View of the World - Masuhiko Hirobuchi

June 25, 2009

ゴルディウスの結び目のメリット -

キリストが生まれる300年以上前、小アジアにフィルギスという王国があり、そこに誰が挑んでも解けない植物性の知恵の輪があったことを前回書きました。そして「何のためにこんなややこしいパズルがこの国にあったのか、「荒唐無稽でも無責任でもよいから思いつくままにその理由を推理してください」とお願いしたところ、私の想像力のとうてい及ばないような、素敵な推理が寄せられました。まだお読みでない方は、一項目さかのぼってぜひお読みください。このパズルを見事に解いたのが、若き日のアレクサンダー大王だったというところまで書き、「どこから手をつけていいかわからない知恵の輪というのが、現代世界さらには日本の状況に酷似している」とも言いました。
伝説によると、この結び目はゴルディウスがフィルギスにやってきた時にはすでに出来上がっていたとされていますが、ではこの結び目があることによってフィルギスはどういう「得」をしたのでしょうか? まったく根拠がない勝手な推理の第一です。それは「観光客誘致」「観光立国のため」だったのではないかということです。フィルギスにはこれといった産業もなく、貿易で栄えるというわけにもいきません。しかし「あの国にはだれも解けないパズルがあるらしいぞ」ということになると、「では一度行ってみよう」という知恵自慢の者たちが続々とやってきます。3,4日滞在するだけでも旅館も飲食店もにぎわいます。フィルギス全体がなんだかテーマパークのようなものになっていき、国は観光収入だけでも相当に潤い、雇用も安定したのではないか、というのが私の素朴な推理です。江戸時代の庶民のお伊勢参りのように、「知恵の輪」を見に行く団体客だっていたかも知れません。こういうふうに考えると知恵の輪のもたらす経済効果というのは侮れないほど大きかったのではないでしょうか。次回はもっと切実な「フィルギス国内向けの存在理由」を書きます。こちらも独断と偏見のかたまりですがーー。

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COMMENTS

1 : 悠々 : June 26, 2009 07:27 PM

「解けない知恵の輪」が観光資源になるといううのは面白い着想です。しかし交通手段が自分の足か馬車くらいしかなかった時代に観光客はどうやって来たのでしょうね?
たとえばパリとベルサイユ間にしたってかなりの距離があります。馬車に乗っても半日は掛かります。そこを王様や貴族たちは頻繁に行き来していたのです。フォンテンブローの森に狩りに行くのはもっと遠いです。昔の人はスタミナがあったのですね。

2 : sako : June 27, 2009 06:41 AM

膝を打ちました。パズルを解くだけで、次の王様に成れると聞けば、多少無理してでも試してみるか、との気になりますね。
今で言うと、「パズルを解いて知事なろう」という様なものでしょうか?

3 : 湖の騎士 : June 27, 2009 02:32 PM

悠々様 コメントをありがとうございます。たしかにパリーベルサイユ間は遠く時間がかかりますが、中世の人々は西ヨーロッパからエルサレムまで巡礼に出かけロンドンからカンタベリーまで歩いていました。この話の背景は中世よりもさらに昔の古代ですが、それでもギリシャ方面からトルコあたりまでは割合と旅をしたのではないかと思います。とにかく多くの人々の話題になるような結び目があれば、それを見ないで死ぬのは名折れだなどと思う「江戸っ子」みたいな人間が、バルカン半島からギリシャ、イタリア半島あたりにけっこういたのではないかと勝手な想像をめぐらしています。

4 : 湖の騎士 : June 27, 2009 02:52 PM

sako様 この想像はあまり根拠のないものですが、結果的にフィルギスの知名度を挙げ、観光産業を栄えさせたのではないかと思います。「お前、あの結び目を見たかい?」「いや、まだだ」「そいつはいけねえ、なにしろすごい精巧なもんだぜ。この辺一体の知恵自慢が挑戦してもびくともしねえって評判だ。俺も冥土の土産に見てきたが、なんだか後光が射してる感じだったよ」「よし、俺もかならず来年は行くよ」というような会話が交わされていたと思うと愉快になってきます。

5 : alien : June 28, 2009 09:23 PM

抱腹絶倒! まいりました!! 
「そのとおり!」と思い、すかっと、愉快な気分になりました。
わたしの発想は「アレクサンダー大王の遠征」から離れられず、防衛面に視野が限られてしまって頭がかたかったと思いました。
その視野の枠が、湖の騎士様のご発想で目の前でサッと取り払われたのは、実に爽快でした! ありがとうございました。

6 : 湖の騎士 : June 29, 2009 05:01 PM

alien様 こういう変な発想でもお楽しみいただけたようで本当に嬉しいです。根拠はないのですが、あれこれと考えているとこういう着想が浮かんだというだけのことですが、ありがとうございました。この次はやや固い解釈を載せるつもりです。よろしくお願いします。

7 : ベル : June 30, 2009 02:23 AM

こんばんは!紀元前の想像めくるめくミステリアスなお話、楽しく読ませていただきました。
3泊4日 フィルギス王国 知恵の輪に秘められた結び目の謎ツアー。もし現代の旅行代理店にそのような異色のパンフレットがぽつんと隅に置かれていたとしたら。間違いなく(知的?)好奇心をくすぐられますね。現代の日本で観光の魅力は何処にあるのかふと考えてしまいました。知恵の輪はないけど電化製品を買いに来てくれるのかなとか。
ところで、眉目秀麗なアレックスが結び目を一刀して解いたのでよかったのですが、その流れだとどうしても私には違う可能性のお話が頭をよぎってしまうのです。
ある昼下がり、地元では力自慢で名の知れた大男が酒に酔った帰りにたまたま知恵の輪の前を通りかかりました。「お、そういや結び目なんて話があったな。おーあるじゃねえか!俺様がほどいてやる~」「君、やめたまえ。それは神聖な信託を受けた結び・・・」「ミシィィィッ・・・ブッチィィーーンッ!!」「なんだ、鉄ちぎるのにくらべりゃちょろいもんだぜ」一同絶句。
すみません、こんなふうにコミカルというよりシニカルに考えてしまい少々悪ふざけが過ぎましたが、考えても結び目を見つけられず何もしなかった知恵者たちと自分の決断を信じすぐに大胆な行動に移したアレックス。「行動すること」の大切さと危うさを感じました。酔っぱらい大男のお粗末な話は「予期せぬ危険な力」に警鐘を鳴らしたことにしてくださると救われます。。

8 : 湖の騎士 : June 30, 2009 10:22 AM

ベル様 思いもかけなかった酒飲みの大男の出現で、この話にも立体感が出てきました。当時の人々の「神域」に対する気持ちはどんなものだったのかを、あらためて想像しています。入り口には神官や受付人がいて、入場者をチェックしていたのかそれともフリーパスだったのか? いろいろなことを考えると、この有名なエピソードもにわかに現実味を帯びてきますね。本当にありがとうございました。

9 : niraikanai : June 30, 2009 11:06 PM

ゴルディウスの結び目、名前だけは聞いたことがありましたが
恥ずかしながら内容は初めて知りました。
そして、「なぜ結び目があったのか」⇒「観光客誘致」とは
!!私にはとても思いつかない答えを面白く拝読しました。

前回のコラムを読みながら、「眠りの森の美女」の話を思い出していました。いばらの森に眠る姫を探しにいく王子。いばらを剣で切り裂きながら森を進む王子の姿を、小さな頃何度も読んだ本の絵で思い返しました。
いつの時代も、勇敢な王(王子様)を望むものですね。特に女性は。女性が強くなった現代、いばらの森を切り開くのは眠り姫自身なのかもしれません。私もそういう勇気を常に持っていたいと思います。

10 : 湖の騎士 : June 30, 2009 11:40 PM

niraikanai様 この話も参加者がふえてくると、当初は考えてもみなかった面白い発想が次々と披露されて本当に楽しい思いをさせていただきました。そこへ今度は「眠りの森の美女」といばらの道を剣で切り開きながら進む王子まで登場して楽しさ指数もぐんと上昇! 女性が強くなったといっても、たとえばアメリカでも、自分は悪漢に塔の中に閉じ込められたお姫様で白馬に乗った王子が助けにきてくれるのを願望している女性が多いそうです。男子も「草食系」が主流とかでこういう王子様は少なくなってきました。みずからいばらの道を切り開く女性というのも格好いいですね。