View of the World - Masuhiko Hirobuchi

July 11, 2011

パラソルとシャボン玉 -

今朝の「おひさま」(NHK)で、「もしも月給が上がったら」という昭和の初期か大正時代の流行歌を歌うシーンが出てきました。元歌では「もしも月給が上がったら、私はパラソル買いたいわ」と妻が歌い、夫がたしか「ボクは背広とネクタイだ」と続けます。この時代の気楽で幸福なサラリーマン生活を歌ったものです。ところが「おひさま」では、出だしが「もしも月給が上がったら、私は洋服買いたいわ」となっていました。推察ですが、「パラソル(日傘)」という言葉が今はもうほとんど使われていず、視聴者には分からないだろうという配慮が働いたものと見えます。また傘の値段は今ではずいぶん安くなり、大正時代のように「月給が上がったら買う」というような高級品ではなくなったからとも考えられます。しかしべつの推理も可能です。パラソルというフランス語がだんだん力を失ってきたのではないかということです。「パラ(ーーに対する)」と「ソル(太陽)」という合成語の意味が分からなくなっている人が多いことも一因でしょう。そういえば昔の日本人が使っていた「シャッポ(シャポー=帽子)」というフランス語も最近はとんと耳にしません。こういう言葉を使う人は、いかにも「昔人間」のイメージで見られるようになってきました。ではフランス語そのものが人気を失っているのかといえば、そうでもないようです。子供たちの間では「パティシェになりたい」という子がふえています。この方が「ケーキ屋さん」というより、はるかにカッコイイらしいのです。衣料などの店は「ショップ」よりも「ブティック」です。同じフランス語でも、あるものは古くさいと見られ、あるものは「カッコイイ(今風だ)」と見られているのです。そこで考えたのは「思想や価値観の領域でもかつてカッコよかったものが今では古くさく見られ、逆にあまりかえりみられなかったものが、にわかに人気がでているといったことはないのだろうか? ということです。ここまで話をもってくると、疲れてしまう方が多いと思います。ここらでお口なおしをしましょう。
時代がいかに移ろうが、日本人の気まぐれな好みがいかに変わろうが、これに代わる言葉はまず出てこないだろうというフランス語と日本語の合体語はなにか? それは「シャボン玉」です。石鹸を「シャボン」という日本人はもはやほぼ絶滅しました。これは「サボン」というフランス語あるいはポルトガル語です。それこそ「南蛮渡来」の言葉でした。しかし「サボン」本体はまったく使われなくなっても、そこから派生した「シャボン玉」は今も健在です。いくら英語が力を得てきても、これを「ソープ玉」とはいいません。時世時節がいかに移ろうと、シャボン玉は日本語として永遠に生き続けるでしょう。暑い日に涼を呼ぶ一席の小咄になればと思いましてーー。

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COMMENTS

1 : 通行人 : July 11, 2011 11:22 AM

ははは・・笑いました。「ソープ玉」は風俗用語かと思いますね。

2 : 悠々 : July 11, 2011 04:38 PM

NHKの帯ドラのディレクターはきっと神様みたいな人なのでしょうね?
♪シャボン玉の著作権は切れていたとしても、原作者が書いた言葉はオリジナリティーがあり、後世のものが勝手に変えてはいけないです。

3 : 湖の騎士 : July 12, 2011 10:33 AM

通行人様 楽しくお読みいただけたようで、ありがとうございます。「ソープ玉」にそういう解釈(?)も可能とは気付きませんでした。

4 : 湖の騎士 : July 12, 2011 10:47 AM

悠々様 コメントをありがとうございます。NHKの連ドラの制作者は、史実でもなんでも平気で変えてしまいます。それを著作権に対する冒涜などとは全く思っていないようです。今回の改竄(?)は軽いノリでパロディのつもりだったようですが、それにしても「パラソル」という言葉が醸しだす「時代の心」というものを無視するのは、いただけませんでした。