View of the World - Masuhiko Hirobuchi

July 06, 2009

アメリカ人のように外国語がうまく(?) -

かつて「各国民が備えていそうもない特性をあえて言う」ジョークが世界的にはやったことがあります。「イギリス人のように料理がうまく ドイツ人のようにユーモアがあり イタリア人のように控えめで フランス人のように運転が静かで アメリカ人のように外国語がうまくーー」という具合に、誰が考え出したのか知りませんが、「なるほど、まさに逆のことを言っているな!」と考えさせるものばかりでした。この「ありえぬ特性集」の最後に「日本人のようにーー」というのがついており、これが全体をぴりりと引き締めていたものですが、そこへ行くのはあとまわしにして、まずは途中の「アメリカ人のように外国語がうまく」を少し考えてみたいと思います。
アメリカ人が外国語の習得が下手なことは、世界的に定評があります。「英語」という今日の世界で通じる唯一の国際語を日常使っているアメリカ人は、世界のどこに行っても英語が通じるものですから、ことさらに外国語を習う必要性を感じないままに一生を送ります。隣国のカナダ、祖先の国イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドも英語圏です。インドでもシンガポールでも英語は通じるし、ドイツ、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーーなどでもほとんどの人は英語を話します。いまさら外国語を習ってなんになるのだという気持ちになるのも無理はありません。加えて通貨の「ドル」は世界最強の通貨です。どこへ行ってもドルは受け取ってくれます。
しかし、英語とドルが世界中で通用することが、アメリカ人の国際理解の大きな妨げになっていることに、当のアメリカ人は気付いていません。1つの外国語を習得することがいかに大変なことかを、彼らはまずぜったいに理解できないのです。そして外国人が使う英語の稚拙さを腹の底では嘲笑しているのが現状です。一度フランス語でもドイツ語でもいいから真剣に学んでみろ、そうしたら外国人の英語下手などを嗤えないはずだ、と言ってやりたい気持ちになります。外国語に対して敬意を払わないということは、外国の歴史や文化にも敬意を払わないということです。アメリカ人の「国際音痴」ぶりは、つとに有名です。小学校の先生が地図でフィリピンを示しながら、「これが日本です」と教える現場を見た日本人教授もいるくらいです。昨年、共和党の副大統領候補になったペイリン・アラスカ州知事の国際音痴ぶりは有名ですが、これほどではないにしても中国・朝鮮半島・日本について、見当はずれの認識を抱いている政治家は多数います。世界最強の軍備を持ち、中南米や中東で気にいらない政権を何度か転覆させてきたアメリカが、この程度の国際理解に基づいて世界戦略を推し進めるのは本当に恐ろしいことです。なにからなにまで一挙に手をつけるわけにはいきませんが、せめてアメリカの友人たちには、「イギリス人のように料理がうまく、ドイツ人のようにユーモアがあり、アメリカ人のように外国語が堪能で」という、皮肉のきいたジョークを語ってあげてください。頭のよい人なら「それを言われると辛いよ。まさにその通りだからね。参ったなあ。反省してるよ」くらいのことは言うでしょう。「ところで、日本人についての名言はないのかい?」と聞かれたら、こう言ってください。「日本人のように自分の意見をはっきりと言う」ーーと。国際会議でも二国間交渉でも、個人どうしの会話でも、日本人が自分の意見を言えないというのは、今や世界的に有名な話です。さて、これを聞いたら、かのアメリカ人は「君はどうもふつうの日本人とはちがうようだね」と切り返してくるかも知れません。「自分でもそう思うよ」とやんわりと受け流し、こうした会話を大いに楽しんでいただきたいものです。

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COMMENTS

1 : alien : July 7, 2009 12:45 PM

アメリカ人ではないけれど、確かに、英語が世界の共通語になっているのを笠に着て調子にのっているバカ者はいます…と、私がいきなり手荒に批判しても誰も私を責めないと思います。なぜなら、なぜなら、私は、英語の発音が悪いといって英国のポリスに逮捕されたのですから!ある晩、私は不覚にもロンドンの目抜き通りでお財布をスラれ、翌朝、ポリスに被害届けを出しに行きました。すると、見るからにヒステリックな女警官が不機嫌な顔で「名前は?パスポートを見せろ」と言うので、私が名前を名乗ると「おまえの英語は一言たりとも理解不能だ。イギリス人と出直せ」と被害届を拒否されました。私が「数年、ロンドンで働いていますし、一応、英語で説明を試みさせてください。」と丁寧にお願いして続けようとしたら、彼女はいきなり私に「不法就労で逮捕する。at 9:53, you are under arrest」と宣告し、私は押し込められるように奥の部屋に連れていかれました。取り調べは全く無く、私は両脇に立つ大柄の男性警官二人に見張られて、背筋を伸ばし豪然と顔を上げ椅子に座り続けました。しばらくして、女警官が「もう帰れ!」と言いに来たので、私は、「あなたは、このパスポートのスタンプが間違っていると言って私を逮捕したんだろ? 同じパスポートを持って出歩いたら、また逮捕されるではないか? このスタンプが正しいと証明されるまで私はここを動きません」と居座り続けました。女警官は、「帰らないと再逮捕するぞ」とキーキー言って脅しましたが、私は顎を上げて座り続けました。もし、私がニッコリ笑って彼らに「日本人は自分の意見をはっきりと言う」と言ったら、誰もジョークとは気づかずにシリアスに「かしこまりました」ということでしょう! 私は、このジョークを台無しにしてしまいました!

2 : 湖の騎士 : July 7, 2009 10:57 PM

alien様 こんなひどい仕打ちを受けられたとは驚きました。教養ある人は外国人が話す英語を「一度文字に直して聞く」ものですが、教養のない人にはそれができません。「自分がふだん接している人たちの英語しか聞けない人」というのはけっこういます。従ってalien様が仮に完璧な上流階級の英語で応対されても聞くことができなかったでしょう。イギリス人も英語が国際語であることから、自国語に対する優越感のようなものを持っていて、まじめに他国語を学ぼうとしません。しかしフランス語には若干のコンプレックスを持っている気がします。それにしても「日本人は自分の意見をはっきりと言う」というジョークをお使いにならなかったことが残念でした。これが通じるためには、聞き手のほうによほどのセンスが必要ですがーー。

3 : alien : July 9, 2009 11:13 PM

湖の騎士様 上の女警官のエピソードは、最近、私にとって別の意味を持ち始めています。
以前は単に「イギリスで受けた人種差別的いやがらせの思い出」、今は「あの女警官のようにならないよう自戒的な教訓」となりました。といいますのも、正直に告白しますと、たとえば、今、東京で3軒続けて外国人スタッフしかいないコンビニエンスストアに入った後には「ちゃんとした日本語が聞きたい」とため息が出たり、カフェで携帯電話を片手に延々と大声で話している外国人女性を見ると、「日本の奥ゆかしい文化はそんなんじゃない」と睨みつけたくなったり…この先、私は、あの女警官のようにならない自信がありません。彼女にとって私は、「ひどい英語しか話せないくせに豪然と顔を上げている東洋の女」だったのです。現在、日本では少子化による労働力の不足を補うために1千万人、3千万人単位の移民計画が提案されています。日本語や文化の質、人口の人種構成が変貌するのを眺めながら、私は冷静でいられるのかどうか自信がありません。
その点、イギリス人やアメリカ人は母国語が世界語として通用する反面、「外国語がうまい」と揶揄されながらも人種のるつぼのような多民族・多文化を自国に受け入れて(変な英語を話す人々と)共存しているわけですから、随分寛容だと思います。特に歴史と誇りあるイギリスの割り切り方は大変なものだと思います。
何度もコメントをお送りしましてすみませんでした。

4 : 湖の騎士 : July 10, 2009 10:22 AM

alien様 ひとつの不愉快な思い出から、かくも見事に発想を切り替えられる柔軟性に敬服します。なるほど、日本語がおぼつかないコンビニエンスストアの店員や、本当に注文した料理が出てくるのかな、と思わせるレストラン従業員(中国からの留学生が多い)がふえていますね。大声で携帯電話で話している外国人女性もよく見かけます。彼らはローマにいてもローマ人のごとくしないたぐいの人々でしょう。日本人が外国人に甘く、その非を咎められないことも大きな原因です。やんわりと皮肉をきかせて、「ここは日本なのだ」ということを、知らしめる日本人がもっといてもいいと思います。そのお一人になってください。コメントはいつも貴重です。どうかいつでもふらりとお立ち寄りください。