることを紙にでも書いてみるといいのかもしれませんね。

16 : 湖の騎士 : October 15, 2006 11:55 PM

dashi様 このサイトに気付いてくださってありがとうございます。近刊の拙著からアクセスしていただいたものと思います。お嬢様も『スヌーピーたちのアメリカ』をお読みくださり、しかも「安心とは車の後部座席で眠ること」というあの名作を覚えておられるというのは嬉しいかぎりです。ペパーミント パティは本当に味のある子ですね。どうか新刊の拙著もよろしくお願い申し上げます。

17 : 湖の騎士 : October 16, 2006 12:00 AM

noblesse oblige様 どうやら貴職場の人たちはだいぶ昔の価値観に染まっているようです。そういう精神的環境にいると、少しでも異質の価値観で生きている人は苦しくなります。アドリブ能力を磨いて転職するというのも容易ではありませんが、自分の一生ですから、どこかで決断をしなければなりません。この本の中に有益なヒントが入っていることを、心から願っています。

18 : 湖の騎士 : October 16, 2006 12:08 AM

セントラルEP様 上司から「お前は自分の頭で考えないロボットのような奴だ」といわれるのは辛いことです。しかし今の若者は誰でも大なり小なりそういう傾向をもっています。とにかく面白いことを考えること、エキサイティングな人生を求めることが、問題解決に繋がります。「紙に書く」というのは最良の方法です。私がその効果に気付いたのはずいぶんおそく、そのために相当の失敗もしたと思います。入社2年目くらいで「紙に書いて考える」としたら、今後の展開が楽しみです。この本からいろいろと面白さのエッセンスを吸収してください。