View of the World - Masuhiko Hirobuchi

May 25, 2008

100%輸入国なのになぜ石油製品を輸出するのか -

前号の記事に対して非常に生産的で実りの多いご質問を alien 様からいただきましたので、ここであらためてお答えします。内容は「日本は石油を完全に輸入に頼っているのになぜこれを精製した製品を外国に輸出するのか?」というものでした。原油がペルシャ湾岸諸国などから、困難と危険にみちた航路を通ってようやく日本に辿り着いたのに、それをまた加工精製して外国へ輸出する余裕などないのではないか? そんなことで安全に必要な石油は確保できるのか」というご趣旨でした。土曜、日曜に当たり石油製品を輸出する企業には取材ができませんでしたが、自分で考えたことを書いてみます。

まず加工精製した石油製品を必要とする国があるということ。中国もアジア諸国もそうですし、時にヨーロッパ諸国やアメリカも日本のすぐれた技術による石油製品を必要としています。日本製品は公害も出さず、格段にすぐれた技術で作られているため、これを必要とする国は多いようです。こうなると日本は自動車や家電と同じように石油製品も製造する国として期待されており、その需要に応えるのは国際的な役割を果たしていることになります。日本にある石油会社は、日本の国内需要のためだけに原油を輸入するのではなく、もともとある程度は「加工したあと輸出するために輸入している」分もあるわけです。
さらに見てゆくと、石油各社の「国際性」というものが浮かび上がってきます。石油会社というのは、たとえ日本の法人ではあっても大株主は欧米のいわゆる「石油メジャー」である場合が多く、本社の世界戦略の中で動いています。たとえばエクソンーモービルです。この会社の日本法人も製品を輸出していますが、その決定をするのは日本人のCEOなのか、あるいはアメリカ本社なのかを考える必要があります。民族資本が主の新日本石油も輸出しています。そうすることが自社の利益になれば、企業はそれをします。しかし、そうした行為を「国益を損なうもの」と極めつけるわけにはいきません。石油ビジネスというのは、ときにあこぎなことも行いますが、ときには国境を越えた活動が民衆の生活に役立つ場合もあります。視野狭窄な国家がとうてい及ばぬ情報収集力も持っています。そうした功罪半ばする国際石油会社の役割と実態を公正に見つめることが必要だと思います。

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COMMENTS

1 : 悠々 : May 26, 2008 06:39 PM

石油は日本にとって不可欠の資源ですが、商品でもあります。
石油各社が日本国内の需要を満たさずに、輸出でぼろ儲けをしているということではないですから商業ルールに則った輸出をするのは正当な商行為だと思います。
自国民に十分な米を行き渡らせずに外貨獲得のために事故空明を犠牲にして米を輸出している何処かの国とは違うのです。
それに原油をそのまま売っているのではなく、精製加工した石油製品としての輸出ですから儲けた分は日本の技術輸出だと言う事が出来ます。

2 : 湖の騎士 : May 26, 2008 10:19 PM

悠々様 オイルビジネスというのはまことに複雑で、どこがどうなっているのか分からないところがありますが、日本ならではの技術を生かして加工精製したものを外国に輸出し、感謝もされ利益も得ているのですから大きな常識にかなっていると言えます。また商道徳にも反していないようです。しかしイスラエル贔屓の度が過ぎて、OPECから原油輸出禁止対象国にされていたオランダが「加工精製する」という名目の下に、大量の原油をロッテルダム港に運び込んだ実績もあります。「本当に加工精製して第三国に輸出した分がどのくらいあったのか、加工すると称してオランダ自身が自国用に相当使ったのではないか」との疑念はその後もずっとあとを引きましたが、真相はとうとう分からずじまいでした。原油を確保するためには、このくらいのしたたかさが必要なのだーーというのが、そのとき私の得た教訓でした。

3 : alien : May 27, 2008 02:24 AM

湖の騎士様 ありがとうございました。技術力や資本構成などあらゆる角度から詳しいご説明をいただき、原油から石油製品そして輸出を巡るシステムが理解できました。私も石油会社に勤める知人に聞いてみたところ、原油からは作りたいもの、売りたいものだけができるのではなく、あまり沢山生産する必要のない製品もできてしまうそうですし、また原油の種類によっても精製される製品の割合が異なる場合もあるそうです。国内で不要な製品や在庫状況をみながら石油製品を輸出しているとのことでした。
私は今回のように情緒的に事象を捉えないようによくよく気をつけなければならないと思いました。よく温故知新と言いますが、以前、塩野七生さんのローマ通史を読み、ローマ帝国とヌミディア王国の関係を見て、アメリカと日本の関係について「そうだったのか」と合点しました。属国の優等生であったヌミディアが日本の姿と重なって見えました。そのようなイメージをもってしまったために、ガソリンをアメリカに輸出するという報道を目にしますと「また、アメリカは取りやすいところから取り上げるつもりなのではないのかしら」とつい被害者意識や警戒心が先にたってしまいました。今まででしたらそのまま一視点からの消化不良で終わってしまったと思いますが、今は湖の騎士様のコラムを拝読し、いろいろな視点を教えていただいております。ほんとうに視点を変えれば頭に風穴で気分すっきりです。ありがとうございます。これからも楽しみに拝読させていただきます。

4 : 湖の騎士 : May 27, 2008 09:40 AM

alien様 ご質問下さったおかげで、私も石油会社の戦略や国際資本との結び付き、OPEC諸国とOPECに加盟していない産油国との関係、ヨーロッパ最大の製油装置をもっているオランダのサバイバル戦略など、いろいろなことを改めて考えることができました。大きな刺激を与えていただいたことを、心から感謝しています。塩野七生さんのローマ通史をお読みになり、ローマとヌミディアの関係からアメリカと日本の関係に連想が行くというのはすばらしいですね。私も『海の都の物語』を読んだ時から、この方には多大な影響を受けています。塩野さんの本を読む人がぐんぐん増えてくれば、日本が抱えている問題の多くは、相当解決するはずだというのが私の思いです。