View of the World - Masuhiko Hirobuchi

February 15, 2010

ケヤキは今は坊主だが -

雨が久しぶりに上がった日曜日(14日)に、久しく訪れなかった近所の公園に行ってみました。そこでなんでもない当たり前の風景に感動しました。この前に見たケヤキ(欅)の大木数本が、ことごとく葉を落として丸坊主になっていたのです。冬になれば落葉樹は葉を落とすのは当たり前なのですが、この外見からはとても4月、5月に青々とした葉をつけるとは信じられないほどの、徹底した丸坊主でした。もし去年の春と夏の若葉青葉の様をこの公園で実際に見たことがない人が見れば、この「なんにもない木々が本当に葉を付けるのだろうか?」と疑いたくなるような、寒々とした光景でした。しかし春は地下で脈々と準備をしており、養分をしっかりと木々に送っているのです。春がかならずまたやってくると信じなければ、人は生きてゆけません。かつて恩師から、「秋になれば稲穂になり米がとれると信じればこそ、お百姓は籾種を撒き、田植えをするのだ」と教えられたことがあります。これもまた「当たり前の話」ですが、「若者もまた未来に実を結ぶと信じて学問せよ」という教えと結びついていたと思います。しかし頭ではいくら分かっていても、寒風の中で、およそ「命」を連想させるものを、いっさい身にまとっていない大木が、あと2か月もしないうちに若葉を繁らせるということを、想像するのは非常にむずかしいことでした。「たしかに去年までは若葉を繁らせた。だが今年ははたして大丈夫なのか?」とつい考え込んでしまうほどだったのです。なぜこんなことをいま書くのかと言うと、大学や高校を出て数年が経つのに、いまだに「これが自分の一生の仕事だ」と思えるような職業に就けていない若者を何人か知っているからです。私の教え子の中にもそういう人はいます。希望をなくし、無力感にさいなまれている人もいます。しかし、身になにもまとっていない木々が、あと数か月もすれば、空が見えなくなるほどの大量の青葉を繁らせるのだと思えば、なにか勇気が湧いてきませんか? 気休めをいう気はありません。無闇に希望を語りたくもありません。ただ荒涼たる風景の中に、今はまったく目に見えない「春の音」をかすかに聞いたという報告だけをさせていただきたいと思います。

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COMMENTS

1 : 悠々 : February 16, 2010 09:00 AM

春の足音が聞こえてくるような今日この頃です。
今日も雪の予報が出ていますが、丸坊主の木々もかすかに枝先をふっくらさせ、ほんのりと赤みも帯びてきています。
自然界は営々として春夏秋冬を繰り返してきたのですし未来永劫に続くはずでした。でもこのところ自然の営みが狂い始めた兆しがありますね。温暖化のせいなのかも知れませんが、今まで通りのサイクルが怪しくなっています。
若者が自分の将来について、確かな未来像を描けないのも彼らの至らなさだけではなく世界恐慌も予測されるような社会情勢も関係していると思います。
でも若者には自信を持って立ち向かって欲しいです。
先生の励ましが力強い味方になってくれるでしょう。

2 : 湖の騎士 : February 16, 2010 10:43 AM

悠々様 コメントありがとうございます。何人かの若者が偶然この記事を見て、自分が木になったつもりで春の来るのを信じてもらいたいと願っています。働きざかりのビジネス人間だって、「次の季節」を信じていなければ、仕事はできません。高齢の方々にも、春はかならずめぐってきます。Viva life! です。

3 : Sako : February 16, 2010 10:57 AM

今将に、あと2ヶ月で社会に出ようとしています。
新生活までのレームダックでだらけていましたが、ピリリとしました。
もう、春はすぐなのですね。


私が生まれた年は、前川レポートが出された年で日本の最も輝ける時でした。
しかし、バブル崩壊後に育った私は、日本の経済の暗い報道しか知りません。

本コラムで、そんな外部環境はどうであれ、春は来るから準備をしておきなさいよと、激励された様に感じました。

話は変わりますが、今月宇野弘蔵の「恐慌論」が出ます。日本の知的文化の底力を発見しました。
そんな日本にも春が訪れる事を願います。

4 : 湖の騎士 : February 16, 2010 01:58 PM

Sako様 前川レポートの年にお生まれで、今まで日本経済の暗い報道しか知らない方とうかがい、あらためてここ二十年くらいの日本の活力のなさを感じました。1980年代の活気あふれる経済を「バブルを退治する」と豪語して潰してしまったのは、時の日銀総裁前野康でした。大犯罪のはずです。しかしメディアも大衆も事の本質を理解せず、日銀担当記者たちは前野氏をヒーロー扱いにしたのです。この大誤謬から早く目覚めないと、日本には明日がありません。せっかく元気が出る記事を書きながら、水を差すようですが、「感情で経済や政治を見る悪弊」を早く断ち切ることです。

5 : 湖の騎士 : February 16, 2010 02:56 PM

Sako様 4番目の私のお礼コメントの中で時の日銀総裁「前野康」とあるのを、「三重野康」と訂正させていただきます。混乱を生じ申し訳ありません。

6 : alien : February 17, 2010 11:13 AM

湖の騎士様 このように力強く「希望」のイメージを描いて見せてくださいまして本当にありがとうございます。私も励まされました。若い人だけでなく日本中全体が、やがて萌え立つような「希望」のイメージを必要としていると思います。
以前、news week 日本語版9月号の表紙を駅のスタンドで見かけた時に、気持ちがズドーンと暗くなりました。濃いねずみ色の表紙に情けな気に震える太い黒文字で「沈みゆく日本」と大書されていました。日々、歯をくいしばって頑張っている人々の目に触れるように、ことさらにこのような暗いイメージを発信するのは、いやがらせとしか思えませんでした。テレビも失業など暗い報道ばかりで、私の周囲の人達も「気分が暗くなるから、思わずテレビを消してしまう」と言っていました。もちろん、厳しい現実から目をそらすことはできませんが、メディアには暗く厳しい現実の報道と気持ちを支える希望的な記事や番組をバランスよく取り入れて欲しいと思います。今は特に、励ますことだってメディアや言論人の方々の大きな役割でもあり社会貢献だと思います。

7 : 湖の騎士 : February 17, 2010 10:10 PM

alien様 この記事をお読みにになって「このように力強く『希望』のイメージを見せて」くれたと仰っていただき、本当にありがとうございます。厳寒の中に春を見ることは難しいですが、「希望」のイメージだけはしっかりと抱いていたいです。それにしてもメディアはもっと肯定的な面も伝えるべきです。倒産とか殺人とかデフレとか気が滅入るようなことが起こっているのは事実ですが、「それほど日本にいるのが耐え難いのなら、いつでも代わってあげます。こちらへいらっしゃい。私どもは集団でそちらへ住まわせていただきます」という国民は世界に20や30はあると思います。いま日本が成し遂げ、皆さんが享受しているような生活は、「夢のまた夢」と映っている国民は多いのです。成し遂げた成果と、いま得ている幸福な生活を見ずに、ナガティブな方向にばかり目が行く人々は、本当に困りものです。そんなに日本がいやなら、とっとと移住すればよいのですが、かつてソ連や中国を礼賛した知識人も政治家もだれ一人そういう「理想の国」に移住しませんでした。ま、過去はともかく、この条件の中で、どのように「春」を呼び込むか、それをご一緒に考えましょう。Now let us begin !(JFK)です。

8 : 自由な石工 : February 18, 2010 12:41 AM

私も将来に不安を感じている一人です。今何をすべきか、また将来何をしたいのか、まったくわからないのです。まるで暗闇の吹雪の中を、行き先も分からぬまま進んでいるかの様です。

今の自分は真冬。しかし、前に進み続ければ”春”が来ると思い頑張って行こうと思います。

余談です。最近私が気になったことを下記に簡単に書いてみました。

JR東海のCMの中で、川端康成の小説「古都」の一節が使用され、”春の義理が済んだ様なものだ”と京都人が言うのです。春の義理。そんな事考えもしなかった私にとっては衝撃の一言でした。何気なく見ているCMですが、私にとっては凄く考えさせられたCMです。
http://www.youtube.com/watch?v=WRgvsC62hoI

9 : 湖の騎士 : February 18, 2010 06:18 PM

自由な石工様 「今何をすべきか」が分からない人はかなりいます。「将来何をしたいのか」が分からない人も多いのが現状です。真剣に努力しても回答が見つからないと、真っ暗な気持ちになるのは無理もありません。「こういう時、人はこうすべきだ」という一般論は本人にとっては役に立たないものです。先輩も教師も親も的確なアドバイスはできません。4年生大学を出てから5年も経って、あらためて専門学校に入り直す人もいます。そうした事例を見ていて感じるのは、「自分に甘い点を付けている」人がかなり多いということです。思考の仕方を変えてみると意外に道が開けるものですが、それをしないで、従来と同じ思考法で問題を解決しようとします。だが回路は同じところをくるくる回るだけで、前進しません。野球選手なら人の5倍から10倍くらい素振りをすることで、初めて打撃というものが見えてきます。しかしサラリーマンの場合はそこまで努力をしません。閉塞状況を世間のせいにするわけにはいかず、苦しいところです。私にできることは、これらケヤキの木のイメージから少しでもポジティブな明日を見てほしいということです。「春の義理」のCMは、意識して見るようにします。非常に厳しいCMのようですね。

10 : メダカ28号 : February 19, 2010 08:30 PM

久しぶりにコメントを書き込ませていただきます。今の日本はまさしく冬のど真ん中にいるような、暗いニュースばかりが目につくようになり、それが半ば当たり前のようになってしまいました。いささかネガティブな考え方かも知れませんが、なかなか前向きになれるような光が見えてこないのが現状のように感じてしまします。
 しかしながら、湖の騎士様のケヤキの話を拝読させていただき、終わらない冬はない。季節は必ず巡って行くものだと、ほんの少し思い出せたような気持ちです。雪解けの季節を信じもう少し顔をあげて歩いてゆこうと思います。本日は、ずいぶん久しぶりに懐かしい「風」を感じることが出来ました。

11 : 湖の騎士 : February 20, 2010 04:19 PM

メダカ28号様 本当にお久しぶりです。冬のようなこの日本の状態を改善し、人々の心の氷を溶かすためには、なんといっても景気をよくし、雇用をふやさねばなりません。それをするのが政治の役目です。しかし与野党とも「民衆の幸福についてのイメージ=具体的に目に見えるイメージ」を欠いています。「財政赤字」を恐れ「財政の健全化」などといっていたのでは駄目です。どーんと思い切った手を打ち、若者が「人生は面白い」「日本で生きているのは楽しい」と思える社会にするために、私も非力ながら言論活動を続けて行きます。どんなご意見でもどしどし書き込んでください。建設的な対話があれば、人はだいぶ元気になれます。