View of the World - Masuhiko Hirobuchi

July 31, 2011

カジキとマグロ、綺羅と星 -

巷ではカジキマグロという言葉をよく耳にします。多くの人はこれは「マグロの一種」だと思っています。お恥ずかしいしだいですが、私もつい先日までそうでした。だが、いま売り出し中の「さかなクン」によるとカジキとマグロは本来べつの魚だそうです。ではなぜ「カジキマグロ」とくっつけて呼ばれるのかというと、そこには歴史の悲劇があった。昭和30年代のこと。「ビキニ環礁」でアメリカの核実験で被爆した第五福竜丸。この事件以来、かの水域ではカジキ、マグロ共に獲れなくなった。ラジオは連日「カジキ、マグロが獲れなくなった」と伝えているうちに、カジキとマグロの間にあった「、」が取れてしまった。リスナーはしだいに「カジキマグロ」という魚があるのだと錯覚するに至ったのだーーということです。7月22日号(たしかだと思いますがーー)の「週刊朝日」、林真理子さんとさかなクンの対談に載っていました。これに似た「言葉の混乱」はたくさんあります。正しい日本語を知っている方が、「綺羅・星(きら・ほし)のごとく」と言うと、すかさず「キラボシでしょう」という人がいます。「間髪(かん・はつ)を入れず」というと、「カンパツを入れず」と言い直す人がいます。しかし少しオールドファッションと思われている前者が正しいのです。綺羅と星は元来ちがうものです。カジキとマグロがちがうように。かくて正しい日本語はしだいに駆逐されて、偽物が大手をふって通用しています。人間もまともな人は肩をすぼめて世の中を渡り、インチキな人が大手をふってのし歩いています。その「インチキ人間の頂点に立つ人はだれか」とまでは言いません。皆さんとっくにご存知だからです。

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COMMENTS

1 : 悠々 : August 1, 2011 08:05 AM

綺は綾織りの絹織物の事で、羅は薄織りの絹織物の事だそうです。総じて美しい衣服全般を意味し、転じて高貴なものや人を差す言葉になりました。綺羅、星のごとく、、、が正しい用法ですね。
マグロに関しては先生のご指摘のことから誤用が始まったのかも知れませんが、私はむしろマグロ人気にあやかって、漁業関係者が故意に誤用を広めたのではないかと思って居ます。
カジキはカジキ、メカジキ、などと区別して呼ばれていたのを下にマグロを付けてしまったのですね。
カジキとマグロは別種の魚だと思います。
今でもカジキのことをトンボなんて行っている地域もあり、正直な漁業関係者はきちんと区別しています。
マグロはインドマグロ、クロマグロ(本マグロ)辺りがまともなマグロなんだと思います。
人間の偽物に関しては私には論じる資格はなさそうですから引き下がって居る事にします。

2 : 湖の騎士 : August 1, 2011 10:27 AM

悠々様 ひとつの記事を受けてこれをふくらませ、深く掘り下げていただきありがとうございます。綺と羅についてのご説明は非常に貴重です。カジキマグロに関して「漁業関係者が故意にご用を広めたのではないか」とのご指摘は鋭いですね。話はだんだん広がりますが、大した政治家でもない者をあたかも正義の味方のように持ち上げたマスコミの罪は重いです。カジキとマグロの混同などよりもはるかに悪質で、日本そのものを滅ぼしかねない「偽者」が永田町にいます。