View of the World - Masuhiko Hirobuchi

April 20, 2007

ベルリンの壁は「東西ドイツ」を分断していたのではない -

先ほど(4月20日、夜8時ー8時45分)放送が終ったNHKテレビの「迷宮美術館」。終わりの部分で2度「東西両ドイツを分断していたベルリンの壁はーー」というナレーションがありました。ベルリンの壁に壁画を描いたキース・ヘリングのことを扱ったものです。しかしこのナレーションには、大きな「事実誤認」がありました。ベルリンの壁は東西両ドイツを真っ二つに分断していたのではないのです。あの壁は「東西両ベルリンを分断していた」のです。「え、どうして? 変だな。ベルリン市は東西両ドイツの接点にあって、西半分が西ドイツに属し、東半分が東ドイツに属していたんじゃないの?」と思う方が圧倒的に多いと思います。NHKの番組担当者もそう思い込んでいたのでしょう。しかし、これは違うのです。「ベルリン市は東西共に東ドイツの中にあった」のです。西ベルリンは東ドイツの中にポッカリと浮いた、西側陣営の「陸の孤島」でした。したがって西ベルリン市民は、いつ東に呑み込まれてしまうかも知れないという緊張感の中で暮らしていたのです。なにしろ西ドイツの国境から陸続きで西ベルリンに達することはできなかったからです。これは、現代史の常識の部類に入る話です。この程度のことも分からぬディレクター、プロデューサーが番組を作っているのです。こうした無知に基づいて、日本の現代史(とくに中国・韓国とのかかわりを)を歪めている例も多々あります。しかし今回はベルリンの壁についての決定的誤謬の指摘だけにとどめておきます。番組終了後、私は電話で厳重に抗議しましたが、担当者は何を言われているのか理解できませんでした。この抗議が現場に伝えられても、おそらく制作現場は反省もしないでしょう。NHKの知的劣化はここまで進んでいるのです。

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COMMENTS

1 : yoyo : April 20, 2007 11:01 PM

私が中学? 高校? の社会の教科書では ベルリンは東ドイツに囲まれ、空輸で救援物資を投下している写真や、にわか飛行場を作っている様子などがあったように 記憶?(定かではありませんが・・)していますが 今の教科書には載っていないのでしょうか? 社会、歴史、自体が軽んじられているのかもしれませんね。大事な科目と思いますが・・。

2 : 湖の騎士 : April 20, 2007 11:49 PM

yoyo様 全くご指摘のとおりです。西ベルリンが東独の中にポツンとあったために、空輸で食糧や医薬品を投下する映像などは今でもその気になれば見せることが可能なはずです。しかしもはや先生方の中にこの基礎的な現実を知らない人がいます。こんな状態では、世界が「何ゆえにここまで苦労して、戦争を起こすことなく自由を守ってきたのか」が分からない若者ばかりが生産されてゆき、世界の良識ある人々とのコミュニケーションは不可能になってしまいます。少しでも周辺に「自由」の重要さを伝えたいものです。ところで、私のPCからは、goo のブログの方への書き込みができなくなりました。昨年末にウィルスバスターのソフトを入れ替えたためらしいです。というわけで御記事は拝見しているのですが、コメントできぬ失礼をお許しください。

3 : 悠々 : April 21, 2007 10:35 AM

ベルリンの壁の象徴的モチーフとしてブランデンブルグ門が登場しますが、そこが東西ドイツの境界だと思い違いしているんでしょうね。地図を開けばベルリンはドイツのかなり北部に有るのが小学生でも分かり事ですよね。
迷宮美術館は最近マンネリ化して目からウロコ的な出題がないからあまり見なくなっていますが、BSで再放送したら是非見てみます。
それにしても歴史認識、地理認識が欠如していますね。
司会者がアドリブで喋っているとは思えないから、脚本の段階からオンエアまで何人ものチェックが入っているはずなのに、何処でも訂正できないというのは恐ろしいほどの無知で無責任な人間があの番組を造って居るんですね。
こんな状態で受信料の支払い義務化なんて烏滸がましい限りです。

4 : 湖の騎士 : April 21, 2007 03:46 PM

悠々様 このナレーションはもちろん構成台本のとおり読んでいるのでした。けっしてアドリブではありません。おっしゃるとおり二重、三重にチェックする段階でだれもベルリンが西独の国境からはるか離れた東独の中にポツンと浮いている陸の孤島だということを知らなかったのですね。ソ連がベルリン封鎖を行い、西側が1年余にわたる「ベルリン大空輸」で西ベルリンに食糧をはじめとする生活物資を運び、上空から投下したという歴史を知らないのです。もっと物の分かった人を制作集団に加えないと、国民(視聴者)にかぎりなく歴史の「嘘」を伝えてゆくことになります。恐ろしいことです。