View of the World - Masuhiko Hirobuchi

March 03, 2011

中東のデモを「民主化の一歩」とだけ見るのは誤り -

チュニジア、エジプトと相次いで大統領が失脚しました。リビアでも同じようなことが起こっています。ただこの国のカダフィ大佐は、各国のメディアの予想を裏切ってまだ粘り腰を発揮しています。この態度を日本人特有の「正義感」から、「許せない」と見ているマスコミ関係者が多く、日本人の大多数もこうした論調に影響されています。しかし問題はそう簡単ではありません。リビアでは、部族長の影響が信じられないほど強く、この国の帰趨を決めるのは部族長たちだといっても過言ではないそうです。その部族長の何人かがカダフィに見切りをつけ反旗をひるがえしています。彼らはけっして政府側が正しいかデモ側が正しいかという基準では動きません。どちらが力があるか、どちらの味方をするのが有利なのかで動きます。「正か邪か」でなく「有利か不利か」で動くのです。当たり前といえば当たり前の話です。たしかにカダフィの退陣を求めている人々の中には、40年以上にわたる圧政に耐えかねて純粋に自由を求めて抗議しデモをしている人々もいます。しかしこうした勢力を煽り、まったく別の政治的狙いをもって活動しているグループもいるのです。そうしたグループの一つが、AQIM(イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織)だということを、2日の朝日新聞15面で小松啓一郎(コマツ・リサーチ・アンド・アドバイザリー代表)という方が語っています。日本のいわゆる中東専門家たちの定型化した物の見方とはひと味違った新鮮味がある意見です。小松氏によれば、AQIMはフランスでのイスラム女性に対するブルカ着用規制に反発し、フランスと近いチュニジアをまず狙ったそうです。リビアのカダフィも、ここ数年親欧米路線を取ってきたために、イスラム原理主義のAQIMおよびアルカイダ本体に狙われたというわけです。そうだとすれば、そのカダフィの力を殺ごうとしているオバマ政権は、なんにも事の本質を理解していないことになります。ブッシュが思い込みによりイラクに侵攻しサダム・フセインを葬り去ったのと同じような過ちを、民主化という美名が大好きなオバマークリントン・ラインが犯しているのかも知れません。「複眼的思考」が必要だと思い、ご参考までにこのオリジナリティある意見をご紹介する次第です。

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COMMENTS

1 : 悠々 : March 4, 2011 10:37 AM

チュニジア、エジプトに始まってリビアにも及んでいる一連の動きは、ベルリンの壁崩壊などの東欧の変革と同一視することは出来ないと思います。
今の報道を見聞きしていると、民衆が民主化の為に行動を起こしている、と言うように感じられますが、チュニジア、エジプト、リビアの動きはどうも影にな何かが蠢いているように思えてなりません。
アラブ民族の思考形態は(スラブもそうですが)我々の思考形態とは全然違う物だと言うことを頭に入れておく必要があります。

それにしてもマスコミは相変わらずミーハー的報道をやめませんね。
今朝の朝日新聞の第一面トップは予備校生のカンニング問題でした。
この事件は一個人のカンニングという幼稚な行動なのですから三面に一段見出しで充分だと思うのです。

2 : 湖の騎士 : March 5, 2011 03:04 PM

悠々様 貴重なご意見をありがとうございます。リビアの民衆は武器を持って政府と対立しています。こうなるとこれはもう内戦といえるでしょう。大国はいずれの側に味方すべきか、むずかしいところです。西南戦争やアメリカの南北戦争に似たことが、今リビアで起こりつつあるのかも知れないのです。とにかくあまりにも理想主義に陥ったり、「正義はこちら側にある」ときめつけないことです。さてカンニング予備校生の問題は、おっしゃるとおり3面あたりで軽く触れるだけで十分だと私も思います。こういうものばかりトップに持ってくると、世界で起こっている大事なことがまったく見えなくなってしまいますから。

3 : 悠々 : March 5, 2011 09:27 PM

カンニング予備校生の問題について先生も同じご見解と伺い、心強く思いました。
新聞の一面TOPを軽く扱う新聞人の資質を疑います。

4 : 湖の騎士 : March 6, 2011 10:20 AM

悠々様 とにかくあの予備校生の事件は一過性の問題で日本社会全体をゆるがすような大問題ではないはずです。ところが新聞もNHKも、こういう「いわゆる社会部ネタ」が大好きです。こういうニュースがトップに出てくると、読者や視聴者は日本および世界で起きている重要な事柄に対する判断力を失ってしまいます。その結果は政治に対してもミーハー感覚で見るようになってしまい、愚かな候補者に投票します。その挙げ句は自分たちを苦しめる政権が誕生するという悪循環です。簡単には行きませんが、多くの人が声を挙げて、こういう報道に厳しいご意見をお寄せになれば、少しは世の中がよくなると思います。コメントありがとうございました。