View of the World - Masuhiko Hirobuchi

April 03, 2010

ジェントルマンたちの言葉 My word is my bond. -

ロンドンの「シティ」といえば、世界の金融のセンターとして、何百年も栄えてきた街です。ここには、株式、債権、保険、金属、穀物などあらゆる金融商品を売買する取引所があります。ちょっと古いイメージではシルクハットをかぶり、ステッキを持った紳士たちが闊歩していました。今は郊外の自宅から、電車に乗ってフィナンシャル・タイムズを読みながら通勤する人たちが多い所です。この世界の金融街を支えてきた最も大事な規範というか理念を、短く言い表したのが、「我が言葉は我が証書」(My word is my bond.)という言葉です。たとえばある株を10万株買うというオーダーを出した場合、だれも契約書などは交わしません。この注文を受けたトレーダーは、注文主の言葉を全面的に信用して10万株を買い付けます。買ったからには、それだけのお金を払い込まねばなりません。あとで、その株が急落したからといって、「いや、私は注文しなかった」などといって逃げを打つなどということは許されないのです。まさに一度発した言葉は「証書」なのです。古い言葉でいえば、「男子の一言岩より重し」です。もし、「自分は注文しなかった」などといって逃げた場合、彼は永久にシティの仲間から追放されます。二度とこの街には帰れません。この街を支配するのは、紙に書いた「法律」なんかではありません。書かれているものなんかより、はるかに大切なのは、「信義」であり「信用」です。このことはシティだけにかぎりません。およそ世界で商取り引きをしているすべての人間に当てはまる規範です。もちろんこの規範は昔から、日本でも健在でした。ではなぜ今さらこんなことを記事にするのか? 大方の皆さんはすでにお察しでしょうが、鳩山由紀夫首相の心の中に「我が言葉は我が証書」という道徳観念がないからです。あるいは紳士とはどういうものかについての「教養」がないといってもよいでしょう。「普天間の問題は3月中に政府としての方針を固める」と言っておきながら、いざ3月末が近づくと「別に3月末までと法律に書いてあるわけではない」と言って逃げました。「我が言葉は、人間としての全信用を賭けての言葉だ」という自覚がまるでありません。そんなに簡単に前言をひるがえす男はもはやジェントルマンではないのです。シティの人間なら即座に追放です。鳩山氏は、世界中のジェントルマン(レディを含む)の仲間からは、とっくに追放されているのだと思います。これは日本の安全にとって由々しい問題です。

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