View of the World - Masuhiko Hirobuchi

November 13, 2008

英皇太子と警官のやりとり  -

本当の話か作り話かは分かりません。チャールズ皇太子が独身だったころののことです。彼は夜な夜な名門の令嬢たちとレストランでデートを楽しんでいました。ロンドンの北の方には、ベイズウォーターロードと呼ばれるおしゃれな通りがあり、その周辺にはファッショナブルなレストランがいくつもありました。皇太子はこの界隈がお気に入りでした。美女と食事をするからには、ワインは当然付きものです。彼もほどほどに美酒をたしなみ、自分で車を運転して住居の近くまで帰ってきました。車はフェラーリかアストンマーティンでしょう。見たわけでもないのにやけに詳しいところが、なんだか怪しいとお思いでしたら、そう思ってくださってけっこうです。酩酊しているわけではないのですが、王子の車はちょっとふらついたようです。そこで交通警官が呼び止めました。「免許証を見せてください」。「いや、家に忘れてきました」。「お住まいはどちらですか?」  このおまわりさんは人を食っていると思いませんか? テレビなどで、三歳児でも顔を知っている自国の皇太子殿下に向かって「お住まいはどちら?」としゃあしゃあと聞いたのです。聞かれた王子もさる者で、そのとき少しも慌てず、「バッキンガム宮殿です」と答えました。聞くほうも聞くほうなら、答えるほうも答えるほうです。すると警官は重々しく、「次回からは免許証を携行するように。分かったね。では今日はこれで行きたまえ」と言いました。「ありがとう」と答えて皇太子は颯爽と愛車を駆って街に消えて行きました。
さてこういう話に余分な解説をつけるというのも野暮のきわみですが、解説がないと、なんだか消化不良になり物足りないとお感じかもしれません。でも唐突さを覚悟でここで一度切らせていただきます。しかしそれではいくらなんでもあっさりしすぎている気もします。そこであえて出蛇足を付け加えます。私は飲酒運転を奨励するわけではありません。だがこの警官と皇太子のやりとりは、実に粋なものに見えると思ってこれをご披露した次第です。賛否両論入り乱れたご意見を期待しています。

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COMMENTS

1 : 悠々 : November 14, 2008 09:57 AM

このエピソードは私も聞いた(読んだ)事がありますから有名な話なんですね。ユーモアを尊ぶイギリス人ならいかにもありそうな話です。
以前日本の皇太子(現天皇)がプリンススカイラインを自分で運転して町中をドライブしたというニュースが新聞に出ました。半世紀も前になるのでしょうか?
報道はされなかったけど陰では厳重な警護体勢がしかれて居たことでしょう。それさえも今ではお出来になれないと思いますが不自由な事でお気の毒です。
ヨーロッパではイギリス以外の王制を布いている国々でも王族方が気軽に町に出歩いておいでのようです。テロも心配ですが、日本でもそうゆう気軽さが欲しいです。

2 : 湖の騎士 : November 14, 2008 12:37 PM

悠々様 この話はかなり多数の方に知られているのかも知れませんね。とすると手品のタネが割れているような記事で恐縮です。私はかなり信憑性のある話だと思っています。日本の皇太子や天皇が、ヨーロッパの君主や王族に比べてご負不自由だということはよく言われますが、皇族方が自由であるためには国民の「ミーハー性」を直すことが先決です。雅子妃がお元気なころ、愛子さまを連れて東宮御所の外に出たところ、中年女性たちが山と集まってきて、携帯で友人を呼び寄せるわ(「あなた大変よ、すぐいらっしゃいよ。いま雅子さまがいるのよ」とかなんとか話している様子が浮かんできます)、写真を撮りまくるわで、雅子妃も愛子さまもいたたまれずに御所に引き上げられたという、”事件”がありました。ヨーロッパではたとえ王族に道で会っても、しずかに目礼して誰も騒がないものです。そういう成熟した国民がいるところでは、王族もある程度の自由を享受できますが、日本ではとうてい無理でしょう。この記事の皇太子と警官のやりとりを見ても、「どちらも大人だなあ」と感じます。

3 : 悠々 : November 14, 2008 03:25 PM

確かに先生の仰るとおり、国民性がありますね。
特に日本の中年おばさん達のミーハー振りはみっともないを通り越して国辱ものです。
私がヨーロッパの田舎に行って、地元民しか行かないバーやレストランに入っても誰も見向きもしません。東洋人なんか滅多に見かけないところでもそっとしておいてくれます。こちらが話しかけると愛想良く仲間に入れてくれるのです。日本ではきっとそうはいかないと思います。

4 : 湖の騎士 : November 14, 2008 03:40 PM

悠々様 あまり日本のおばさんたちを敵にまわしたくないのですが、芸能人や皇族方への接し方はひどいものです。雅子妃はここに書いたようなことがあって以来、すっかり「大衆恐怖症」になってしまわれたと聞いています。相手が芸能人の場合でも、黙ってにっこりと微笑みを投げかけ、芸能人の方もそっと微笑み返すというような社会になってほしいものです。それには小学生のころからそういう躾が必要でしょう。道は遠いですが、他国民から尊敬されるようになるためには、そうした訓練が必要だと思います。

5 : ベル : November 14, 2008 09:31 PM

先生こんばんは!僭越ながらまたお邪魔させていただきました。
映画のように印象的なエピソードですね。この警官の方はたとえ皇太子相手と判っても動揺するどころか威風堂々としていて大人だなぁと私も思いました。「バッキンガム宮殿です」と返答された時の表情などは少し見てみたい気もしますがそれは想像の範疇ですね☆
そういえば先月末、渋谷の喫茶店で隣の空席に座ったのが有名な音楽関係の方でした。店は混んでいたので騒ぎになるかと内心思いましたが、静かで居心地の良い空間を保っていました。それもそのはずこの店は彼のいきつけの店だったらしく親しげにマスターと話していて、ここでは暗黙の了解的なルールがある感じでした。彼が席に着くときに目が合い、先生の仰ったにっこりを交わしたのが記憶に新しいです。
ミーハー性に関しては私は女性だから気になるのかもしれませんが、ブランド品を買い漁るおばさんには何かただならぬものを感じます。でも若い女性(例えば10代とか)にも違和感を感じます。本当に欲しくて買っているのだろうか、と疑ってしまうからだと思います。
集団心理恐ろしや、みんながやってるから私も!精神でなく、自分で考え行動できる人間になりたいものです☆

6 : 湖の騎士 : November 15, 2008 07:27 PM

ベル様 この警官と皇太子のやりとりは、本当に目に浮かんできます。「Where do you live?」「Buckingham Palace.」とそれぞれの属する階層の発音とイントネーションで受け答えしている様が見えるようです。ま、作り話にしてもイギリスという国の性格をよく表した応対だから広く知られるようになったのでしょう。
さてブランド品です。もし誇りと自立心があれば、こんなにも多くの女性が同じブランドの物を買うことはないでしょう。厳しい言い方をすれば、よく猫も杓子も持っている同じブランド品を持つ気になるものだーーと思います。誰も言いませんが、戦後の日本が学んだ最も大きな教訓は「全体主義に陥るな」だったと思いますが、同じブランドの品を持ちたいという心理はまさに全体主義そのものです。もし私が中小企業の経営者だったら、入社試験の面接にやってきた女性がブランド品を持っていたらまず採用しないでしょう。そういう画一的な思考しかできない社員ばかりでは、会社は倒産するにきまっていますから。
渋谷の喫茶店でお隣に座った音楽関係の有名人と、他の客との適度の距離を置いた関係、そして彼ににっこりとほほ笑まれたベル様の奥床しさに感服の念しきりです。

7 : 職人希望 : November 16, 2008 05:39 AM

私はいくつかの異なる県で仕事をしました。赴任して早い時期に行うことの一つとして、居心地のいい飲み屋を探すことがあります。これがなかなか難しく、軽く2~3か月はかかってしまいます。
そんな中で思い出深い場所があります。そこは東京から200~300km北の地域にありました。東京で飲み食いすれば、1万5千円は下らないような内容のものが、数千円でいただけました。店を仕切る親父さんは、ちゃんと礼儀正しく飲んでいれば愛想がいいのですが、いわゆる空気が読めない客に対しては「お宅さんにはこの店は向いていない」と優しくたしなめていました。ベルさんのいかれたお店も、きっと似たような親父さんが仕切っているのでしょう。しっかりしたお店には、大人にしかわからない不文律があります。「にっこりを交わす程度」は、場をわきまえた正しい対応だと思います。これを繰り返していれば、いい友達が増えると思います。

8 : 湖の騎士 : November 16, 2008 11:24 AM

職人希望様 居心地のよい居酒屋を探すのが大事とは、なかなか素敵なポリシーですね。目配り気配りのきいた親父さんがいて、変な客にやんわりとたしなめてお引き取り願うというのも粋な店です。ベルさんの書き込みから、話がここまで発展してきて、楽しみが倍増しました。