View of the World - Masuhiko Hirobuchi

September 11, 2008

セントポールとサンパウロは同じ意味 -

共和党の全国大会(コンベンション)がミネソタ州セントポールで開かれたのを、テレビや新聞でご覧になって、いろいろなことをお考えになったと思います。このセントポールは隣接するミネアポリスと一緒になって、「双子都市(トゥインシティ)」と呼ばれていること。そこからミネソタ・トゥインズという大リーグの球団が生まれたことなどを思い浮かべた方もいらっしゃるでしょう。私が長いあいだ非常にすぐれた文学的読み物だということを語ってきた、漫画『ピーナッツ』の作者(=スヌーピーの産みの親)チャールズ・シュルツさんがミネアポリスで生まれセントポールで育ったこと。彼のお父さんが経営する理髪店がセントポールにあったことなど、私もいろいろなことを考えたコンベンションでした。
さてこのセントポールとブラジルでいちばん大きな都市サンパウロが、同じ意味の言葉だということを気付いておられましたか? 私がそれに気付いたのは、かなり歳をとってからでしたが、「あ、そうなんだ!」と思いました。英語とポルトガル語では表記法も発音も違いますが、もともとは「聖パウロ」という意味です。パウロはイエスの十二使徒の一人ではなく、もとはキリスト教徒を迫害する側の人間でした。しかしダマスカスへ向かう道で、死んだイエスの姿を見、声を聞いて以来、キリスト教が世界的宗教に発展するための大貢献をしました。キリスト教はパウロの書いたシナリオによって世界宗教になったとまでいわれています。キリスト教の布教に当たっての最大の貢献者は、イエスが「天国への鍵」を渡したとされる聖
ペトロ(ペテロ、ピエトロ、ピーター)で、ヴァチカンのサンピエトロ大寺院は、彼が十字架にはりつけられて殉教した場所の上に建っています。ペトロの名を冠した都市も世界には数多くあります。ロシアのサンクトペテルブルグ、まったく同じ名でアメリカのセント・ピーターズバーグなどです。同じキリスト教徒といっても、パウロを崇める人とペトロを崇める人がいて、それがまた国民や都市住民の気質や価値観を形作っていきます。ビジネス、商業の町として知られるロンドンの「シティ」の守護聖人はセントポールであり、英国国教会(アングリカン・チャーチ)の守護聖人もセントポールです。日本の立教大学の別名(愛称)がセントポールなのは、この学校がアングリカン・チャーチによって創設されたためです。立教の応援歌にもセントポールの名前が出てきますが、今は東京六大学の野球中継が減ったため、テレビを観てそんなことを考える人も少なくなりました。
政党の全国大会という、現実的な話題の向こうに、およそ2000年にわたる文化的蓄積のあとが見えてくるという話をさせていただきました。

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COMMENTS

1 : 悠々 : September 11, 2008 11:51 PM

欧米では頭にサンやセントのつく地名は多いですね。
地名にはそれぞれ由来があり、歴史が刻まれています。
先生のお話でますますその思いを強くしました。
日本の大都市では地番整理が行われ、箪笥町、駕町、等々の歴史に由来する町名がお役人によって中央西、緑一丁目などと何の変哲も風情もない名前に変えられてしまいました。また現在は市町村合併の大号令の下で市名までが変えられてしまっています。後世の人たちは町名から町の歴史を知るなどという楽しみは無くなってしまったのですからお気の毒です。

2 : 湖の騎士 : September 12, 2008 10:32 AM

悠々様 古い地名がいかに想像力を刺激し歴史への興味を掻き立てるかは、教養なき役人には理解できないことでしょう。いわれのある地名というのは、末永く大切にすべきです。それはさておき。もしセントポールとサンパウロが同じ人物の名前だということを理解する人々がふえてほしいものです。この両市の名前の由来を正確に知れば、中東から欧米にかけての宗教、文化、歴史への理解は劇的に変化(深化)すると思います。

3 : FUMIHITO : September 12, 2008 03:38 PM

いや~面白いお話をありがとうございます。
確かに言われてみると「そうか!!」と思いますが、指摘をされないとなかなか気付かないものですね。
サン=セント=St.
これからは地名の見方がだいぶ変わってくると思います。

4 : 職人希望 : September 12, 2008 03:50 PM

諸兄同様に、面白いです。
私もネタをひとつ。
聖路加病院って、St. Luke's Hospitalなんですよね。
はじめて知ったときは、なるほどと思いました。

5 : 湖の騎士 : September 12, 2008 07:43 PM

FUMIHITO様 この着眼を「面白い」と思っていただけて嬉しいです。こういうふうに見ていくと、世界の地名に急になじみを感じ始めます。地理に強くなると歴史にも興味が出てきます。よい循環がどんどん広がってゆきます。

6 : 湖の騎士 : September 12, 2008 07:53 PM

職人希望様 悪乗りするわけではないですが、いまロシアに侵攻されて苦しんでいるグルジアとアメリカのジョージア州はともに英語では Georgia です。グルジア人は、多数が白地に赤い十字架の「聖ジョージ」の旗を持ってロシア軍に抗議しています。この旗は、ベッカムたちが2002年のワールドカップで日本に持ってきた、イングランドの守護聖人セント・ジョージの旗とほとんど同じです。聖ジョージ一人を知るだけでも、実にいろいろなことが見えてきます。ご指摘の聖ルカ(聖路加)が医療の守護聖人だということは、キリスト教徒は大体知っていますが、日本ではあまり知られていません。ここに書いていただいたおかげで、この人(十二使徒のひとり)のことに興味を持つ読者も出てくるでしょう。ありがとうございました。