View of the World - Masuhiko Hirobuchi

July 23, 2008

ニュース中の意見の可否 -

前回の記事に対していくつかのご意見を寄せていただきましたが、その一つに「ニュースを伝えるアナウンサーが感情を表してしゃべっている」ことへの批判がありました。ニュース・アナは私見をまじえて伝えてよいのかーー。この問いについての答えははっきりと「ノー」です。テレビ・ニュースについて、アメリカのアンカーマンはいけっして意見を言いません。局(ネットワーク)として、意見がある場合は、はっきり意見と分かる形で、アンカーとは別のコメンテーターがしゃべります。このことによって視聴者は、「ああ、これは意見(オピニオン)だな。事実(ファクト)ではないのだな」ということが分かる仕掛けになっています。事実を伝えるような顔をして意見なり感情を伝えるというのは、最も卑劣で恥ずべき行為です。しかし日本のテレビでは、長い間こういう原則無視がまかりとおってきました。そして若いニュースアナの中には、そういうことをしないと一人前のニュースキャスターではないのだという錯覚を抱いている者が多いのです。こういう風潮を作ったのは新聞社出身のキャスターたちが元祖ですが、のちに久米宏キャスターがこういう方針により人気を得ました。この世界は数字(視聴率)が勝負ですから、局は彼を大事にしました。しかしキャスターの生命は「人気」ではありません。では最も大事なのは何か? それは「信頼」です。テレビ関係者はそこを見誤っています。自分が生きてきた世界のことを語るのは気が重いですが、これについては、全テレビマンを敵に回すくらいの覚悟で、できるだけ早く説得力がある本を書くつもりです。それに賛同する人々の方がはるかに多く、日本人のテレビへの認識が変わるくらいのインパクトのある本に仕上げたいと思っています。

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COMMENTS

1 : chisato : July 24, 2008 06:50 AM

廣淵 様
マス・メディアの報道における「バラエティー化」を憂慮している人は多いと思います。
しかし、それに甘んじている、あるいは気がついてすらいない視聴者が多数(視聴率?)を占めているというのも事実ではないでしょうか。なぜなら、文句を言いながらもそのTVを視聴しているからです。踊る阿呆がいるからこそ躍らせているのでしょう。

廣淵様の言われるとおり、私もTVと視聴者は信頼関係で結ばれていなければならないとは思います。しかし、「フェア」の観点から言わせていただければ、現在のTV放送の内容は、残念ながら日本のメディア・リテラシーに見合ったレベルなのではないでしょうか。

メディア・リテラシーの未成熟を嘆いても始まりませんが、私はマス・メディアが落ちるところまで落ちて、TVの視聴率や新聞の発行部数が無意味であることを広告主(企業)が認識するまではこの状態が続くと見ています。そしてこの「バランス」は早晩崩れていくと思います。その際、パイプ役を務めている電通がどのように対応するのかが興味深いところです。

> 全テレビマンを敵に回すくらいの覚悟で、できるだけ早く説得力がある本を書く

それはとても興味があります。「テレビマンユニオン」の末裔でTVコマーシャルの制作現場を経験してきた者として、応援させていただきます。

私がサブスクライブしている、ビデオ・ニュースの「メディア問題徹底討論」(7/12放送分)は廣淵様にも興味を持って見ていただけると思います。

ビデオ・ニュース
http://www.videonews.com/on-demand/371380/001348.php#com

2 : りっキー : July 24, 2008 11:13 AM

このコラム内容はゼミでも多く取り上げられた内容ですよね。前回のコラムでコメントした、アナウンサーが事実を伝えないことへの不満は先生がおっしゃる通りです。意見を言いたいのであれば、フリーになるなり、コメンテーターへ転向するなりして意見を言うべきです。ワイドショーとニュースの違いも正直分からなくなってきています。ワイドショーでは、視聴率が取れるタレントを置いて番組を作っていますが、必ず誰もが言いそうなコメントを言いますね。バラエティ要素が強い芸能人のニュースから、殺人事件に至っても同じ様にコメントです。
社会人になり日経新聞を読むようになりましたが、なぜビジネスパーソンが日経を好むかが最近分かるようになりました。単に経済系のニュースを多く取り入れているからではないと感じます。ニュースや出来事を比較的事実のみを伝えているからではないでしょうか。アメリカに行くとニュース番組は冷たいほどニュースのみを淡々と伝えています。CNN、ABCどのニュースもそうです。今の日本の報道体制を変えるのは難しいと思いますが、改善されることを強く願っています。

3 : 湖の騎士 : July 24, 2008 02:05 PM

chisato様 テレビの世界の仕組みを知りつくした方のご意見と思います。非常に貴重なご指摘です。ありがとうございました。私が見るところ、TV局も、プロデューサーも、アナも視聴者も、それに電通やスポンサーも「なにがなんだか分からないうちに」ここまで来てしまった気もします。「そんなバカな!」とお思いでしょうが、この混乱ぶりは日本の外交における一貫性の欠如、教育の支離滅裂ぶりといったこととも深くかかわっている気がしてきました。先進国では「当り前の原則」や「常識」について、深く考えないうちにここまで来てしまったのではないでしょうか? さてご推奨のブログにアクセスしてみました。この方々の使用する日本語は、少し大衆と遊離しているのではないかと思います。もう少しシンプルで分かりやすい言葉を駆使しないと、大きな支持は得られない気がします。貴重なサイトですので、時々アプローチしてみます。お知らせくださりありがとうございました。

4 : 湖の騎士 : July 24, 2008 02:11 PM

りっキー様 たしかにアメリカにおける「ニュースには私見を入れない」という現実はゼミで何度か話したとおりです。私見を入れたがる元祖(?)は新聞記者です。日経の記事は、試験や「情緒的要素」が最も少なくて抵抗感が少ないのも事実でしょう。いろいろな報道を読み比べ見比べ聴き比べて下さい。メディアに批判的な人がふえることが、日本の民主主義と自由のためにどうしても必要です。

5 : りっキー : July 24, 2008 03:13 PM

メディアが一番正しいと思う時代は終わった様に思いますが、メディアが強い時代が今だ続いていると感じています。変だと思ったら、抗議をテレビ局に入れる。なかなか出来ないことですが、NO!!ということを言える自信がほしいと常々思います。ニュースが影響力があり、意見をいうことで世論が動くことを報道の方々にはもっと理解して頂きたいです。影響力のある人物になっているということが錯覚であることを理解して頂ける日が来ることを願います。
今日東北で大きな地震がありましたが、感情ではなく、事実が報道され、視聴者が考えることができるニュースを流す番組がどれほどあるか、観てみたいと思います。

6 : alien : July 24, 2008 06:55 PM

マスメディアのあり方についてのご本を執筆なさるとのこと、楽しみにしています。体たらくの現象を生んだ文化的・精神的な背景についての鋭いご洞察も併せて世に発表されますよう心から期待しています。

最近、ある本を読んで「ほほーッ」と妙に納得したことがあります。キリスト教社会ではモーゼの十戒でやってはいけないことが厳しく規定されている反面、それさえ守ればあとは自由!というメンタリティらしです。日本にはこれは絶対やってはいけないという掟は存在しなかった代わりに「ああしなさい」「こうしなさい」と逐一干渉する文化が形成されたとのこと。確かに思い当たるフシが…。もし、これが本当ならこのように何世紀もかけて定着しているメンタリティの違いがマスコミの姿勢に影響している部分もあるでしょうか? 欧米のマスコミが「これが事実です。判断はご自由に」という姿勢なのに対し、干渉することにもされることにも慣れている日本人は「ああしなさい」「こうしなさい」と言いたがるし、視聴者もそう言われることを自然に感じるか、もしくは潜在的に望んでいるのかもしれません。メディアの先進度の違いだけでなく、メンタリティの根本的な違いから物言うアンカーの人気が高いのだとしたら、メディアの姿勢を変えることで考え方そのものに影響を与え、より自立した思考へと精神文化を変えていくことになるでしょう。
大変なお仕事ですが、是非ともがんばってください。

7 : 湖の騎士 : July 24, 2008 09:52 PM

りっキー様 メディアにいる人はまだ自分たちの本当の影響力のを自覚していないと思います。あまり主観を入れた報道をしていると、あとで取り返しのつかないことになってしまうことを知るべきです。テレビ人間はとくに慎重であってほしい。北朝鮮や中国のニュースは時に国家の宣伝そのものになっています。日本のメディアがそういうことにならないように、視聴者もよく報道内容を吟味し、時に放送局に電話をして意見を言うべきです。「偏向」報道を放置しておくべきではありません。

8 : 湖の騎士 : July 24, 2008 10:01 PM

alien様 メディアの在りようの違いをモーセの「十戒」にまでさかのぼって考えるというのは、スケールの大きな話で、目を開かせてくれるものです。これについての私の考えはあらためて述べさせていただきます。マスコミについての批判と激励の入り混じった本は、できるだけ早く仕上げます。その前にもう一作かねてからの構想をまとめる必要があり、作業はそのあとになりそうです。ご激励くださり、ありがとうございます。

9 : 悠々 : July 25, 2008 04:46 PM

新聞の場合は、新聞社によってカラーの違いはあるにせよ、記事は事実を淡々と伝え、コラムは主張を述べると言う棲み分けをしていると思います。
TVの場合その棲み分けが曖昧で、ニュースだと思って聴いているとコメンテイターの主張が強く反映した内容だったりします。
紙に記録されるメディアと、見たら消えてしまうメディアとの違いはあるにせよ、マスコミは大衆に多大の影響力を持っているのですからもっとしっかり自己規制をするべきです。
力を持つものはその力を正しく使う事に気を配らなければなりません。奢る平家久しからず、ですからね。
「日本人のテレビへの認識が変わるくらいのインパクトのある本に仕上げたい」・・・本当にそうゆうご本が待たれる現状です。発行を楽しみに待っています。

10 : YSK : July 25, 2008 07:17 PM

今日は、初めまして、、。
いつもこちらのブログを拝見しております。
また、遅ればせながら『頭にちょっと風穴を』も近所の書店でみつけまして、時間のある時に少しづつ読ませて頂いております。

さて、今回の悠々様のご投稿の

>新聞の場合は、新聞社によってカラーの違いはあるにせよ、記事は事実を淡々と伝え、コラムは主張を述べると言う棲み分けをしていると思います。

という内容にに関しまして、確かにそのとおりだと思うのですが、問題は『記事』にならない重要な『事実』が多すぎるのではないかいうことです。

どんなにコラムニストやコメンテーターのバイアスのかかった意見が露出されようと、偏見にみちた内容の表現であろうと、『その事実』がそこに存在するということが『報道』さえされれば、私たちはネットなどを通じて正しい情報を得る事もできますし、また、ネットで調べることのできない世代の方たちとも『その事実』を共有して意見を述べ合う事もできます。

しかし、『その事実』が(意図的に、、としか思えない)報道されなければ、関心以前の問題にしかなりません。

こういった大きな問題こそ、現在のマスメディアの根本的な不道徳ではないかと思えます。

まとまりのない投稿、失礼致しました。

11 : 湖の騎士 : July 25, 2008 09:34 PM

悠々様 ご意見をありがとうございます。新聞は事実を淡々と伝え意見はコラムに書くという棲み分けができているーーというご指摘ですが、私の見方はだいぶ違います。新聞は客観報道を装ってかなりバイアスのついた「意見」や「情緒」を記事の中に潜り込ませています。歴史的にもいくつかの例を挙げることができます。中には「ありもしないこと」をさもあったことのように伝えることです。新しくは「珊瑚への落書き事件」であり、古くは「伊藤律会見記」でした。これは会見そのものがなかった、つまりは架空の会見記(でっち上げ)でした。「南京大虐殺」にしても、新聞記者のよた話が紙面に載ったのがそもそもの始まりだと言われています。新聞記者のすべてがそうだとは思いませんが、これと類似のメンタリティを持った人たちの何人かがテレビにやってきたのです。そのあとどうなったか。ひどいことの数々を私は目撃してきました。テレビマンは彼らよりはるかに純粋でした。

12 : 湖の騎士 : July 25, 2008 09:47 PM

YSK様 初めてのコメントをありがとうございます。拙著もお買い求めいただき、心から感謝しています。どうか楽しんでお読みください。さて悠々さんの「新聞の場合は記事とコラムの棲み分けができているが、テレビの場合はその辺が曖昧になっている」というご指摘は、大筋において正しいと思います。しかし日本の新聞が犯してきた数々の罪に目をつぶるわけにはいきません。そのことを、悠々さんへのお返事の形でこの欄の上に書いておきましたので、ぜひご覧ください。
YSK様は「事実そのものを伝えていないことが多い。その場合はどうするのだ?」と問うておられますが、たしかに日本の新聞が(テレビも)伝え落としている事実は多いです。ある場合は記者会見に出席しながら、その会見内容を一行も伝えないといったこともあります。伝えるかボツにするかは各メディアの自由ですが、ボツにしてしまう「基準」があまりに「主観的」です。このことを語りだせばきりがありません。最近の事例で「ボツにしている重大事実」がありましたら、どうか教えてください。

13 : 悠々 : July 26, 2008 06:51 AM

私が新聞の場合は棲み分けが・・・と書いたのは言葉が足りませんでした。概ね、とかTVメディアに比べれば、と言う但し書きが必要でした。
公正そうに装って記者や社の主観を伝えている場合も勿論あります。
例示された珊瑚の破壊に関するものは私も記憶にあります。やらせ、でっち上げなどは論外です。功名心に焦っての仕業でしょうが、これが世論操作などに結びついたら恐ろしいです。
コメントされた方々の多岐に亘るご意見もとても興味深く拝見しています。

14 : 湖の騎士 : July 26, 2008 02:05 PM

悠々様 だいぶ新聞についてきついことを書きましたが、それは「新聞を批判する者はいないに等しい」からです。テレビについては新聞は大々的に批判しますが、テレビが新聞を批判することはまずありません。それは新聞社がテレビ局の大株主だからです。田中角栄の失政により、テレビの新聞系列化が進んだ結果こうなってしまったのです。いま唯一新聞を批判できるのは週刊誌だけです。雑誌ジャーナリズムの役割は貴重です。

15 : YSK : July 26, 2008 03:06 PM

度々の投稿、失礼致します。

しばらく前の出来事ですが、ほとんど報道されていないようですので、ご存じかとは思いましたが検索用の文字列などを書きとめさせて頂きます。

下記の文字列を入力して"Google"などでご検索ください。

 毎日新聞社 不適切記事

また、下記のURLもご参照ください。

 http://www.mainichi.co.jp/20080720/0628.html

私はこのようなマスメディアを許す事は出来ませんし、またほとんど公式の場での謝罪もなく、他社も見て見ぬふりの同じ穴の住人では、この国の将来は暗すぎると思えてなりません。

もしすでにご存じの事でしたら、ご容赦下さい。
失礼致しました。


16 : 湖の騎士 : July 26, 2008 05:27 PM

YSK様 貴重な情報をありがとうございました。早速アプローチしてみました。この件についてはまず「週刊新潮」で読みました。それから毎日新聞のOBの人から「まったく面目ない事件だ」という謝罪とも弁明ともつかない電話をもらい、大体把握していました。しかしここにお書きくださったことで、他の読者の方があらためて検索したりこの不祥事に関心をお持ちになることと思います。それは非常に有益なことで少しでも日本のマスコミをよくすることにつながります。ケネディを気取るわけではありませんが「共に手を携えて」この社会をよくしていきたいものです。「とにかく始めてみようではないか」(Now let us begin.)という心境です。

17 : 職人希望 : July 26, 2008 10:52 PM

たくさんの方がしっかりとした意見をお持ちで、とても参考になります。マスメディアに従事する人間も、以前の記事にあったフェアであることを大切にして、誇りをもって仕事をしてほしいですね。
船場吉兆の偽装、使いまわしに似た、似非の報道はいりません。
お客さんの舌を侮ってはいけません。ほとんどの人はマスメディアの嘘を見抜いているのでは、と私は楽観しています。
それにしても、報道ミスで訴えられない彼らが、うらやましくてなりません。

18 : 湖の騎士 : July 27, 2008 08:59 AM

職人希望様 「お客さんの舌を侮ってはいけない。ほとんどの人はマスコミの嘘を見抜いている」というご指摘は、本当に鋭く貴重なものです。朝のワイドショーに出ている軽薄でやや思い上がった出演者たちに聞かせたい言葉です。報道ミスをすれば訴えられる時代がやがて来ると思います。とくに経済に関する「意図的な世論誘導」の場合には、アメリカではコメントした者が逮捕されることもあるそうです。

19 : YSK : July 27, 2008 02:39 PM

湖の騎士様の、

>「とにかく始めてみようではないか」(Now let us begin.)という心境です、とのお言葉が、私には " A FRIENDLY PAT ON THE BACK " のように響きました。

今日は近所のケーキ屋さんでお気に入りの”オペラ”というチョコレートケーキを買ってきて、ワインでも飲みながらすごそうかなと思っています。

20 : 湖の騎士 : July 27, 2008 09:48 PM

YSK様 本当にすばらしい会話を覚えていてくださり感激です。ここのところはもう何回も噛みしめて味わったので、頭にしみこんでいます。Linus: "What is the cure for disillusionment?(幻滅を癒してくれるものってなんだろう?)" Charlie Brown: "A chocolate cream and a friendly pat on the back" Charlie Brown steps away. Linus says: "Good old Charlie Brown!". YSK様と私には必要ない会話ですが、これを読んでくださるかも知れない他の方へのご参考までに書きました。私の本をよく読んでくださり、心から感謝しています。