View of the World - Masuhiko Hirobuchi

March 27, 2010

なぜイランが気になるのか -

最近の日本の新聞やテレビでは、政権内のもめ事や米軍基地問題をめぐる迷走ぶりばかりが取り上げられています。こんな時に「イラン情勢が非常に気になる」と言っても、あまり緊迫感はなく、理解もされないと思います。しかしここ数か月、海外のマスコミでは「イスラエルがイランを攻撃する可能性」が頻繁に伝えられています。イスラエルは、国家としての存続を賭けて、イランの「核兵器」を除去しなければならないと思い詰めています。この国はかつて、イラクのサダム・フセインが建設しようとした核開発施設を爆撃して粉砕したことがあります。イランの核がいよいよ完成するという段階になれば、イスラエルは攻撃に踏み切るだろうというのが、欧米および中東諸国の見方です。日本人にとっては、考えられもしない事態ですが、これが現実です。もしイランが核兵器を完成させれば、イスラエルはそれこそ「生きるか死ぬか」の瀬戸際に立たされます。イランのアフマディネジャド大統領は、「イスラエルという国を世界地図の上から消し去る」と再三公言しているのです。さてイスラエルがイラン攻撃を決意したとして、軍事的・技術的にそれが可能なのか。空軍機は途中の給油をどうするのか。他国はイスラエル機の領空通過を認めるのか。最大の支援国であるアメリカの政府・マスコミ・世論の後押しは得られるのか。周辺のアラブ諸国は、こうした軍事行動をどう見るだろうか。攻撃した結果、中東および世界にはどういう混乱が生じるのかーーなどなど誰にも予測がつかない問題が、きわめて複雑に絡み合っています。もしイスラエルが軍事行動に出た場合、日本のマスコミも世論も「戦争はいけない」と反発することでしょう。では「イスラエルがイランの核に脅され、国家として消滅してしまってよいのか?」と聞かれれば「それはよくない」という人が多いと思います。結局どうしてよいのか分からない状態に陥ることは目に見えています。そして大多数の人々は「そんな難しい国際問題は自分の頭ではとても解けない」と、判断を停止してしまい、真剣にこの問題を考えようとしないでしょう。一般の方々の場合は無理もありません。しかし、国政を担う人たち、わけても首相・外相・他の閣僚・与党国会議員が、この問題に対して、はっきりした「理解」をすることが可能だろうか、というのが私の心配です。起こりうる危機に対して日本政府はどう対処すべきかの「行動指針」を持っていてくれとまでは言いません。そんなことは政権発足後半年余の実績を見ていれば到底無理なのは明らかです。対処方法を探る前に、まず「事の本質をきちんと理解し、せめて国際社会の侮りを受けないだけの言動をする準備だけはしてくださいよ」とだけ言っておきたいです。話が大きすぎ、複雑すぎ、地域としては遠すぎる問題ですが、事が一度起きた場合に、迷走したのでは日本の存続が危うくなってきます。為政者の皆さんはもちろん、彼らに一票を投じている国民の皆さんも、平穏がしばし保たれている今のうちに、このことを熟考してほしいと願っています。

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COMMENTS

1 : Sako : March 28, 2010 07:17 AM

モサド元長官の著書「暗闇に身をおいて」において、世界を敵に回しても生き残ると述べていました。

日本のマスコミはアラブ寄りなので、本当はイスラエルの消滅を望んでいる様な気がします。

先日、バイデン副大統領が訪イスラエル時に、ヨルダン川西岸地区の新規住宅建設を承認し、激怒させました。
イスラエルは、やると思えばやるだろうと思います。

2 : 湖の騎士 : March 28, 2010 10:23 AM

Sako様 「暗闇に身をおいて」の著者の記者会見に昨年出席しましたが、とにかく頭の回転が違いました。敵方から見れば、とんでもない危険人物でしょうが、物事をきちっと理解し、情報を分析し、それに基づいてどういう行動を取るのが国益にかなうのかを、冷静に考えている人でした。こういう頭脳の持ち主が日本には本当に少なくなっています。感情や好き嫌いで世界を見ていたのでは、国は滅びてしまいます。日本のマスコミも学界もアラブ派が主流になっています。読者や視聴者は、そこのところをよくよく頭に入れて報道に接してほしいです。