View of the World - Masuhiko Hirobuchi

January 30, 2012

大根とハムの共通点 ミーハードラマを斬る -

横浜での講演会は、おかげさまで盛況裡に終了しました。その席でのごく一部を再現させていただきます。まず私が気楽なクイズとして「大根とハムの共通点とはなんでしょうか?」と問いかけました。皆さん「はてなんだろう?」という顔をしていました。中に一人勇気ある女性がいて「両方とも生(なま)で食べられます」と答えました。たしかに正解ではあります。しかしもちろん私の意図したものではありません。ここであまりもたついているわけにはいかないので、用意した正解を披露しました。それは「下手な役者」ということです。日本では下手な役者のことを「大根役者(縮めて「大根」)といいます。英語でこれに当たるのが「ハム」です。大根というのは、どんなものと食べ合わせてもけっして「当たらない」(中毒にならない)食べ物だそうです。そこから「けっして当たらない(ヒットしない)役者」のことを「大根役者」というようになりました。英語の「ハム」は「ハムレット」から来ているという説が有力です。英語圏の役者は、やたらにシェイクスピアの名作『ハムレット』の主人公の役を演りたがります。青春の苦悩の代表的名せりふとなっている、かの「To be or not to be」を一度いってみたいと思うのです。しかし深刻ぶりすぎたり、力が入りすぎたり、悲壮感を漂わせすぎたりして、観客にしてみれば「聞いちゃおれん」となります。こういう西洋版「大根」のことを、ハムレットの名を取って「ハム」というようになったそうです。さて、ここからが本題です。近ごろの日本のテレビドラマでは、権威に反逆するあまりやたらに絶叫したり、小汚い身なりを強調したりする「大根役者」が多すぎはしませんか? 権威に逆らうために、粗暴な言葉を乱発したり、わざと汚い扮装をしたりするというのは、ずいぶん幼稚なメンタリティであり、そういう主人公を「カッコイイ」と思って使ったりそういう演出をするディレクターもまた稚ない精神の持ち主といえるのではないか。彼らは自分の価値観で実際の歴史にはない話の筋書きを作り、日本の歴史を歪めている。こうしたドラマを見せられて成長する日本人は、精神的にずいぶん幼稚になっていく。去年の「江(ごう)」といい、今年の「平清盛」としい、大根役者による「ミーハー的歴史観」が、日本人の発想を貧しいものにし、日本の活力を奪っているーーといったことを語りました。反論もおありでしょうが、今の複雑な世界を理解するためには「ミーハー主義」からの訣別が急務だと思い、こういうイントロ部分を用意した次第です。

[Post a comment]

COMMENTS

1 : 悠々 : January 31, 2012 09:21 AM

ハムと大根のお話しは意表を突かれました。面白かったです。
日本のテレビドラマの世界にはハムと大根がこれでもかとばかりにしのぎを削って居ます。公共放送のドラマも例外ではありません。私は最近日本のテレビドラマは見なくなってしまいました。
つまらないしばからしいから時間の無駄だと悟りました。
ご講演お疲れになった事でしょう。
楽しく有益な時間が過ごせました。ありがとうございます。

2 : 湖の騎士 : February 2, 2012 11:25 AM

悠々様 コメントをありがとうございます。講演会にご参加いただき心から御礼申し上げます。大河ドラマというのは、なぜあれほどお金をかけながらつまらないのか? 「制作者(脚本家・ディレクター・俳優)の価値観と美意識が幼稚だから」だと思います。もっと「公金を使って仕事をさせていただいている」という意識を持てば、もう少しましなものができるはずです。どうも制作者の「傲り(驕り)」が鼻につきます。