View of the World - Masuhiko Hirobuchi

September 09, 2007

ゴルディウスの結び目 -

2300年ほど前の話。小アジア(現在のトルコ方面)のフィルギスという国の神社に「だれも解けないパズル」のような、知恵の輪というか「結び目」が祀ってありました。樹皮を水に漬けてものを精巧に縒り合せて作ったもので、どこに始まりがあってどこに終りがあるのか、いくら考えても見分けがつきません。この結び目には神のお告げ(神託)が下っていました。「結び目を解いたものは、全アジア(東方)の王となるだろう」というものです。遠くからも近くからも、自分の知恵に自信のある者たちが続々とやってきました。しかしそのだれ一人として結び目は解けませんでした。ある時、一人の眉目秀でた青年貴族がフィルギスにやってきました。彼は一目これを見るなり、たちまち解決法を見出しました。腰に帯びた一剣を抜き放ち、一刀のもとに結び目を真っ二つに断ち切ったのです。神託はかなえられ、彼はのちにインドにまで遠征して全東方の覇者となりました。「大王」の尊称を奉られることになる若き日のアレクサンダー(アレクサンドロス)です。

さて、「どこから手をつければ問題が解決するのかが、だれにもわかっていない」というこの結び目はなんだか今の日本の状況と似ているように思えませんか? 旧来の手法で、ああでもない、こうでもないと制度や法律をいくらいじくっても、解決の糸口は見えてきません。古い発想をかなぐり捨てて、まったく新しいアプローチができるような、日本型アレクサンダーが出てきてほしいと思います。では具体的にどういう人物が望ましいのか? 民間会社にはこういう思い切った発想ができる経営者や社員がときどき現われて、従来とはまったく違った分野に進出することを決めたり、新製品を手掛けたりするものですが、旧態依然としたことをやっていても「倒産」のおそれがない役所では、とうてい無理な気がします。官僚諸氏の間に「ゴルディウスの結び目を解こう」という発想の持ち主たちが現われてほしいものです。

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COMMENTS

1 : 悠々 : September 10, 2007 02:19 PM

今の混沌とした世の中を変えるには、先生のご指摘のように、優れた発想の持ち主が必要ですが、官僚の中にそうゆう人が仮に居たとしても、周りの大多数の旧弊な考えの人達からは疎外され、主流から外されてしまうのではないでしょうか?
第一次大戦後のドイツは社会全体を覆う逼塞感から、ドイツ国民は英雄の出現を待望し、ヒットラーのようなとんでもない独裁者を生み出してしまいました。
イタリー、日本の国民も同じような選択をし、日独伊三国同盟を結んで第二次世界大戦に突入しました。
ゴルディウスの結び目を解く人材を待望するあまり、誤った選択をしない、賢い国民の眼を持たなくてはなりません。

2 : 湖の騎士 : September 10, 2007 02:31 PM

悠々様 ゴルディウスの結び目の話をすると、どうしても「独裁者待望論」というふうに誤解される恐れがあります。しかし例としては不適切かもしれませんが、任天堂が単なるトランプカードのメーカーからTVゲーム製作に乗り出そうとした時のような「発想の大転換」が必要な時だと思うのです。こんな大胆な方針転換は官僚には到底できません。1980年代にマーガレット・サッチャー首相が、閉塞するイギリスを経済・教育などの面で大改革したのも、教養の根底に「ゴルディウスの結び目」の故事が埋め込まれていたからだと思います。同じ「発想の大転換」ということで、よく「コロンブスの卵」が引き合いに出されますが、卵の底を割ってこれを立てるというのでは、どうもスケールが小さすぎるので、ゴルディウスの結び目の方が人気があるようです。