View of the World - Masuhiko Hirobuchi

October 14, 2007

自ら荷物を運んだ大社長 -

前回ご紹介したソニーの盛田昭夫さんは、ニューヨークに住んでおられたころは副社長でしたが、間もなく社長に就任されました。私はNYから東京に帰り、続いてロンドン勤務となったのですが、ヒースロウ空港で何回も盛田社長にお会いしました。非常に感銘を受けたことがあります。氏は税関を通る時に、すべての荷物を手押しのカートに乗せて、ご自分で運んでいたのです。従業員が何万人もおり、年間何兆円もの売り上げを誇る世界的大企業の社長が、随行する社員(いわゆるカバン持ちのお伴)をいっさい使わず、自分で荷物を手押し車に乗せて運ぶということは、ふつうは考えられないことでした。大して利益も上げず株主にも報いていない会社の社長が、カバン持ちを連れふんぞり返って空港内を歩く風景ばかり見ている目には、盛田さんの行動はじつにすがすがしく見えました。しかし、英国ソニーの支配人は「いい加減でお伴を連れて動いてください。ここは階級制度の国です。社長のそういうお姿を英国人に見られたら会社の恥になりますから」と、社長に直言したそうです。しかし世界的大富豪で、ソニーの大株主である盛田社長は、「会社が貧しかったころのことを忘れないために、こうしているのだよ」と諭したそうです。この英国ソニーの支配人は「いくら言っても聞き入れてくれないんですよ」と私にぼやきましたが、そのぼやき言葉の中に、偉大なるボスに対するなんともいえない敬愛の念が滲みでていました。こういうボスを持っていることへの誇りを、感じさせるぼやきでした。

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COMMENTS

1 : 悠々 : October 15, 2007 06:34 PM

ヨーロッパを旅していると確かに階級社会であると感じさせられることがまま有ります。
フランスの国鉄には必ず1等車が連結してありますが、ドアの表示に1等車と書いてあるだけで、内部は椅子も内装も、普通車と何ら変わりません。でもその車両に乗っている人が居るのです。エリートたるもの庶民の乗る普通車両には乗れないのです。普通車両に乗れば、自らエリートでないことを示すことになるからです。
最近はさすがに馬鹿らしいことだと気付いたのか、1等車のない列車も走るようになりました。
今でもTGVやユーロスターの1等車に乗ると、そこにいる乗客は普通車に乗っている人達とは明らかに違う階級であることが分かります。日本のグリーン車の客層とは違うのです。
そうゆう社会環境にあって、ソニーの盛田(元)社長が手荷物を自分で運ぶと言うことは、かなりの勇気が必要だったと思います。自分に自信があるから出来ることです。自信のない輩は
虎の威を借りて威厳を示そうとするのです。

2 : 湖の騎士 : October 15, 2007 09:11 PM

悠々様 ヨーロッパの鉄道の旅というのはそんなにしたことはありません。TGVにも数回乗ったくらいです。ドイツではかなり長い距離を走りましたが、それが1等車だったかどうかも覚えていません。ですから悠々様の旅のご経験は貴重です。とにかく階級というものが厳然として生きているヨーロッパで、盛田昭夫さんは平然として自分の信念を貫いていました。片や社員を江戸時代の奉公人のようにこき使っていた社長もいました。ご指摘のとおり、盛田さんは自分に自信があるからこういうことができたのでしょうね。無名の若輩にも、なんら威張ることなく話しかけ、はっきりと名前を覚えていてくれました。10月10日から、「五番街1010番地」に住んでいた人を思い出し、空港で自ら荷物を運んでおられた様子を思い出した次第です。