View of the World - Masuhiko Hirobuchi

August 27, 2009

死者を美化しすぎる報道(ハンガリーの続きは次回) -

(予定のハンガリー続編を急遽変更させていただきます)
この夏は多くの有名な世界の政治家が亡くなりました。私も謹んでご冥福を祈りたい気持ちは皆さんと同じです。ただここのところの死去報道をテレビで見ていて、ニュースというのは生前の「功罪共に」伝えるべきだと強く感じましたので、そのことを強調したいと思います。今日(8月27日)、朝からNHKテレビはエドワード・ケネディ上院議員の死を伝えていますが、いずれも「民主党の重鎮で」「アメリカ政界に大きな影響力を持っていた」といった言葉ばかりです。ケネディ氏が、大統領になれなかった最大の原因は秘書の女性とドライブしている最中に湖に落ち、自分は泳いで助かったが女性は溺れ死んでしまったこと。しかも事故(事件)から約9時間(または6時間)、彼はこのことを警察に通報しなかったためです。アメリカの世論は激昂し、ケネディ氏を「卑劣漢」「無責任な男」と罵りました。この傷跡がずっと尾を引いて彼はついに大統領候補にもなれませんでした。死者に鞭打つ気は毛頭あありませんが、ニュースの客観性からいえば、「こういう事件が60年代にあった」ということは伝えるべきです。イギリスのBBCテレビは、死んだ秘書の写真まで使ってきちんとこの事件を伝えています。ケネディ氏の生涯をきれいごとずくめで締め括ってはいません。なぜこういうことを重視するかというと、今後のアメリカ政治を見る上で、さらには日米関係を考える上で、こうした「事実」についての知識は不可欠だからです。
これと共通する類型報道に、韓国の金大中元大統領の死去報道がありました。この時も「北朝鮮との融和に努め、南北の関係改善に大きく貢献した」という、礼賛ずくめの報道でした。南北の和解を結構なことだと思っている人は、こうしたフレーズで満足したかも知れません。しかし「ニュース」であるからには、「負の側面」も伝えるべきでした。彼は金正日総書記との会談を実現させ、これによりノーベル平和賞を受賞しました。「しかし、首脳会談を実現させるために日本円で500億円といわれる金額を北朝鮮に支払ったとされ、この南北会談に対する厳しい見方も今なお根強く残っています」くらいのことは言っておかないと、公平を欠くというものでしょう。この方の死に関しても「結構ずくめ」でなく、せめてこのくらいの負の部分は伝えるべきでした。一部では「ノーベル賞を金で買った」ということも言われたことは記憶に新しいところです。
フィリピンのコラソン・アキノ元大統領の死に関しても、「フィリピン民主化の旗手」という美しい言葉ばかりが用いられ、大統領としてどういうことをしたかをまったく伝えませんでした。この人の場合は、ニュース現場がまったく知識を持っていなかったのだと思います。しかし、ケネディ、金両氏に関しては「明らかに負の部分を隠蔽した」という印象です。なんのために? こういうリベラル派を好きな人たちが、ニュース現場にいるからだと思います。

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COMMENTS

1 : 悠々 : August 28, 2009 08:57 AM

政治家の死亡に関する報道については私も全く同感です。
事故にあった子供を可愛くて近所中の人気者だった、と言うのも良くある記事の表現ですが、悪ガキを可愛い子だと言ったところで実害は有りませんが、有名人特に政治家に関してはマイナス面もきちんと伝えるべきです。
死者を鞭打つと言うこととは別次元の問題です。
マスコミの報道が結婚式の祝辞や葬式の弔辞と同じ発想では困ります。

2 : 湖の騎士 : August 28, 2009 09:58 AM

悠々様 政治家の死亡ニュースについてご同感いただき心強いです。エドワード・ケネディの場合も金大中の場合も、「負の側面」を知っていないと、ビジネスや外交の場でおよそ見当外れの発言をしかねず、米・韓双方の国民を怒らせたり、「こんなことも知らないのか」と軽蔑を買ったりしかねません。「マスコミの報道が結婚式の祝辞や葬式の弔辞と同じ発想では困る」というのは、実に本質を突いたご意見です。

3 : とりのぼ : September 1, 2009 04:06 AM

政権交代が行われ、鳩山政権の時代が来ることが確実になりました。
国民の選択は、時代の選択であり必然性のあるものと認識しておりますが、極めて個人的な感想ですが、鳩山氏が一国の首相として我が国を導いていくこの現実に対して憂鬱な気分になっています。
鳩山氏の友愛政策と、第2次世界大戦前に宥和政策を採ったイギリスのチェンバレンとの共通性(危険性)を文章にできないでしょうか?同じ島国であり、近隣に強大な危険な国を有している状況が時代は違えど、近似性があるような気がします。
国民の選択を間違っていると言う気は毛頭ありませんが、安全保障に関する危険性について関心程度は持つべきだと個人的に感じております。

4 : 湖の騎士 : September 1, 2009 08:39 PM

とりのぼ様 全く同感です。鳩山氏の外交感覚・安全保障感覚はきわめて危険です。「日本列島は日本人だけのものじゃない」という発言を聞いて、「そうか。じゃ、侵略してもいいのだな」というのが、近隣の国の反応だそうです。チェンバレンの「宥和政策」がどれほど多くの兵士の命を奪うことになったかを、考えている日本人は少ないでしょう。事実(史実)そのものを知らない人が圧倒的に多いと思います。今回当選した小沢チルドレンたちは、推定したところまず95パーセントがチェンバレンの名前もミュンヘン会談も知らないでしょう。そういう連中が国政を担う危険性を、国民の多くは気付いていません。平和ボケそのものです。

5 : alien : September 2, 2009 12:06 AM

私も湖の騎士様のお考えに共感いたします。マスメディアが故人となった政治家の足跡を振り返る時は、功罪共に公正に歴史を記録する気構えで臨んで欲しいと思います。湖の騎士様が示唆なさったように、こんなところまでマスコミの意図的な隠蔽が働いている可能性が高いとはまったく辟易といたします。一方、現役の政治家について語る場合、様々な媒体で「某政治家」とか政治家X..Xとイニシャルを使ったぼやけた表現が好んで使われ、結果として悪徳政治家の所業を隠匿して庇うことになっている例を多く見かける気がします。政治家を敵にまわすと怖いとか、人の悪口を言うのは気が引けるという気持ちが作用するのかもしれませんが、有権者は政治家の言動でその人物や政治ヴィジョンを判断するしかないのですから、「某政治家」などと手ごころを加えず、はっきり名前を伝えて欲しいと思う場面がままあります。

6 : 湖の騎士 : September 2, 2009 11:59 AM

alien様 まず8月に故人になった3人の外国政治家について日本のメディアはニュースではネガティブな面をまったく伝えませんでした。このうちアキノ元大統領については「行政のトップとしては無能であった」ということを、まったく知らなかったのだと思います。しかし金大中氏の場合は、彼が金正日に払ったとされる500億円が、北の核開発に直接繋がっている可能性があるんですから、この支払いの件は絶対に逃してはいけない最重要項目のはずです。ケネディ氏にしても、多くの米国民は「アメリカ政界の重鎮」だなどとは思っていませんでした。彼の政治生命は女性秘書を死なせてしまった時に終わっていたのです。さて現役の日本政治家が悪いことをすると匿名にしてかばうというのは悪習です。もっと堂々と名前を出すべきです。このことについては、さらに触れる機会があると思います。