View of the World - Masuhiko Hirobuchi

November 01, 2007

幅をきかせすぎる「天国」 -

最近のテレビドラマなどで、「天国」という言葉が使われることが多いのにお気づきですか? 田舎町の家族の主が亡くなると、孫が「おじいちゃんは天国に行った」とか、「天国のおばあちゃんに会いたい」といったふうにです。彼らはまず100パーセント仏教徒です。けっしてキリスト教徒ではありません。なのにここ10年くらいの間に、仏教徒だという自覚のない人が、死者は全部「天国」に行くものだと思っています。天国というのは、日本ではキリスト教徒に対して用いられるものであって、仏教徒の場合は「極楽浄土」とか「西方浄土」に行くというのだという「常識」が、以前は健在でした。しかし今はそんな常識はどこへやら、ネコもシャクシも死ねば「天国」へ行くらしい。死者が「黄泉(よみ)の国」から地上へ帰ってくるというような話も通じない。こういう現象を「些細なこと」と見てはいけないと思います。だれかれ構わず「天国」という言葉を用いるのは、明らかに精神の劣化であり、文化の軽視です。国際的に見ても、宗教に無神経な国民ということになり、結局は異教徒の信仰にも敬意を払っていない証拠です。言葉ひとつにももっと神経を使いたいものです。

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COMMENTS

1 : 悠々 : November 2, 2007 12:10 AM

日本のテレビドラマの粗製濫造振りは目に余る物があります。
私は腹を立てるのに疲れるからあまり見ないようにしています。豪邸の設定なのにドアがぺなぺなだったり、時代考証がまるでいい加減だったり、小道具一つにも神経が行き届いていません。
言葉遣いも酷いものですね。脚本家が勉強していないからだと思います。
先生がご指摘になった「天国」にしても、宗教感覚など持たないで全部天国で片づけてしまうのは、無神経と言うより無知なのだと思います。
脚本家が来世など信じていないとしても、言葉はきちんと使って欲しいものですね。
そうゆう脚本家にダメを出せないディレクターも情けないです。

2 : 湖の騎士 : November 2, 2007 08:05 AM

悠々様 ご指摘は非常に鋭く、元テレビ局員としても恥ずかしいです。私が恐れるのは、これが脚本家やディレクターや俳優の無知によるだけではないということです。世間一般で、「天国」という言葉が乱用されていることの反映ではないかと思います。「いや、テレビが誤った情報を流すから一般の人が影響を受けるのだ」という考えもありますが、どうもそうでもないらしい。10年ほど前に仏式で行われたお通夜に出席した折に未亡人が「夫は天国へ旅立ちました」と語ったのを聞いて驚愕したことがあります。この方は五十歳代で、夫妻共に大学卒でした。その後もこうした傾向はつづいているようです。