View of the World - Masuhiko Hirobuchi

August 02, 2009

「理」に訴える自民、「感情」に頼る民主 -

いよいよ選挙です。各党の公約が出そろいました。公約といったりマニフェストといったり、日本語はくるくる変わるので、有権者としては大変です。さて、今年になってからの一連の地方選挙をはじめとして、自民党の首脳部は「いざとなれば国民の理性が働いて、政権担当能力のない民主党の実体が明らかにされるだろう」という楽観的見方を抱いてきたようです。そのことは衆議院を解散してからの麻生首相や細田幹事長の言葉にも明らかです。しかし自民党は大きな読み違えをしています。自民、民主両党のマニフェストを丹念に読み比べた上で投票する人というのは、全有権者のうちのおよそ30パーセントくらいでしょう。残りの7割はもっと直感的に好き嫌いで投票すると思います。自民党は国民の「理性」「理論的判断」に頼りすぎ、「理」に訴えることしかしていません。多くの国民は北朝鮮のミサイルも核兵器も日本にとっての脅威だとは感じていません。もし民主党が政権を取った場合にインド洋での給油活動が停止され、このために日米関係が危機的局面を迎えるであろうとは考えてもいないようです。国際社会における日本の立場はどんどん弱くなり、日本の安全そのものが脅かされることになりかねない」とまで考えている人はきわめて少数です。そこのところを民主も自民もマスコミもはっきりとはいいません。経済成長を何パーセントにするとか、高速道路の料金を無料にするとかなんとかの議論は、すべて「日本が今のままで安全に存続してゆける」ことを前提にしています。もし国の安全が損なわれれば、各党が掲げている公約は何の役にも立たないものになってしまいます。
この点で、民主党の選挙活動は巧みです。「理」に訴えることをせず、有権者の「感情」に訴えています。すべては「自民憎し、麻生は駄目だ」という国民感情をあおることに向けられているという印象です。日本の選挙では「情に訴え、風に乗った方が勝ち」の場合が圧倒的に多いのです。自民党は「理」にばかり訴えることをやめて、もっと「国民感情に訴える」「自党に有利な風を起こす」方向に戦略を切り替えるべきです。同時に民主党に望みたいことは、「もう少し理性的な人々を説得するだけの訴えかけを行うこと」です。民主党の幹部の中には、理論的に突っ込まれれば、答えに窮するような人が非常に多く、政策の一貫性という点で、今ひとつ信頼されていないからです。

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COMMENTS

1 : Sako : August 3, 2009 07:10 AM

 麻生さんが、総裁選の時に秋葉原で演説をしました。
何の政策を提示していないにも関わらず、秋葉原に居た人々は、漫画好きというだけで熱狂的支持をしました。

同じ様に、民主党は野党第一党というだけで支持をされていると感じます。
山口二郎さんの「政権交代論」を読み、確かに政権の交代は必要だと思います。

しかし、廣淵さんの仰る通り、理論が弱いです。
国民は愚ではないので、今出来もしない約束ばかり言うと、次の次の選挙は勝ち目が無いだろうと思います。

2 : 廣淵升彦 : August 3, 2009 05:56 PM

Sako様 麻生さんが秋葉原で演説して人気を得てからまだ1年になっていないのですね。それが今この不人気ぶりです。国民に人を見る目がないのか、それとも麻生さんが変わりすぎたのか? こういうことになると「国民の審判」というのは、今後も大きく狂いつづける可能性があります。山口二郎さんは元々自民党ぎらいで左翼の論客ですから、政権交代論を唱えるのは無理もありません。問題は彼が好むような政権ができた場合、日本人が今ほどの自由を謳歌できるかどうかです。もっと統制のきびしい、米英欧以外の特定の大国にすり寄る政権となるでしょう。その危険に学者もマスコミも気付いていないのが実情です。識者は「今の日本を取り巻く情勢はヒトラーが政権を取った時のヨーロッパ情勢に酷似している」と言っています。

3 : Sako : August 4, 2009 11:43 AM

ヒトラーの時代と類比されているとは知りませんでした。
危機感を持たれる方が多いのですね。

私は、二・二六事件前の時期と酷似しているように感じます。
明治維新後と戦後の成長の停滞、世界不況、大正と80年代後半の繁栄の喪失等です。


過去、日英同盟を廃棄後に組む相手を誤ったので、同じ轍を踏んで、人権の概念のない国にすり寄らないで欲しいですね。

4 : 廣淵升彦 : August 4, 2009 11:18 PM

Sako様 二・二六事件前の状況と酷似していますか? あのころは東北の農村では娘を売らなければ生活できないというほど悲惨な状態でした。青年将校たちの思い詰めた気持ちというのは、ある程度理解できます。本当は今の状況の方が厳しいのでしょうが、人々はまだのんきで「そのうち何とかなるさ」と思っているところがあります。いちばん恐ろしいのは「国際情勢を読めない政治指導者およびマスコミ関係者が多すぎること」です。一度誤った選択をしてしまうと、もう元には戻らないものです。おっしゃるとおり、日英同盟の廃棄後、「組む相手を間違えた」ようなことが、再び起こりそうです。

5 : ベル : August 5, 2009 02:22 AM

「日本もあのヒトラー政権を彷彿させる恐ろしい局面を迎えているのではないか」という話を私も耳にしました。
「情に訴え、風に乗った方が勝ち」本当にその通りだと思います。街へ出れば街頭演説に熱狂し感情的になる有権者を幾らでも見ることができます。特に女性はよほど政治に関心を持たない限り、善悪の判断ができるだけの知識を持ち合わせていないというのが情けない実情だと思います。私もそんなことにならないために情報を自分から集めにいく労力は惜しみたくないと思っている一人です。
人間は感情の生き物であると同時に理性があるから人間だとも言います。理性的でありたいと思う人は思考を働かせ自分を律していますが、感情で動く人間はかなり危険ですね。目先の損得やムードで責任のない一票を入れてしまう人が大勢いたらと思うと戦慄を覚えます。
まずは自分のまわりからということで、次に女性メンバーで食事をする際には仕事や恋や生活の話だけではなく国の明暗を分ける大事な選挙について語り合いと思います。口火を切って煙たがられないことを祈るばかりですが。。

6 : 湖の騎士 : August 5, 2009 10:10 AM

ベル様 街中の候補者に熱い声援を送るほど感情的になっている人が多いのですね。4年前の郵政民営化選挙も、わかりやすく単純化した旗を掲げて戦った小泉自民党の圧勝でした。人々は「単純化したスローガンに弱い」のです。今度の旗は「政権交代」です。そのあとに待っている未来について、明確に思い描ける人は(私も含めて)いません。しかし民主党による政権が、今よりも悪いものになる可能性についてもっと考えてもらいたいものです。とくに「外交」「安全保障」「教育」です。昨日も政治評論家3人の講演を聴きましたが、自民党に寄り添って生計を立ててきたというのに、今や完全に自民党を馬鹿にしていました。いろいろな思惑があるのでしょう。自民の劣勢は「オツムの劣化」によるもので、このことに総裁がまったく気付いていないのが情けないです。

7 : alien : August 6, 2009 12:28 AM

湖の騎士様が再三ご指摘になっているとおり民主党が政権を執った場合の危うさは非常に現実的であり、政権交代の翌日からでも具体的な現象となって現われる類のものかと思います。一方、私が危惧するのは、「国益」「文化・伝統の尊重」「日本の国がら」を旗印に台頭してくる勢力の害はどういう形で現れるのか予見がしずらいという点です。国益棄損より国益絶対擁護の方がいいに決まっているわけで、彼らの主張は一見非難するところがありません。私が時折書き込みをさせていただいているのは湖の騎士様のブログだけです。しかし、半年ほど前、体を張って無私の境地で国益擁護を訴えている政治家のブログにコメントを数回書き込んだことがあります。すると、「ぜひ、会いましょう」というお誘いをいただき、驚きましたがじっくりお話をする機会を得ました。そして私は、支持をやめました。外からでは見えませんが国粋主義・排外主義の域に達してしまっていて、しかも神道の歪信により本質的な部分でコミュニケーションが不可能だと判断しました。彼らが命がけで国益を守る気持ちに嘘はないと思います。でも、歴史のルールで、バランスの悪いものは、いつか必ず支障をきたすのだと思います。それがどういう形で現れるのか、私は一切政治と関わりを持たず、有権者としてどの政党にも、どの政治家にも気を許さず冷たく冷静に観察したいと思います。誰に対しても「heil」と言ってしまったら、それは知性の自殺だと思います。

8 : 湖の騎士 : August 6, 2009 10:35 AM

alien様 いま書き込みをしていただいているのは私のブログだけとのこと。光栄です。半年ほど前にある政治家のブログに書き込みをされ、先方のお誘いでお会いになって支持をやめられたそうですが、「バランスの悪いものは、いつか必ず支障をきたす」というご判断は正しいと思います。私も特定の支持政党は持っていません。しかしいままでに、鳩山由紀夫、小沢一郎、菅直人、岡田克也、麻生太郎、安倍晋三、小泉純一郎らの政治家と直接会って話を聞き、「現時点でどちらの政党がまだ耐えられるか(tolerable か)、ともに病んでいることは確かだがどちらが治癒可能か治癒不可能か(incurable か)という認識は持っています。その認識で行くと民主党の方が incurable です。これは冷静な認識のつもりです。alien様は、いつも私の思考の中には浮かんでこないまったく新しい発想や価値観を注入してくださいます。「誰に対しても『heil』と言ってしまったら、それは知性の自殺だと思う」というお言葉を深く胸に刻んでおきます。 

9 : Anonymous : August 6, 2009 03:53 PM

湖の騎士様、私は少し焦り過ぎていて、上でお話しました私の危惧は時間軸としてはずっと先に心配すべきことなのだと思いますし、取り越し苦労かもしれません。民主党がincurableであり、その民主党が政権を執った場合は国を著しく棄損するであろうことは私も全く同じ認識です。そして湖の騎士様がご指摘のとおり、今の「感情的」な風潮では、残念ながらそんな民主党政権が実現してしまうかもしれません。そうなった場合、多少国粋主義的であっても、神がかっていても、取り合えず「国益」を何よりも重視する勢力には一致結束していただき左翼政権に対抗してもらわなくてはならないと思います。ある意味、内包する危険性を認識した上で有権者は彼らを「利用」することなのかなと思います。長い間の社会の左傾化の反動で、今、少しずつ保守への回帰の兆候が見られるような気がします。それが健全に育まれれば望ましいことですが、少なからず国粋主義的な精神性をもつ勢力の力強い言葉、自信を失った民族の勇気に火をつける言葉に過度に呼応し鼓舞されて、それが主流になり政界再編を経て力を持った時にはどうなるのだろうと思います。私の心配は気が早過ぎて、きっと取り越し苦労ですね。でも、警戒心だけは怠りないようにしたいと思います。

10 : alien : August 6, 2009 03:57 PM

9.の書き込みはalienです。名前を書き忘れまして申し訳ありませんでした。

11 : 湖の騎士 : August 6, 2009 10:40 PM

alien様 私は国粋主義的グループはそんなに大きな力にはならないと思っています。左翼が連携するのに巧みなのに比べて右翼は個々ばらばらで連携しないというのが、いままでの実例です。したがって危惧されたようなことは起こらないでしょう。民主党が政権を取った場合、党内の左翼が前面に出てきて勝手なことを言い出し、それが国民と世界の国々の顰蹙を買う可能性が大です。それでも人々は大いなる欲求不満を抱きつつ、彼らを淘汰するまで4年間隠忍自重しなければなりません。その間に日本がどんどん世界から孤立してゆくのが心配です。