View of the World - Masuhiko Hirobuchi

December 17, 2011

203高地と野田政権 -

司馬遼太郎の原作をドラマ化したNHKの「坂の上の雲」はいよいよ大詰めを迎えました。11日は日露戦争の陸戦の中で最も熾烈だった旅順要塞の攻防と203高地をめぐる戦いが放送されました。乃木希典大将が率いる第三軍がロシアの難攻不落とされた旅順の要塞を正面から攻撃し、日本軍はおびただしい死者を出します。それでも乃木は作戦を変えず、死者の数は増すばかりでした。旅順港の外に停泊する日本海軍はいらいらしながら戦況を見詰めています。満州軍参謀総長の児玉源太郎も同じでした。戦争の全体が読める人には、旅順の要塞を落とすことが目的ではなく早く防備の手薄な203高地を落として、そこから砲撃を加えれば、湾内のロシア海軍に甚大な被害を与えることができ、要塞を落とすこともはるかに容易になることが見えていたのです。しかし乃木と彼の参謀たちは作戦を変えず、いたずらに死者の数をふやしてゆきます。「このままでは国が亡びてしまう」という危機感を抱いた児玉は、ついに立ち上がり、現場の指揮権を自分が握ることを決断します。乃木の顔をつぶさないように気遣いながら、彼は乃木を説得し、しばらく彼を休ませます。新しい事態に面した乃木の参謀たちは、児玉の作戦に異を唱えます。児玉は彼らを一喝します。「諸君は昨日の専門家かも知れんが、明日の専門家ではない」と言い放ち、「硬直した頭をもっと柔らかくしろ」と言います。かくて児玉司令官のもと、攻撃は203高地の奪取に集中し、日本軍はついにこの要衝を手に入れます。児玉の命令の下、山頂から大砲がロシア艦隊に向けて発射され、ロシア艦隊は甚大な被害を受けます。ここから日本にとって、今までとはまったく違う展望が開けてきます。
こうした画面を見ていてつくづく感じたのは、「乃木のやったことと野田内閣のしていることはなんとよく似ていることか!」ということでした。乃木は他の選択肢をいっさい考えず、ひたすら旅順要塞を陥落させることだけに集中しました。しかし児玉は旅順要塞を落とすのは戦争に勝つためであり、そのためにはロシア軍の手薄な203高地をまず攻めるべきだという柔軟性とより大きな戦略眼を持っていました。野田総理の頭には「財政再建」しかなく、そのためには「増税しかない」と思い込んでいます。乃木の硬直ぶりと実によく似ていると思いませんか? 日本がいま必要としているのは、「経済を刺激しそのために財政出動をし、企業と国民を富ませれば税収は必然的にふえる」という柔軟な発想ではないでしょうか? 一度頭をそっちの方に切り替えればよいのです。しかし財務官僚たちに完全に洗脳されてしまった野田総理には、そういう積極的で陽性な施策というものが思い浮かばないのです。彼を洗脳している官僚たちに「諸君は昨日の専門家かも知れないが、明日の専門家ではないのだ」と一喝できる人物がほしいところです。結局彼らを一喝するのは「世論」であり「総選挙」だと思います。「坂の上の雲」を見て「乃木さんの硬直ぶりと俺の硬直ぶりは実によく似ているな」と思えるだけの頭の「切れ」が、野田総理にあればなあーーと思わずにはいられません。

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COMMENTS

1 : 悠々 : December 22, 2011 10:27 AM

野田総理に限らず、最近の方は「空気を読む」と言う事には熱心で、読めない奴は遅れているという評価を受けるようです。
内閣の中にもその風潮が蔓延しているのでしょう。
その空気は国会村の汚れきった空気ですから困った話です。
民主党は官僚支配から脱却するというのが、政治公約だったはずですが、公約は次々に破棄されています。消費税しかりです。
重要な公約を変更するならば、選挙で信を問うというのは政治家として当然の責務です。
坂の上の雲は見ていませんが、歴史から学ぶ事は多いはずです。

消費税を増税するなら、インボイス方式を採用すべきだと私は思っています。消費税の高い国の話をして日本は低いから、と言いますが、それらの国の多くはインボイスです。
今のnet社会ならインボイスするのにたいした手間は掛かりません。レジをnetで結び、国税庁のコンピュタに繋げば済む話です。

2 : 湖の騎士 : December 22, 2011 09:00 PM

悠々様 コメントありがとうございます。私の憂えているのは、野田内閣が「増税」以外のことをまったく考える能力がないということです。消費税を増税するとして、そのテクニカルなこと(ご提案のような)を云々する前に、「まず景気をよくしてからやろう」という発想が皆無な点が心配です。北朝鮮をはじめ外国でどんな大きな変動が生じていても、それにどう対処するかなどということは考えていないようです。こういう頭脳では、この難局は乗り切れません。発想の転換を求めても無理でしょう。退陣してもらうしかありません。