View of the World - Masuhiko Hirobuchi

January 21, 2013

首相ベトナム訪問の意味 -

アルジェリアで起こった悲劇について書きたい気持ちは強いのですが、それより前から考えていたことを書かせていただきます。安倍晋三首相はなぜ就任後最初の外国訪問先にベトナムを選んだのか? ということです。複数のメディアが「中国を牽制する包囲網を築くため」という趣旨のことを伝えました。中国はこの報道に基づいて怒りを表明しています。しかし対中国包囲網などというものは、そう簡単に形成できるわけがありません。それでも中国にとって、ベトナムは苦い記憶に彩られた「痛恨の地」なのです。日本人の大多数はとっくに忘れているか、あるいはまったく気にもとめていない事件が中国とベトナムの間で起きたのは1970年代の終わりでした。中国はベトナムが簡単に言うことを聞かず時に反発してくることに業を煮やし、「ベトナムは生意気だ」「懲罰を加えねばならない」と公言し、ベトナムとの国境にある友誼関を越えて軍隊を侵攻させました。しかしベトナム戦争でアメリカと戦い、実戦経験を積んだベトナムの将兵は中国軍よりもはるかに優秀でした。武器も近代化されていました。中国軍は手痛い敗北を喫して引き下がりました。以後の中国は軍事予算を大幅にふやし兵器と組織の近代化に邁進しました。今ではアメリカ以外のどこの国にも負けないという自負を持っています。問題は隣接する主権国家の言動を「生意気」と見たり「懲罰を加えねばならぬ」とする精神構造です。このメンタリティは今も続いており、一層強化されています。日本のように憲法上の制約があり、マスコミ・野党・世論が政府を自由に批判する国は、中国にとって全然怖くない存在です。「日本は生意気だ。懲罰せねば」と考えていると見るべきです。尖閣の危機は日本人が思っているよりはるかに深刻です。安倍首相がまさか「中国軍を打ち負かしたベトナムに教えを請いに行った」とは思いませんが、三十余年前の経験についてベトナム首脳と話を交わした可能性は十分にあります。中国の不快感表明の背後には、この時の敗北の記憶が当然働いていると思います。

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COMMENTS

1 : 団塊世代 : January 24, 2013 10:26 PM

インドネシア独立には母国に帰還せずインドネシア独立の為に戦った日本軍人たちが居たことを知っています。ベトナムでもそうだったのかも? 宗主国オランダを追い出たインドネシアのようにベトナムでもフランスを追い出そうと活躍した日本人がいたかもしれないですね。

2 : Sako : January 25, 2013 12:38 PM

ベトナム訪問の意味が分かりました!
ASEAN3カ国中、最も経済的に厳しい国です。ベトナムではなく、フィリピンに行くべきだろうと思っておりました。

日経を見ると、インドネシア・ミャンマーへの記事が増えています。
フィリピンは注目されていませんが、フィリピンの株価指数は過去最高を何度も更新するなど、今アジア圏でもっとも元気のある国です。

今回の訪問にフィリピンが加わらなかった事は残念です。

3 : 湖の騎士 : January 25, 2013 03:57 PM

団塊世代様 コメントありがとうございます。インドネシアの独立に果たした日本人の功績は多大なものでした。これを扱った評判の映画はまだ見ていませんが、オランダ人は今でもこれをもって日本を憎み恨んでいるそうですね。インドシナでもフランスを追い出したのは日本軍でした。ディエンビエンフーで仏軍が壊滅的敗北を喫するのはそれから数年後ですが、ベトナムの人々は日本に深く感謝していると聞きます。日本がしたことの内、よいことはよいこととして客観的に教える教育が必要です。

4 : 湖の騎士 : January 25, 2013 04:01 PM

Sako様 フィリピンの株価が高値を更新しているのは、まことに喜ばしいことです。これで多くの人たちが自国の経済に自信を抱き金持ちになってくれることを祈っています。安倍首相は近くフィリピンも訪れると思います。第一回目にベトナムを選んだ狙いは、ほぼ私の推測どおりだろうと思っていますがーー。