View of the World - Masuhiko Hirobuchi

September 19, 2009

より現実的な原因ーー中欧(東欧)革命 その6ーー -

鳩山政権の成立に触れずになぜいつまでもハンガリーの王冠やベルリン壁の話ばかりしているのか? と問われれば、「天安門事件と一連の中欧の無血革命・ベルリンの壁崩壊から20年が経ち、これを機に人間の「自由」「社会主義の本当の姿」というものを見直しておかないと、かならず悲惨な目に会うと思うからです。さて前回は「ハンガリーに王冠が返ってきた日」をメインに据えて書きました。ロマンティックな側面・情緒的な面からの捉え方をしてみたわけです。しかし現実の国際政治は、もっと具体的な「力」「駆け引き」「利害」で動いています。日本の民主党連立政権の危うさは、こういうことにまったく無知な人々が政権中枢にいることです。彼らが自分だけの価値観や倫理観で外交を行うのは非常に危険です。これらの政治家諸氏がこれから書くことを少しでも咀嚼してほしいと願ってやみません。

1.ECSC (75年ヘルシンキ)

まず89年のベルリンの壁崩壊に先立つ1975年に起こった重要な出来事についてです。フィンランドのヘルシンキで「ECSC」(フランス語ではCSCE)という会議が開かれました。European Conference on Security and Co-operation の略です。日本では「全欧安保協力会議」と訳されています。こんな活字と、相当の分量の記事がいくら新聞に出ても、日本の一般の人々の生活にはまず関係がないと映ったことでしょう。おそらくこの名前を見せられても、日本では政権のトップにいる人でさえ、ぴんと来ていないのではないかと思います。それよりも教科書ですこし習った、80年も前の「ベルサイユ講和会議」とか「ロンドン軍縮会議」といったものの方が有名でしょう。しかしSCECは、まさにヨーロッパの自由、人権、安全保障といったものを促進するためにきわめて大きな役割を果たしたのです。この会議にはソ連のブレジネフ書記長を初め、西側の首脳も出席しました。ここで語り合われた「人権」「自由」への合意事項が、かなり守られるようになっていきます。東側諸国において、それまで公然と行われていた「政府による私信の開封」「民衆の電話の盗聴」などを自粛することに繋がっていったのです。

2.SS20ミサイルの配備とこれへの西側の対抗手段

このころ、ソ連は突如自分の「衛星国」にSS20と呼ばれる「中距離核ミサイル」を配備しました。米本土にまで達するものではありませんが、パリもフランクフルトも一撃の下に消滅してしまうくらいの恐るべき兵器でした。このミサイルについても、日本の政治家もマスコミも本当に鈍感であり、今にいたるまでその恐ろしさを分かっていません。当時の日本の首相が、欧米の首脳に「SS20が」と問いかけられて「SS20というのは何だ?」と傍の補佐官だか通訳に聞いたというのは有名な話です。とにかくこの恐怖に対抗するために、西側は急遽アメリカ製のパーシングⅡと巡航ミサイルを配備しました。SS20の脅威に立ち向かうにはこれしかないとの判断からです。しかし配備は大きな苦痛を伴うものでした。ソ連を刺激するという恐れと、「もし先制攻撃されたらどうするのか?」という憂慮の中で、とくに位置的に真っ先に被害に合う西ドイツの苦悩は大変なものでした。日本では「そこはあくまで話し合いで」とか「某国を刺激するから」という愚論が大手をふってまかり通っていますが、それは国際政治の現実をまったく知らないための暴論です。とにかく西ヨーロッパは国論を二分する情勢の中で「理性が勝利し」「リーダーの英断により」各国は対抗ミサイルを配備しました。ソ連は自分が種を撒いておきながら、いざ西側にパーシングと巡航ミサイルが配備されるとこれを恐れました。日本をはじめ西側の各国に嵐のような「反核」運動を起こさせこれを煽りました。当時の日本で、ソ連の尻馬に乗っているとの自覚もなく「反核」を口にしていたジャーナリストや政治家が多数います。

はっきり言って、ECSCとSS20についてその本質を知らない人に平和を語ってほしくはないという気持ちです。

これから頭に置いていただきたい重要項目としては

3.ランブイエ先進国首脳会議 (75)

4.イラン革命とソ連軍のアフガン侵攻(79)

5.レーガン大統領の登場(81)

6.ゴルバチョフ書記長の登場(85)

7.チェルノブイリ原発事故(ソ連の体制のほころびがはっきりと見えた)(86)

8.レーガンによるSDI(戦略防衛構想=ソ連のミサイルを空中で撃ち落とすという構想)の推進。この競争に耐えきれなくなったソ連が、冷戦の継続を断念したこと

などがあります。これらの間に「ハンガリーに王冠が返ってきた日」(78)が入り、「西側の電波が鉄のカーテンの彼方に届いたこと」が入ってきます。

こうした見方が、ほぼ欧米先進国の知識人のコンセンサスです。以上、日本のメディアが伝えない真実を6回に分けてお伝えしました。あくまで「ご参考」になさってください。

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COMMENTS

1 : Anonymous : September 20, 2009 01:15 PM

CSCE「全欧安保協力会議」からSDI(戦略防衛構想)までの先生のこのところの一連のお話は私の頭の中をすっきり整理して頂きました。有り難うございます。
日本の新政権の外交政策がどんな展開を見せるのか非常に関心が有りますが、オピニオンリーダーを務めるべきべき日本のマスコミは極楽とんぼを決め込んで、酒井法子の報道に明け暮れています。
先週末、アメリカのオバマ大統領はブッシュ前政権が計画していた欧州MD(ミサイル防衛)計画の凍結を表明しました。これは核軍縮に繋がるかも知れない重要な出来事だと思います。
新聞はさすがに国際欄で報じていましたがテレビ局は酒井法子の報道の方が重要事と考えて居たようです。
国民を国際政治に無関心にさせようと言う陰謀ではないかと疑ってしまいます。
廣淵先生のさらなるご活躍に期待しなくてはなりません。廣淵先生、頑張って下さいね!

2 : 湖の騎士 : September 20, 2009 05:01 PM

Anonymous様 コメントをありがとうございます。今回の記事もほとんど記憶に頼って書いたもので、名称(略称)などは錯綜している可能性があります。年号は大丈夫だと思いますがーー。全欧安保協力会議の英語も「Conference on Security and Co-operation in Europe」だとすれば「CSCE」でよかったということになります。それはともかく、たくさんの情報が入り乱れて、どれがどうなっているのか頭がこんがらがっている人が多いと思うのですが、私の書いたものが少しでも頭の整理に役立ったとすれば、こんな嬉しいことはありません。テレビ局のスタッフにも「のりピーばかりやっていないで、もっと死活的に重要な世界のことを伝えてくれ」と言って
はあるのですがーー。

3 : 悠々 : September 20, 2009 10:25 PM

1の投稿は悠々でした。アドレスとか書き忘れました。
早速ご返事頂き有り難うございます。