View of the World - Masuhiko Hirobuchi

March 02, 2013

Pope(法王)と Hope(希望、ボブ・ホープ) -

40年ほど前のこと。場所はロンドン、ハイドパークのスピーカーズ・コーナー。ここは英国王室についての批判や中傷を以外は何を言っても官憲に妨害されたり、逮捕されたりすることはないという、「自由な言論が保証されている場所」です。ただ政治や社会現象についての意見を述べるというだけでは受けません。聴衆を楽しませ、思わず唸らせるようなユーモアと鋭い切れ味のある言葉が必要です。とにかく弁舌には自信のある話し手が集まって来るのですから競争は激しい。彼らの吐く名せりふの中で、ひときわ鋭く胸に突き刺さった言葉がありました。それは In America, they have Nixon and Bob Hope. In Italy, they have Pope, but no hope.  というものです。「アメリカにはニクソン(大統領)とボブ・ホープ(有名な喜劇役者)がいる。イタリアにはポープ(ローマ法王)がいるが、希望(ホープ)はない」という意味です。ここはポープとホープの語呂合わせを楽しむしかありません。あまりむずかしく考えると疲れてしまいます。「アメリカには国のトップとしての大統領と、ボブ・ホープという役者がいる。イタリアでは最も有名で影響力のある法王がいる。だがイタリアには希望(ホープ)はない」というものです。当時もいくつもの政党が入り乱れて国は統治不能のようになっていました。ロンドンの住民の目には「イタリアには希望がない」と映ったのでしょう。しかしイタリア人はそんなことは気にしていない。地中海的な明るさの中で、「明日はなんとかなるさ」と思って暮らしていると塩野七生さんは言います。法王が退位して、過半数を制する政党がいないイタリアは今後どうなるのか? 日本人の当面の関心としては、「政治と経済の混乱が続いてあまりユーロが安く(円が高く)なってもらっては困る」といったところでしょうが、はるか昔に聞いたこの言葉がいままた新たな現実味を帯びてよみがえってくるこのごろです。

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COMMENTS

1 : 悠々 : March 4, 2013 11:58 PM

私は3年ほど前にバチカンを訪れました。
人の行かない場所が好きだから適当に入っていったら、なんとそこは歴代の法王が葬られている墓場でした。(地下にあります)
墓地ですから何となく薄気味悪い感じです。
亡くなったばかりの法王様の墓もありました。
ポープの亡霊はさまよって居たかもしれませんがポープは感じられませんでした。世界に君臨した法王の墓も死んでしまえば信徒以外には不気味な場所に過ぎません。私にはホープは感じられませんで居た。イタリアには現世にも来世にもポープはないのかもしれません。
場違いなコメントお許し下さい。

2 : 湖の騎士 : March 5, 2013 09:49 AM

悠々様 コメントありがとうございます。場違いなどころか、非常に現実感のあるお言葉です。こういう体験はだれにでもできるものではありません。墓場は人間の命、時の悠久さ、天地の巨きさなどいろいろなことを考えさせますね。私はロンドンでこの名スピーチをした人が、今ごろどこで何をしているのかが気になります。かつて亡命中のレーニンもスピーチをしたところですから、案外このスピーカーもどこかで革命をやったり大富豪になったりしているのかも知れません。