View of the World - Masuhiko Hirobuchi

March 20, 2013

「ブリュッセルが悪い」という感情 -

今週18日(月)から20日にかけて、日本のテレビは何度も「キプロス危機」を伝えています。今までほとんど注目されることもなかった地中海のこの島国が、ヨーロッパ全体の金融危機の発火点にもなりかねないと見られているのです。この国の銀行に預けられている預金に、最低でも6.9%の税金がかけられることになった。これは税金というよりもまさに「強盗の仕業ではないか」ということで、国民は強く反発しています。国会ではこの案を実行に移す法案は反対多数(賛成は一票もなし)で否決されました。しかしこの案が通らないとキプロスはEU(ヨーロッパ連合)からの金融支援を受けることができません。果たして政府・議会・国民はこの危機をどう乗り切るつもりなのか? この危機のニュースを受けて、18日の日本の株式市場は大きく値下がりしました。19日は急落した分の三分の二ほど値を戻しましたが、明日以降については予断を許しません。さてこうした混乱の中で、キプロス人の何人かが「ブリュッセルが悪い」と口々に叫んでいました。この言葉には少し解説が必要だと思います。EU各国の国民の多くは、かねてからEU本部のあるブリュッセル(ベルギー)のEU官僚たちのすることを快く思っていませんでした。エリート意識が強く、自分たちがEUを引っ張ってゆくのだという自負心が言動の端々にあらわれるのは鼻持ちならぬと感じている人が多いのです。日本人は、「各国政府の上にもうひとつ政府があるEU」というものを、どうしても理解できないようです。たとえばイギリスの会社が新製品の開発などで、政府の認可を受ける場合に、ロンドンの政府に陳情するのかブリュッセルの政府に陳情するのかで、悩むことがあるそうです。過去20年以上の経験の蓄積によって、そこのところは各社ともうまくさばいているのでしょうが、屋上にもうひとつ屋があるというややこしさ、非能率さというものを、日本人は想像できません。しかしEUのエリート官僚たちは、国民感情に配慮しすぎたり、個々のケースを重視したりしているとEUという組織全体が機能しないという観点から、時に割り切って非情ともいえる政策を打ち出してきます。今回のキプロスの場合も、まさにそのケースです。「あの小癪なブリュッセルの官僚どもめ!」といった憎悪をどうなだめ、国民にとっても他のEU諸国にとってもプラスになる解決にどうやって持っていけるかがカギです。これは他人事ではありません。我々の生活にも直接関わってくる問題です。この危機を理解するひとつのヒントとして申し上げました。

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COMMENTS

1 : 悠々 : March 22, 2013 08:36 AM

私はこの問題で分からないことがあります。
それは預金に対して高額の税金を課すると言うことですが、それは預金残高に対してのか?  それとも預金金利に対してなのか?
ということです。
預金残高に対してなら暴挙というほどの高額課税です。預金利子に対しての課税なら理解できます。
預金残高に対しての課税であるなら他の流動資産についても同じ扱いをしなければ不公平だし、課税額も高額すぎます。
この案を示したEUのお役人は自身がその立場になったら喜んで納税する気構えがあるのでしょうか?

2 : 湖の騎士 : March 22, 2013 05:05 PM

悠々様 コメントありがとうございます。この「強制的課税」は預金残高に対してのものです。暴挙といえますが、ここまで状況を悪化させたキプロス政府にもキプロスの銀行にも責任はあります。EUの官僚もEU各国の首脳も、ここまでこじれるとは思っていなかったのでしょうが、少し事を急ぎすぎたことは確かです。あと2、3日で破綻を免れるどういう妙案が浮かぶのか誰にもわかりません。東京株式市場はキプロスの影響をまともに受けて、22日には300円近く急落しています。EUのエリートたちに、もっと苦労人の味のある解決法を見つけてほしいものです。(ところで貴ブログへのアクセス方法を教えていただきましたが、依然として女の子たちのイラストが出てきて、本文は読めないでいます。あと何度か試してみます)

3 : 泥田の落ち武者 : March 23, 2013 10:21 PM

湖の騎士様、

最近仕事の関係で、EU圏とやり取りをすることが多いので、EUがらみの情報に敏感になっていたりするのですが。

一難去ってまた一難、を地で行くような状況ですね。しかもギリシャやキプロスという、普段なら話題にも上らない国の経済・財政がEU全体を揺さぶるというのは異常、或いは現在のEUは我々が思う以上に脆弱なものかもしれませんね。

ただ、理解出来ないのは、いつまでこの「モグラたたき」を繰り返すのか?なぜ、ヤバいところに予防的措置を打てないかという点です。一つにはドイツがケチくさいことを言って、援助を渋っているからかも知れませんが、どうも戦力の逐次投入になっているような気が。

でもってEUですが、社会的実験としては面白いかもしれませんが、ヨーロッパという、歴史的にも、文化的にも、言語的にも、宗教的にも、人種的にも、経済規模、財政状態、国家規模等においても多様な地域を、ひとまとめにするというのはやはり無理があったのではないでしょうか?私は何となく、EUはある意味での冷戦後世界への幻想の名残り、或いは配られ過ぎた「平和の配当」という気がするのですが、如何でしょう?