View of the World - Masuhiko Hirobuchi

February 25, 2011

「語学研修は現地で」という思い込み -

ニュージーランド、クライストチャーチで起きた地震に巻き込まれ、いまだに安否が分からない日本の語学研修生とご家族の皆さんのお気持ちはいかばかりかとお察しします。多くの生徒が19歳です。かわいいさかりの幼児期も、賢く成長してゆく思春期も見てこられたご両親、祖父母の皆さま、兄弟姉妹の皆さんと共に希望を抱き続けている人々は何百万、何千万人もいることでしょう。もちろん私もその一人です。ここで過ぎたことを振り返っても仕方がないことですが、私は日本人の間に根強く普及しているひとつの「思い込み」について、考えざるをえません。その思い込みというのは「語学が上達するためには、その言葉が話されている現地へ行かねばならぬ」というものです。はたしてそうでしょうか? もしこういう思い込みがこれほど広く日本に行き渡っていなければ、命を落とさずにすんだ若者もいたのではないかと考えると本当に残念です。悔しいです。英語を国語とするイギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどに留学しなくても、日本にいて十分に英語は身につくのです。むしろ変に留学した人より、日本できちんと教科書をマスターし、英語で書かれた小説や戯曲を読んだ人の方がよほど英語ができるという実例を私はいくつも見てきました。「こういう大惨事の最中にいまさらそんなことを言っても追いつかないよ」とお思いでしょうが、むしろ大惨事の最中なればこそ、「外国語の学習は現地で」という思い込みを、できるだけ早く修正したいのです。異論反論はいろいろあると思います。マスコミも教育者も学生生徒の皆さんも、一度徹底的にこのことを考えてみようではありませんか。学習などはとうの昔に終えられた方々もぜひご一緒に考えてみてください。

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COMMENTS

1 : 悠々 : February 25, 2011 05:25 PM

私も学習などはとうの昔に終えて、英語も頭の片隅に僅かに残っているだけです。
TVや新聞の報道を見ていると被害にあった人達以外にも大勢の学生が勉強に行っているのですね。
私も、何も外国に行って語学を学習しなくても、と思っていますが、行くにしても何故ニュージーランドなのか不思議です。訛りのあるおかしな英語を習っても正しい発音を学習するには得にはならないと思うのです。
思うにこれは、語学学校の修学旅行みたいなもので、ニュージーランド短期留学を客寄せに使って居るのだと思います。
学校の客寄せの甘言に釣られて入学し、被害に遭われた生徒達は気の毒ですが、学校選びはもっと慎重に考え、海外留学を餌にしているようなところは敬遠した方が良いですね。

2 : 湖の騎士 : February 25, 2011 05:54 PM

悠々様 コメントありがとうございます。「外国に行かなければ言葉が上達しない」と思っている人は、「単語を覚えるのが嫌い」「文法は嫌い」というケースが多いです。共に「面倒くさく」「根気が要る」からです。変に外国に行ってやたらに「ユーノウ」などという間投詞(!)を入れるような英語を得意になって話す浅薄な英語使いになってしまう人もいます。文法を憶えるのがなぜ苦痛なのか? 文法というのは言葉のルールを最も単純化したもので、いわば地図のようなものです。その単純なルールも分からない人には知的な英語は身につきません。このことと生徒募集の際の「留学」という惹句に弱いメンタリティは大いに関連があります。もう少し大人になり、物事の本質を深く見極める頭脳の持ち主がふえてほしいものです。

3 : 連太郎 : February 27, 2011 07:37 PM

こんにちは、以前書き込みをした者です。
このサイトのファンですが、今回のコラムには少し意見させてください。
語学は現地でと甘い考えを持った人は沢山いますが、今回の事件と結びつけるのはいささか強引ではないでしょうか。私は、むしろ、現地に行ったから英語が上達すると思っている人は少ないのではないかと思っているぐらいです。
外語専門に行っているような人ならば、なおさら語学の厳しさはわかっていると思います。海外へは、今まで勉強したことの腕試し、アウトプットに使ったのではないでしょうか。
私の友人は、英語を一生懸命勉強して、海外に旅行にいったのですが、とても勉強になったし、その後のモチベーションにもかなり影響したと言っています。
それとニュージーランドの訛りについても、そんなに問題にする必要はありません。確かに我々日本人はアメリカ英語を学ぶので、ニュージーランド英語、もしかしたらイギリス英語すら訛りになるかもしれません。しかし、ちゃんと英語を勉強した人ならば、すぐに慣れ、十分に効果は得られます。高いお金でアメリカ留学するよりも、節約して美しい自然のあるニュージーランドを選ぶのは十分に納得がいきます。

もう一つ私の考えを述べさせていただくならば、私も英語は日本で十分に学習できると思いますし、日本の厳しい受験を乗り越えて英語を学習した人は、日本語もしっかりしています。そういった人は、発音などは日本人訛りで不恰好に見えますが、私は尊敬します。

私のコメントで不快に思ったならば、申し訳なく思います。このような意見もあるということをご理解いただけると幸いです。

4 : 湖の騎士 : February 27, 2011 11:12 PM

蓮太郎様 非常に貴重なご意見をありがとうございました。異論は大歓迎です。私は「現地に行けばなんとかなる」と思い込んでいる人が日本には多すぎることを危惧し、なんとかこの思い込みを直してほしいと思っているだけです。こうした思い込みというのは他にもたくさんあって、2月14日には女性から男性にチョコレートを贈るのが西洋式の習慣だと思うのもそのひとつです。チョコレートにはちょっと危険な禁断のシグナルがあって、こういうことも十分に知っておいてほしいのです。さらに相手の宗教を確かめもせずに、だれかれ構わず「メリークリスマス」というカードを送ったり、この言葉を口にするのはやめてもらいたいと切に願っています。しかしこういうことが正しいのだとか「ちょっとカッコイイ」と思っている人々の思い込みを正すのは容易ではありません。同じように「外国語は現地で」という思い込みを正すのも至難の業です。この記事がそうした風潮に対して何らかの役に立つことを願って書きました。

5 : 連太郎 : February 28, 2011 03:15 PM

拙いコメントに返信いただき、また、寛容な内容に感謝しております。
話している土台、テーマが違うので、会話になっていないかもしれませんが、湖の騎士さまが仰りたいことは理解しています。

今後とも、湖の騎士さまの考えが広く深く世間に伝わることを願っています。

6 : 湖の騎士 : March 1, 2011 11:02 PM

蓮太郎様 ブログ上で「対話」ができて本当によかったです。今回の「留学」については、私の所に直接ご意見を寄せてくださった人もいます。みんなそれぞれに考えがあり、今の日本の状態を心配しているのでしょう。アメリカとイギリスで合計8年を過ごした私の経験からいえば、イギリス人の英語の方がはるかに「聴き取りやすい」と感じました。日本人が英語に自信をなくす大きな原因は、あまりにも「変な早口の英語」を聞きすぎるからだと思います。ゆっくりとした語り口で、構文を考えながら話す知的中産階級の英語を聞けば、自信はぐんとつきます。そのためには留学先の選定がなにより大事です。留学するなら当地の英米人の英語を「査定する必要がある」といったことが早く日本での「常識」になってほしいものです。

7 : niraikanai : March 2, 2011 12:20 AM

今回のニュージーランドの地震については、
ただ残念だという印象しか抱かなかったので、湖の騎士様の
ご意見を読み、ハッとさせられました。

最近は、10年くらい前と比べて留学を希望する大学生が
減ったとNHKか何かで報道していました。
私は「もったいない」と正直思いました。
行けるチャンスがあるのであれば、
ぜひ挑戦すべきだと思いましたし、
私が今学生であれば、留学にきっと挑戦していたと思います。

ただ、湖の騎士様のおっしゃる通り、
「外国語は現地に行くのが一番」と思っている日本人は多いと
思います。でも、それはもしかしたら40代以降の人なのかもしれません。今の学生には、厳しい就職状況などもあり、
留学を考える余裕すらないのかもしれません。

メリークリスマスを外国の人には多用しない、特にユダヤ教徒
の人には注意を、と翻訳学校で教えられました。
まだまだ知らないこと、思い込みが多いです。
このコラムを読むことで、そういった思い込みを少なくしていきたいです。

追記:
私は英会話にはあまり自信がありません。でも、イギリスの
映画等を見ていると、なんとなくわかるのです。
湖の騎士様が書かれていた「ゆっくりとした語り口で、構文を考えながら話す知的中産階級の英語」という言葉に、
少しほっとしました。無理に「流行なかっこいい英語の発音」を目指さなくてもいいのですね。

8 : 湖の騎士 : March 2, 2011 09:49 PM

niraikanai様 おっしゃるとおり若い世代はあまり留学に積極的でないようですね。貴重な事実をお知らせいただきありがとうございました。そういう話を聞くと「どんどん留学してもらいたい」という気になりますが、留学は「学問のために留学する」「友人を作るために留学する」ことを主にすべきです。ただ外国語を身につけるだけなら、私は日本で集中的にやったほうが能率が上がると思っています。それからイギリスでは上流階級はけっして早口で話しません。「トッタリング」といって少し吃音気味に話すのが上品とされ、トッタリング専門の指導員さえいると聞いています。こういうことももっと日本で知られるとよいと思います。「メリークリスマス」というカードを送らないのがユダヤ教徒への配慮だということを、日本で最初に伝えたのは私だと思います。拙著『首はヨコにふってもイエス』の中でそのことを強調し、大学の授業でもこの本を用いてきました。翻訳学校で習われたとすれば、その学校は立派だと思います。私のメッセージが思わぬところで正確に受け止められた思いです。

9 : niraikanai : March 2, 2011 11:16 PM

大学でも、「メリークリスマス」を多用しないほうがいいと
いうことを教えていただいたのですね。
すみません、すっかり失念していました。お恥ずかしい限りです。
「メリークリスマス」の使用法については、
60代くらいの女性講師から教わりました。
(ヘリーン・ハンフという作家の
「チャリング・クロスロード84番地」という作品を学んでいたときです)

翻訳を勉強していると、(英語から日本語だけですが)各国の宗教や文化の違い(teaを「夕飯」の意味でも使う、等)の
大切さに再度気づかされ、はっとします。
自分が日本のなまぬるい文化の中にいるなと思ってしまいます。

湖の騎士様の文章や講演から、今後も様々なよい刺激を受けられることを楽しみにしております。

10 : 職人希望 : March 10, 2011 10:22 AM

先日カンボジアに行ってきました。
シェムリアップ中心に観光してきましたが、なかなか上手な日本語を話す現地の方が大勢います。その中に訪日した経験のある人は皆無でした。
アンコールワットを歩いていると、英語、日本語、中国語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語などさまざまな言葉で現地ガイドが説明しています。おそらくほとんどのガイドが当該国に行ったことも住んだこともないでしょう。

言葉を覚えれば金が儲かる。外国語習得には金銭欲が一番だと感じた次第です。

11 : 湖の騎士 : March 14, 2011 11:31 AM

niraikanai様 翻訳の勉強中に「メリークリスマス」というカードについて、60代くらいの女性講師から「あまり使わないほうがよい」(多分)教わったとうかがい、心強くなりました。だんだんそういうことを教える人が出てきたのだと思います。私がこのことを本に書いたのだ、29年も前のことです。どうか楽しみつついろいろな文化を学んでください。

12 : 湖の騎士 : March 14, 2011 11:36 AM

職人希望様 非常に貴重な現地体験をお知らせいただきありがとうございます。現地に行かずとも外国語ができるようになるという実例をうかがって心強いです。それに外国語を習得しようという動機として「金銭欲が一番」というのも説得力があります。単純明快に真実を言い当てておられます。