View of the World - Masuhiko Hirobuchi

October 04, 2008

もしもその言葉を知っていたら(4) 雲の背後には太陽はいつも -

アメリカの下院はようやく大幅に修正した金融対策法案を可決しました。しかしこれで株価の下落に歯止めがかかるのか、通貨の不安定はとまるのか、経済はどうなるのかは誰にもわかりません。まだ「過度の悲観」が世界を覆っているようには見えません。株が下がっても「私は持っていないからどうってことはないや」と思っている人も多いのはたしかです。一部の製造業が不振というのなら、世界経済は立ち直る可能性はありますが、事が金融となるとその影響は絶大です。「こういう時こそチャンスだ。日本が世界経済の安定に向けて力を発揮すべき時だ」といった意見もあちこちで聞かれますが、はっきり言って「俗論」です。日本一国でこの大津波を防ぐ力はとうていありません。
では、皆と同じように、ひたすら悲観していればよいのかといえば、断じて「ノー」です。楽観する材料は具体的には見つかりませんが、こういう時に頭に入れておきたい詩があります。アメリカの詩人ロングフェローの詩に「雨の日」というのがあります。けっこう長いものですが、この中で彼は「雲の背後には太陽はいつも輝いているのだ」と歌っています。 Behind the clouds is the sun always shining.
「当たり前じゃないか」と思うでしょうが、この言葉ひとつで生き返る人もけっこういるのです。私もその一人でした。自分が何をやってもうまく行かず、心が本当に落ち込んでいる時期がありました。ちょうど梅雨時でした。毎日毎日雨が降っていました。「ひょっとするとこの雨はこのまま続くんじゃないか?」と、馬鹿なことを考えました。そういうある日、仕事でアラスカに行くことになりました。空港は雨が降り、黒い雲が上空を覆っていました。心にはもっと重く雨雲がたれこめていました。やがて飛行機は飛び立ちました。ものの数分も経たないうちに、機は8000メートルほど上空に出ました。なんと、燦々とした太陽の光が辺り一面に射しこんできました。その時に、このロングフェローの詩が、まさに「真実」だということを実感したのです。雲はせいぜい地上6000メートルくらいまでです。その彼方には、いつも太陽が輝いているのだということを、想像によってではなく、皮膚感覚で知ったのでした。それ以来、この詩はいつも心の中にどっしりと坐ってくれています。
「この未曽有の危機の中で、そんな個人的な体験など役に立つものか」と思う方もおられるでしょうが、それでも「一つの言葉によって生き返る人はもっと多い」と思います。なにもそんな大きな危機に対してではなくとも、大小さまざまな個人的な Rainy Days(雨の日々)の中で、この言葉を思い出していただけたらと思います。

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COMMENTS

1 : 悠々 : October 4, 2008 10:28 PM

曇天の時も、嵐の時にも暗雲の上空には常に太陽が輝いています。そんなことは飛行機に乗ったことのある人ならすべて体験していることなのですが、現実に自分が暗雲の中に取り込まれていると、目前の現象のみに目が行ってしまい暗雲の上に輝く太陽のことには思い至らないのです。
「やまない雨はない」のですから何時か景気も好転してくれるに違いないのですが、それが何時になるのか、それまで自分が持ちこたえられるのかが問題ですね。
私はいわゆる「晴れ男」で、今回の欧州旅行の折も常に頭上に太陽がありました。一時的に曇りや雨になったときにも、私が目的地に着くときには晴れ渡っているのです。帰国した途端に日本全体の連日の雨模様が一転して快晴になりました。
先進諸国が協力して様々な景気浮上策を講じています。これらが早晩効果を現してくれることを願っています。

2 : どんちゃん : October 5, 2008 05:27 AM

『頭にちょっと風穴を』GETしました。毎日少しずつですが読んでいます。
私が今まであまり関心を寄せられなかった世界がとってもおもしろい切り口で読めます。読みながらも、「この本は、2度読みたいな~」なんて思ってます。そしてこのブログからもいろいろと教えられてます。有難うございます。

3 : 湖の騎士 : October 5, 2008 10:23 AM

悠々様 お帰りなさい。早速のコメントをありがとうございます。雲の彼方には太陽はいつも輝いているというのは、理屈では分かっていても雨が降り続くとなかなか「実感」できないものです。世界中が必死になってこの金融経済危機に立ち向かえば、やがて青空も見えてくるでしょう。「晴れ男」悠々さんが帰国されたというのも明るい材料です。

4 : 湖の騎士 : October 5, 2008 10:27 AM

どんちゃん様 拙著『頭にちょっと風穴を』をご入手くださりありがとうございます。楽しみつつお読みください。「2度読みたい」と思っていただき本当に幸せです。ブログへのご感想も心から感謝申し上げます。今後ともどうかよろしくお願いいたします。

5 : 職人希望 : October 8, 2008 01:58 PM

私も、病気で長いこと仕事が出来ない時期がありました。絶望で先がみえず、本当に苦しい時期でした。記事の言葉を知っていれば、10%ぐらいはやわらいだかもしれません。
近くで苦しんでいる同胞に、声をかけてあげられる強い男になりたいものです。

6 : 湖の騎士 : October 8, 2008 02:15 PM

職人希望様 ご病気で長いこと仕事が出来ないのがどんなに辛いことか、経験のない私には想像することもできません。しかし、このロングフェローの詩で「10%ぐらいはやわらいだかもしれない」と言ってくださり、嬉しいです。いまは皆が苦しんでいる時です。即効性はなくとも、おたがいに声をかけあって乗り切っていきたいものです。