View of the World - Masuhiko Hirobuchi

March 09, 2009

「英語の授業は英語で」は正しいか -

今日(3月9日)の朝のニュースでは、文部科学省が「高校の英語の授業は英語で行うように」との学習指導要領を作成したーーと伝えていました。このニュースをどうご覧になりましたか? 私は正直言って驚きました。驚きの第一は、こういうことを考え出す文部科学官僚の頭の中身についてです。彼らは「話せる英語を身につけることが最善の英語教育だ」と思い込んでいるようです。とんでもないことです。高校生ともなれば、いちばん大事なのは「英語で書かれた文章を正しく読みこなせる」ことです。そうしないと、大統領や国務長官がしゃべっている英語は理解できません。彼らはたしかに「話し言葉」で語りますが、その前提としてまず文章を書いているのです。もし日本の高校の授業で「読解力」を軽視し、「ヒアリング能力」だけしか鍛えないとすると、高校で学ぶ英語の質はぐんと落ちてしまいます。知的人間がしゃべっていることは、まずほとんど理解できません。ビジネス交渉においては、もっと複雑な内容を相手はぶつけてくるものです。それを瞬時に理解するためには、こちらの頭のレベルが先方と同等でなければなりません。当たり前のことです。もし高校の英語の授業を全部英語で行うとなったら、文学作品も名演説も理解できない生徒ばかりになるでしょう。水準の低下は目に見えています。有名なリンカーンの演説などを、どのように解説すればよいのか。シェイクスピア劇の名場面をどう説明するのでしょうか。
次に「授業をすべて英語で行う能力をもった先生方がどのくらいいるでしょうか? 仮にいたとしてもその数は寥々たるものだと思います。この第二の現実についての心配も大変なことですが、それよりもなによりもこういう愚策を考え出す官僚のメンタリティが最大の問題です。彼らは日本の教育をいじくり回しすぎてきました。その結果として、日本の教育水準は惨憺たるものになっているのが現実です。せめて3,4年でいいから、制度や指導要領をいじるのはやめて、沈黙していてもらいたい。そうすれば日本の教育は、これ以上悪化することはないのにーー。というのが正直な気持ちです。

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COMMENTS

1 : 悠々 : March 10, 2009 11:13 AM

高校の英語教育を全て英語でやると言うにニュースを聞いたときに私も些か危惧を感じました。英語で授業を進められる教員が居るのか疑問だったからです。おそらく2~3%の教員しか対応できないと思ったからです。そんな教員の英語を聞いてヒヤリング能力が向上するとは思えません。正しい発音も出来ない教員が話す英語で教育されたらとんでもない結果になることは明白です。文部科学省のお役人は現場の実態を全く無視しています。
いま白州次郎のTVドラマが始まっていますがその第一回の放映で次郎が教師の英語能力をこき下ろす場面がありましたが、現在でも教師の能力はさほど向上してはいないと思います。

2 : 湖の騎士 : March 10, 2009 12:49 PM

悠々様 コメントをありがとうございます。私は今の日本人の間に外国語(主に英語)の「読解力」の重要さを理解していない風潮に危惧を抱く者です。なにも難解な文章を理解せよと言うのではありません。ただ「読解力」は書き手や話し手が伝えたい内容を正確に把握するために欠かせないものです。それを軽視してただ日常の会話力を磨こうとしても、それは無理です。まったく中身のない退屈な人間が出来上がるだけです。流暢になんかしゃべれなくても、相手の言うことを正確に理解し適切な対応が出来る人間を養成すべきです。「英語の授業は英語で」などと考えること自体が「ミーハー人間の証明」です。

3 : 職人希望 : March 13, 2009 07:05 PM

 久しぶりにコメントします。私事ですが、兄が高校の英語教師をしております。家族のことで手前味噌かもしれませんが、彼の英語力は問題ないと思います。そんな彼も「英語の授業は英語で」には疑問と申しておりました。買い物でも、役所の手続きでも英語を必要としない生活の中では変わらない、というのが理由だったと思います。私も好きな子にはいくらか良さそうに感じますが、苦手な子はますます嫌いになりそうな気がします。
 ちなみに、今日は楽しい新聞記事を発見しました。産経新聞の“カーネルおじさんにメガネを 鯖江市が寄付”です。暗いニュースが多い中で、なんとも粋なプレゼントです。これに続いて “カーネルおじさんに靴を”、“カーネルおじさんにカバンを”、“カーネルおじさんに万年筆を”などたくさんプレゼントが届くともっと嬉しいです。

4 : 湖の騎士 : March 13, 2009 10:37 PM

職人希望様 お久しぶりです。英語で授業を行うのに問題がないという兄上をお持ちとは心強いかぎりです。そういう方に習う子供は幸せですね。その兄上が、英語で授業を行うことに疑問をお持ちというのは当然だと思います。高校の英語では日常の買い物ができるといったレベルよりもっと上の、「物を考える人の思想や感情が理解できる」英語の習得と会話力を磨くべきです。それには「英語を理解する能力」「読解力」というものが必要で、これは日本語でなければ教えられません。さて諏訪湖の近くの廃水から年間で4000万円の「金」が採れたという楽しいニュースがありましたが、カーネル・サンダースおじさんにメガネをプレゼントするという鯖江市の人たちは、なんとも粋ですね。この記事は私は気づきませんでした。心あたたまるニュースをお知らせいただき本当にありがとうございま
す。