View of the World - Masuhiko Hirobuchi

October 16, 2006

キューバ危機と似ているか? -

北朝鮮が核実験に成功したというニュースに接しても、日本人の多くは驚くほど冷静に見えます。けっして激さず、理性的で冷静なのならいいのですが、ただ単にのん気で、どんな危機が間じかに迫っていても感度が鈍くてそれを察知できないのでは困ります。こののん気さの根底には、北の「技術」に対する軽視があります。「どうせミサイルを撃ってきても命中しないさ」という侮りがあるように思えてなりません。これは危険な兆候です。
この日本人の感覚の麻痺ぶりについて、京大の中西輝政教授が「週刊文春」に書いておられる記事が大いに参考になります。今回の「北が核実験に成功」のニュースは、1962年にソ連がキューバに核ミサイルを持ち込もうとした時の状況に酷似していると中西教授は言います。時のアメリカ大統領ジョン・F・ケネディは、ソ連に核の撤去を迫りました。これを無視する形でソ連の艦船がキューバに近づいていきました。米ソ両国はまさに核戦争の一歩手前まで行ったのです。そうした国家の存亡にかかわる緊迫感が今の日本にないと中西氏は指摘しています。
そしてもっと身近な教訓としては1980年代に、ソ連が西ヨーロッパ諸国に向けてSS-20という、中距離弾道ミサイルを配備したときに、アメリカおよび西ヨーロッパ各国は「パーシングⅡ」ミサイルを配備してこれに対抗し、危機を切り抜けたことを挙げています。しかし、この時の緊迫したにらみ合いもまた、日本人のほとんどは実感として受け止めていません。国会でもテレビのニュースでもワイドショーでも、およそ危機の本質とは縁遠い議論が繰り返されています。中西さんの論に賛成か反対かはともかくとして、一度この記事に目を通されることをおすすめします。

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COMMENTS

1 : 悠々 : October 19, 2006 09:06 AM

早速、週刊文春を買い、京大の中西輝政教授の記事を拝読致しました。
かなり強烈な文面で、文春らしいセンセーショナルな内容だと思いました。
文中で指摘している「キューバ危機」や、「旧ソ連が配備したSS20」の時の西欧側の対応に因る危機回避の時の状況と、北朝鮮が行っている地下核実験の異常事態とは似通った状態だと言うことは言えると思います。
ただ、今回の事態が前の二事態と異なるのは、北朝鮮という国家がまともな国家形態を備えた国家ではなく、狂犬病を病んだ異常集団だと言うことです。
自暴自棄に陥っている狂犬病集団には、核の傘の理論は通用しないと思います。
彼等は、自国の国民への核反撃を怖れて核の使用を躊躇うという思考は無いと思います。
自分達だけは地中深くの核シェルターに身を潜めて安全を図り
国民を犠牲にすることを憚らない輩です。
そのような集団に対して、日本が核武装する事は無意味です。
相手が話し合いの場に出てこないから、まだるっこしいから、と言うことで武力による解決に走ることは、決して良い結果はもたらさないことはベトナムやイランやイラクに対する強圧的なアメリカのやり方が常に敗北に終わっていることからも証明されています。
北朝鮮の問題については、時間が掛かっても、理性的な対応をすることが必要です。

2 : 湖の騎士 : October 19, 2006 10:02 AM

悠々様 中西教授の論は時に現実から浮き上がっているように見えます。しかしこの「浮き方」よりも気になるのは、大方の日本人の「過剰な楽観性」であり「国会の論議の低レベルさ」です。キューバ危機もSS-20危機も、けっして我が身のこととは考えない。米英と戦争をしている最中でも「最後はなんとかなる」と希望的観測をもっていた。ソ連が日米の戦争の仲裁をしてくれると本気で考えていた。しかしソ連にそんな意思は毛頭なく広島、長崎に原爆は落ち、北方領土は奪われてしまったのです。北朝鮮を見くびるのは危険です。正面切った戦争のほかに、彼らは恐るべきテロを実行する力も意思ももっています。「他国の意図を読み取る能力の欠如」は、昨年の国連安保理事会の常任理事国になろうとして大失敗した際にも露呈しました。外務省も一般国民もマスコミも、北、中国、ロシア、韓国、それにアメリカの意図を正確に読み取ることが今ほど必要な時はありません。

3 : 悠々 : October 19, 2006 11:34 AM

湖の騎士様
北、中国、ロシア、韓国、それにアメリカの意図を正確に読み取ることが出来れば良いですが、今の日本の外交能力、洞察力でそれが出来ないことは残念ながら事実だと思います。
その上、日本政府にも国の明確な意図というものを待っているのかも疑問です。
確たる意図を持たずアメリカの尻馬に乗っているだけのような気がします。
ですから国民はケ・セラセラの心境にならざるを得ないと言うところなのでしょう。

4 : 湖の騎士 : October 19, 2006 10:59 PM

悠々様 外国の意図が読めないで国を破滅に導いたのがわずか60数年前のことでした。日本人はそのことの真摯な反省ができぬままに、再び過ちを犯そうとしている気がします。官僚、マスコミ、一般国民、政治的リーダー共に、この危機の本質を真剣に考える必要があります。今日も著名な外交ジャーナリストの講演を聴きに行ってきましたが、非常に物足りませんでした。とくにアメリカの民主党政権(クリントン政権)が北を甘やかしたこと。中国に軍事機密を大量に盗まれたことーーそれによって中国が本当の脅威になったことーーに対する認識が希薄でした。

5 : Rei67. : October 21, 2006 10:12 AM

平和ボケ。政府も議員も。国内の全ての現象を見ると対策は
後追いですね。 会社経営なら倒産ですね。

6 : dashi : October 21, 2006 06:14 PM

お勧めに従い読んでみました。トシだけど素直だから(笑)。
要するに、「日本はアメリカの核配備を容認してアメリカに守ってもらえ(それを自覚しろ)」ということでしょうか? 違いましたら申し訳ないですが……。
是非はともかくとして、実際のところは既にそうなってるんじゃないんでしょうか。横須賀の市長が原潜の入港を認める発言をして物議をかもしましたが、現実を肯定しただけでは……。
記事で気になったのは、金正日は晩年の毛沢東と同じく、つんぼ桟敷に置かれてる、っていうところです。軍が暴走してるんでしょうか? 
いずれにしても、日本人が「今そこにある危機」に対して驚くほど鈍感なのは、確かだと思います。
年金だって介護保険の改悪に対してだって、他の国では考えられないおとなしさじゃないかと思ってます。これが、国民のほとんどが食べるのだけで精一杯の文盲ばかりっていう国ならともかくね。
個人的には憲法改正はしてほしくないって思ってますが、すると公言している人が首相になることを、野党も黙って見ているだけの印象でしたしね……。
ついエラそーに書いてしまいました、一票しかないしがない有権者です(その点では成人はみんな平等ですね)。

7 : 湖の騎士 : October 21, 2006 10:43 PM

Rei67様 現実は残念ながらおっしゃるとおりです。会社経営ならとっくに倒産するようなことを、政府も国会もやっています。野党は何年たっても「この国をこうするのだ」というビジョンが描けず、政府の発言の小さなミスをつついて満足しています。しかしこの現状に絶望しているわけにはいきません。いかに無力であろうと、言論でできるぎりぎりのことをしないと生まれてきた甲斐がありません。これから来年にかけてもうひとふんばりしてみます。よろしくお願いします。

8 : 湖の騎士 : October 21, 2006 10:49 PM

dashi様 巻き込んでしまいましたね。中西輝政教授の論はいまの日本ではあきらかに「過激に」響くでしょう。しかし実際に有効なのは、一見異端に見える少数意見です。賛成か反対かはともかく、1962年のキューバ危機と、80年代のSS20ミサイル危機のことくらいは、真剣に思い出すなり、調べなおしてほしいものです。そういうことが頭に入っていない人が、ただ直感と感情だけで国防を論じるのはきわめて危険です。