View of the World - Masuhiko Hirobuchi

October 18, 2008

公的資金注入を「政府介入」と見る風土 -

銀行や保険、証券会社が未曽有の危機に襲われ、市場および人心を安定させるためには政府による「公的資金の注入」が不可欠との考えが、ヨーロッパを皮切りに世界に広まっています。こうした断固たる決意の表明によって、各国の株式市場はいくらか落ち着きを取り戻しました。これがいつまで続くかは別として、10日の暴落時よりは少しは明るい兆しが見えてきたように思う人は多いでしょう。
しかし、こうした動きを、アメリカのメディアは政府による「介入(intervention)」と報じています。長いあいだ政府の口出しを封じて独立してやってきたのに、ここで口出しや余計な「指導」などされたのではたまらない、という金融機関の困惑が滲む表現です。NYタイムズが編集している、IHT(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン)紙にはこの「インターヴェンション」という言葉が何回も登場しています。自分たちのルールで、いわば好き勝手なことをやっておいて、挙句に経営が破綻したのに、政府の資金注入を受け、それでもなお政府の援助を「介入」と受け取るのか、という怒りの声も聞かれそうですが、これがアメリカの金融マンの本音でしょう。そしてマスコミの中に政府の「インターヴェンション」を嫌う感情があるのも事実です。こういう「世論メーカー」を相手に、この危機への対処法を説明し納得させるのは至難の業です。アメリカ政府の動きが鈍い背景には、こうした精神的風土があることを、頭に入れておく必要があると思います。

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COMMENTS

1 : 職人希望 : October 18, 2008 04:01 PM

なるほど、インターヴェンションと感じるとは、さすが自立の国ですね。一度ヒモがついてしまうと、いろいろ規制がくわわったり、動きがとりにくくなる懸念を感じるのでしょうね。インターヴェンションに対する感じ方も、(一般的な)日本人とは異なるようです。
以前に「金持ち父さん」という本が売れ、不労所得という言葉がはやりました。違和感をおぼえながら読みました。ファイナンシャルプランナーという職業も出てきて、グローバリゼーションという言葉をいろんな雑誌で目にしました。
最近では、ちょっと前ですが、「国家の品格」や「武士道」のような本が売れ出し、さらに「蟹工船」も売れました。なんだか、日本国民の最大公約数的な感情の推移を表しているようです。
国家を超えた投資が当たり前になり、株式も一部上場する以上は、フェアーでなければならないことはわかります。が、金融第一主義はどうも好きになれません。IBMがレノボに買収されたとき、社員はどういう気持ちだったでしょうか?感情だけで企業は生き残れないのでしょうが、人ごとながら淋しく感じてしまいます。
つい30年ほど前までは、一般市民の金融資産は預金が主流だったと思います。現在のような株価の乱高下をみると、一部の安定株主が、ある程度の倫理性をもって保有するのがいいのかな?と感じてしまいます。会社は株主のモノ、という考え方も理解はできますが、個人的にはしっくりきません。
今回の株価の下落は、長い目でみるといいきっかけになるかもしれません。もちろん不況に対する恐怖感は持っています。しかし、世界的な大干ばつになって御飯が食べれない状況では決してありません。急に飲み水がなくなったわけでもありません。何が必要で、何が不要か、(横文字でいえば)プライオリティを見直すいい時期ではないでしょうか?みんなで徒然草でも読みましょうか、といったところです。

2 : 湖の騎士 : October 19, 2008 10:33 AM

職人希望様 この大乱は物事の優先順位を見直すいいきっかけになったのではないかというご指摘は、非常に貴重だと思います。英米などでは、金融工学(FT)とかいって、数時の操作だけで架空の取引をもてはやし、こういうことができない者を(国を)見下していました。その咎めが一気に噴出したのが、今回の金融崩壊です。もっと地道にやっていれば、これだけ民衆を苦しめるようなことにはならなかったはずです。ここらで物事のプライオリティを考え直すべきでしょう。

3 : 悠々 : October 19, 2008 11:17 PM

アメリカの経済界はユダヤ系が幅を効かせていますし政界にも強い影響力を及ぼしています。イスラエルの行動にアメリカが口出しできないのもその現れの一つです。
政府による「公的資金の注入」もユダヤ系経済界と政府との強い結びつきがさせたわざと見ることも出来ます。もちろん世界経済への配慮であることも事実ですが、それだけのきれい事ではないはずです。その上赤子の我が侭みたいな「政府の干渉は云々」なんてどうも戴けません。
私は天の邪鬼だから物事斜めに見すぎるのかも知れませんが・・・

4 : 湖の騎士 : October 20, 2008 04:04 PM

悠々様 ユダヤの影響力とよく言いますが、今回はもっと切羽詰まった決断だった気がします。今までの慣例を破ってでも、公的資金を入れないとヨーロッパ諸国が納得しなかったでしょう。政府から超然とし、あの誇り高かったイングランド銀行もスコットランド銀行も、涙を呑んで政府融資を受け入れたと聞いています。この辺が大陸ヨーロッパと英国の伝統の差だと思います。公的資金と一口に言っても、その意味するところは国によってずいぶん違うようです。

5 : alien : October 20, 2008 11:00 PM

今日、The Shock Doctrine (by Naomi Klein)という本を読み終えました。湖の騎士様は、お読みになりましたでしょうか?1年前に出版された本で、新自由主義経済に対する警告と告発の書ですが、今回の金融破綻で新自由主義経済の行き詰まりが露呈しましたので、ここ1ヶ月の間にすでに歴史書となったのかもしれません。アメリカ社会が徹底的な民営化、事業化、格差社会化によりどういう方向に向かっているかを知り、SF小説を読んでいる錯覚にとらわれました。地域によってはすでに住民の希望で行政を排除し、企業が医療、教育、消防など全てをビジネスとして請け負っている事例もあるとのことです。もちろん「貧乏人」は相手にしません。他国侵攻の戦略会議や戦後および自然災害後復興支援会議も大手企業の重役を中心とする経営会議になっているようです。IMFのあり方にも疑問を感じました。1960年代から続くこのようなアメリカの姿は想像を絶して「ならずもの」に思え、この本を読んだ後では今回のサブプライムローンを発端とした金融破綻も最初から何かもくろみがあって行われた八百長賭博ではないかとさえ思えてきました。
いずれにしましても、日本には「お金より大事なものがある」という価値観やみんなで助け合うという精神もまだ残っていると思いますので、独自の良さを守りきる方向で発展して欲しいと心から思いました。

6 : 湖の騎士 : October 21, 2008 10:39 AM

alien様 The Shock Doctrine は読んでいませんでした。だいぶきつく鋭い内容のようですね。ネットで買うのもまだるっこしい気がして、日本の書店で平積みになっているのを近々買い求めるつもりです。こういう本の存在をいち早くお知りになり、それを読了なさるという情報感覚の鋭さとご意欲に心から敬意を表します。貴重な情報を本当にありがとうございました。今回の金融破綻を「最初から何かもくろみがあって行われた八百長賭博ではないか」というご感想には、共鳴する点多々です。

7 : alien : October 21, 2008 01:06 PM

湖の騎士様 Shock Doctrineは大変センセーショナルな内容でした。それゆえインパクトも強いのですが、そういうときほど、今度はこの本に批判的な本を読むなどして意識してバランスをとらなければいけないのではないかと思っています。冷静かつ公正に事象を捉える職業的訓練を積まれたジャーナリストはこのような強烈な本をどのようにお読みになるのか、「本の読み方」もお教えいただけましたらありがたく思います。
注意深く読めば誇張し過ぎている部分や偏向も見破れるのかもしれません。私などは何の訓練もしていませんので、しばらくは呆然でした。

8 : 湖の騎士 : October 21, 2008 11:41 PM

alien様 再度のコメントをありがとうございます。実は今朝、MITで経済学博士号を取った業界ではかなり知られた経済学者に電話し、「この本を読んだか」と聞きました。彼は「読んでいない」と答えました。私との電話の最中に Googleを検索しているらしく、「相当に過激なことを言ってるらしい」と言い、批判している学者の名を挙げていました。この人もMIT出身です。alien様は彼女が相当センセーショナルなことを書いていることを、十分に弁えておられるところがすばらしいです。この方の主張と対立する意見もあるのだということを頭に入れて読んでいけばいいのだと思います。

9 : alien : October 22, 2008 01:15 AM

湖の騎士様 皆様のコメント欄に一人で何度も書き込みまして申し訳ありません。いろいろとお調べくださり貴重なアドバイスをいただきましてありがとうございます。テレビ等でおなじみの著名な政治評論家の方が熱心に薦めておられたので興味をもった本だったのですが、批判文などにも目を通して自分なりにバランスをとって咀嚼したいと思います。本当にありがとうございました。(この書き込みはお礼ですのでご返信はお気遣いくださいませんようにお願いいたします)