View of the World - Masuhiko Hirobuchi

June 01, 2012

円高危機・むしろ有害な安住発言 -

すさまじい円高が続いています。1ユーロが96円台というのは、11年半ぶりとか。もちろんドルに対しても恐怖の円高です。1ドルあたり1円円高になるとソニーで年間60億円、トヨタで90億円の利益が吹っ飛ぶといわれています。日本経済全体への打撃ははかり知れません。これに対して安住淳財務大臣は、ペーパーを読みながら「この価格は日本経済の実体を反映していない。必要とあれば政府・日銀は断固とした措置を取る」と力説しました。「何を言ってるのだ!」「あなたは今までに何回、『断固とした措置を取る』と断言したのか!」と問いたいです。彼の頭の中には、財務官僚から吹き込まれた「国際投機筋は悪だ」という思想が根を張っているようです。投機筋というのは、経済の実態がどうであろうと、円買いを仕掛けてくる許し難い連中だ」という思想に凝り固まっており、我ら正義の味方が断固として立ち上がれば、この戦いに勝てる、と思い込んでいます。だが投機筋というのは、今の「国際ルールの中で認められた合法的なプレーヤー」なのです。これを排除して日本だけが固定相場に戻ることなどできっこないのです。投機筋ももっと地道な金融マンたちも、安住財務相の発言を聞いてあざ笑っていると思います。「ああ、この男は何も分かっていない」と完全に足許を見ています。こういう発言は「何の効果もない」どころか、むしろ「きわめて有害」だと思います。企業の血の滲むような苦闘への理解力があれば、こういう発言はできないはずです。この人が力めば力むほど日本の苦悩が増してゆく感じです。

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COMMENTS

1 : Sako : June 2, 2012 07:23 AM

財務大臣より日銀が問題です。
金融緩和をせず、デフレを放置し続けています。
デフレの悪さは、
実質金利=名目金利-期待インフレ率
なので、外国と比べ実質での金利が高まり円が買われるからです。
金融緩和をしているふりをしていますが、前年同月比でマネーサプライは寧ろ減少しています。

日銀法を早く改正してほしいです。

2 : 湖の騎士 : June 2, 2012 10:51 AM

Sako様 ご指摘については私も同感です。日銀の罪は実に深く三重野康総裁のころからどれだけ「国富」を失わせたか、はかり知れません。問題は日銀法の改正に着手するだけの哲学・ヴィジョン・ガッツ(胆力)が今の政党にあるのかということです。しかし日銀の悪をこのまま放置しておくわけにはいきません。かれらのサボタージュを告発する論客(三橋貴明、田村秀男ほか)たちを励ましたいです。私はささやかながらその努力をしています。安住財務相を責めるのは、彼がテレビカメラに向かってしゃべる言葉が、いかにも幼稚であり、これが日本の評価を著しく損ねているからです。

3 : 悠々 : June 3, 2012 09:04 AM

円高はとどまるところを知らないような勢いですが、ロシアテレビの報道では、ルーブルがユーロに対して安値の急坂を転げ落ちていると報じていました。
とすると円とルーブルの価格差は更に大きいと言うことになります。ルーブル安の原因は石油価格の下落に起因するらしいのですが、円に対する仕手筋の魔手がルーブルにも及んでいるのではないかと考えられます。
この仕手筋の摩周に対しては日本一国だけで対応するのはかなり難しいと思いますが、アメリカやユーロ圏の協力は得られないでしょうから、孤軍奮闘するしかないのでしょうね。
安住淳財務大臣にしても日銀にしても打つ手がない、と言うのが現状だと思います。
高い円を活用してロシアから物を買いまくるなんて手も、ロシアからは石油と天然ガスくらいしか買う物は無いし、そのどちらも備蓄するのは設備が必要ですからね。
どんないい手があるのか、先生のお話をお聞きしたいです。

4 : 湖の騎士 : June 4, 2012 11:00 AM

悠々様 コメントありがとうございます。まず「ルーブル安」ですが、元々ルーブルは国際市場では「ハードカレンシー」(兌換性のある通貨)として認められていませんでした。冷戦時代、ソ連の盟友であるはずのチェコやハンガリーへルーブルを持っていっても、銀行は絶対に現地通貨には換えてくれませんでした。通貨として信用されていなかったからです。この「うさん臭さ」の感覚を、通貨取り引きに携わる人々は今も抱いていると思います。ロシアの経済が石油高騰のおかげで一時相当によくなりましたが、まだまだ「国としての信用」は得ていないのが実情です。ルーブルが下がるのはある意味で当然です。「国際的な仕手筋の魔手」という考えは取らない方がよいと思います。むしろ「マーケットは正直だ」と思った方がよいでしょう。
さて肝心な「円」です。この円高に対して「打つ手がない」と思うのは一部の人々の考えです。打つ手はあります。まず「円安にすることが日本の国益にかなう」という哲学を、政府も日銀も持つべきです。日銀がもっともっと通貨を市場に供給して、「日本は円安を追求しているのだ」というはっきりしたメッセージを世界に向けて発信することです。これができていません。アメリカFRB(連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキ理事長は、はっきりした方針に基づいて通貨を大量に発行し、「ドル安」になるように全力をつくしています。この方策が実を結びつつあり雇用の促進、景気の回復に大きく貢献しています。FRBと日銀のトップの差はまことに大きく、これが経済に及ぼす影響の違いは歴然としています。性格がケチな日銀マンたちを持っていることが日本の大きな不幸です。この点については、田村秀男氏(産経新聞編集委員)の近著『財務省オオカミ少年論』(産経新聞出版社)をぜひご一読ください。この人と三橋貴明氏の一連の著作が参考になると思います。三橋さんは前の参院選に立候補したくらいの気鋭の論客で、時々「TVタックル」(テレビ朝日系月曜夜9時)に出演しています。