View of the World - Masuhiko Hirobuchi

January 19, 2008

日本の前途は悲観的か楽観的か -

いま日本の現状と前途について、悲観的か楽観的かと問われれば、知的な人々の多くは「悲観的だ」と答えると思います。かつて世界一だったGDPの個人所得が、いまでは18位。東京の地価は回復してきたとはいえ、ニューヨーク、ロンドン、ベルリンなどに比べるとまだまだ安い。東京証券取引所の株価時価総額も低く、マーケットとしての魅力は低下し、完全に田舎のマーケットになってしまった。若者の学力テストでも、かつては世界一だった数学さえ、8位だか10位だかに落ちてしまい、国語の力もどんどん低下している。国会は機能麻痺の状態であり、軍事の最高機密を簡単に外国に漏洩してしまう自衛官がいる。いちばんの問題は、政治の最高責任者がこの危機を自覚していないことだ。世界の各国で、日本の存在感は急速に薄れている。まさに「ジャパン・パッシング」である。日本の前途はどう考えても暗いーーという見方です。
これに反して、日本が世界に発信しうるメッセージは多い。まずマンガやアニメの分野では、いまや日本が断トツの発信国である。納期をきちんと守るといったビジネス慣行、日本的美徳は各国で受け入れられている。寿司は日本文化の最強力の大使である。どこの国も作れないハイテク製品を作る中小企業は健在であり、犯罪にしても世界水準から見れば、驚くほど少ない。女性が夜中に一人で歩いて家に帰れる国なんて世界にはまずない。電車は定刻どおりに発着し、水道の水は安心して飲める。停電も滅多に起こらない。若者もちゃんと自分の将来のことは考えている。過度の悲観は当たらない。日本の前途は明るいーーという見方があります。
実に興味深いのは、こうした180度違う見方を自民党の元幹事長と前幹事長が、同じビジネス・セミナーの中で語ったことです。評論家の竹村健一さんが主宰するセミナーで、去る16日には中川秀直元幹事長が、上記のような悲観論を語りました。聴衆は共感をこめて、頷きながらこれを聴いていました。それからほぼ24時間後の17日に、今度は前幹事長の麻生太郎氏が、明るい口調で上記のような楽観論をぶちました。聴衆は、麻生氏の自信にみちた話に引き込まれて、これも納得した顔で共感を表していました。
普通は、こういう矛盾する話を聞くと、どちらを信じてよいのか迷い悩むものです。しかし、今回のセミナーでは、同じ状況を見ても悲観的に見る人もいれば楽観的に見る人もいるのだということがわかっている人、いわば「大人の聴き手」が多かったのでしょう。各人の頭の中で、この矛盾する見方をどう解釈すべきかを噛みしめながら帰って行かれたようです。
「多様な意見があるのはよいことだ」と思いました。私としては、政権のトップにいる人はもっと悲観的に物事を捉え、それこそ命がけで経済対策を打ってもらいたいと思います。株価の暴落に対しても危機感が足りなさすぎです。同時にまた、3割くらいの楽観主義を残しておいて、もっと強気に、より明るい日本の未来を実現するのだという施策を次々と打ち出してもらいたいと思います。

[Post a comment]

COMMENTS

1 : 悠々 : January 20, 2008 01:38 PM

多様な考え方があり、それを自由に発言できる国というのは曲がりなりにも民主主義が機能している訳ですから、今の日本もまあまあの国なのでしょうね。
それにしてもNHKの職員がインサイダー取引で摘発されたなんて言うのは困ったことです。報道の自由を制限される良い口実になります。この職員達はNHKを馘首されることでしょうが、今後一切の報道機関からは閉め出される措置が講じられたらいいと思います。意外にNHKの子会社辺りで再就職したりするのではないかと勘ぐっています。NHK一家の結束は硬いですからね。偶々見つかって可哀相な奴だ、なんて温情が施されるのではないでしょうか。

2 : 湖の騎士 : January 20, 2008 04:27 PM

悠々様 一人当たりのGDPが1位から18位に下がったということは、まだまだ下がる可能性があるということです。みんな気づいていませんが、この間の十数年間で「国民の幸福の度合」も低下しているーーと私は見ます。貧しくなると志も低下するものです。加えて「公に奉仕するという精神の劣化」があります。守屋前事務次官の腐敗も、NHK職員のインサイダー取引も、この「公への奉仕」理念の衰退の産物でしょう。NHKは姑息な手段で今回の犯罪的行為を行った職員の再雇用などをするべきではありません。しかしNHKの労働組合は強く、特定の政党にいれあげており、そこに不明朗な決着がはかられる根が潜んでいる気がします。

3 : FUMIHITO : January 21, 2008 03:50 PM

ご無沙汰しております。

遅くなりましたが、出版おめでとうございます。

私はどうしてもこの国の将来を考えると悲観的になってしまいます。
GDPもそうですが、国のかかえる借金も先進国の中ではイタリアをこえてしまいました。イタリアが一定の水準でキープしている中、日本は増え続けております。
少子化問題では以前確かスウェ-デンだったと思いますが現在の日本のような少子高齢化社会に陥った時に、学生の間は医療費を無料にするという政策を国が実施したところ、人口が増えはじめたということがありましたが、今の日本には年金問題もそうですが、そうしたことを実施する財源がありません。
給食費未納、モンスターペアレント、いじめ、学力低下などの学校問題…
あげればきりがありません。

初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏が『危機管理の要諦は、最も悲観的に準備して、もっとも楽観的に対応すること。最悪なのは、楽観的に準備して悲観的に対応すること』と言っておりますが、先生のおっしゃるとおり政権のトップに君臨する人は最も悲観的にものごとを捉え必死になって改革を推し進めていただきたいと思う今日この頃です。トップではありませんが、国会で9.11はアルカイダの仕業ではなく、アメリカの陰謀だなんて言ってる場合ではありません。

P.S.
 今年の5月に三児の父になる予定です。また是非遊びにいらして下さい。


4 : 湖の騎士 : January 22, 2008 10:03 AM

FUMIHITO様 出版をお祝いくださってありがとうございます。貴コメントは若い世代がいかに正確にこの事態を見抜いているかを示す非常に貴重なものです。給食費未納などは、自分に「誇り」を持っていれば起こらないことですし、モンスターペアレントは人間形成の過程でどこかが捻じ曲げられたのでしょう。昔の小学校しか出ていないおじいさん、おばあさんの方がはるかに常識豊かで、まともな人々でした。こういう現実を見ていると、日本の前途にはだれでも悲観的になります。佐々淳行氏の指摘はまったく正しいと思います。しかし福田首相はこの危機を悟っていません。危機を察知する心のアンテナが備わっていないのでしょう。週刊朝日は「内閣総辞職」の可能性を示唆しています。日本にとっては「解散総選挙」より「内閣総辞職」の方が望ましいでしょう。