View of the World - Masuhiko Hirobuchi

August 12, 2013

イギリス人とメキシコ人 -

昔からイギリス人はいつも沈着冷静で、どんな時でも激情にかられて(つまり頭がカッとなって)行動することが少ない国民だというのが定説になっています。こういう国民性というのはまことに貴重で、感情の振幅がはげしいために国を破滅に導くような世論が生まれにくい、安定感のある国ということになります。この点は日本もお隣の国も大いに見習うべきでしょう。一方アメリカなどでは地理的な近さもあるせいか、メキシコ人というのは感情の起伏がはげしく、すぐに「カッとなる」と見られてきました。これはメキシコ人に対する偏見の産物でしょうが、一般大衆が他国の国民を見る目というのは、どうしてもアバウトになり、多数の人々の意見に左右されるものです。ところがこの「定説」に疑問を抱いたイギリス人の大学教授がいました。今から40年ほど前のことです。彼は「我らイギリス人はそれほど沈着冷静なのか?」と疑ったのです。そこで彼は行動を起こしました。およそ20人くらいのイギリス人をメキシコに連れて行き、逆に同数のメキシコ人をイギリスに連れてきて住まわせました。数か月にわたる観察の結果、教授は世界の定説とは全く逆の結論に到達しました。メキシコに行ったイギリス人は、ちっとも沈着冷静ではなく、すぐにイライラしたり、しばしば頭にカッと血が上るようになりました。一方、暗く寒いイギリスの冬を経験したメキシコ人は、非常に思慮ぶかく内省的になり、何事にも沈着冷静に対処するようになりました。激情にかられてすぐケンカを始めるような人物は皆無だったそうです。教授は、「巷間伝えられている国民性というのは、けっして民族固有のものではなく、多分に風土や気象条件に左右されるものだ」ということを、「ザ・タイムズ(ロンドン・タイムズ)」紙に寄稿しました。これを読んだイギリス人は大笑いしました。「そうか、俺たちもそんなにすぐれているわけではないのだな」ということになったのです。これだけの「実験」をする費用はだれが負担したのか。1年近くも異国で暮らしてもいいという閑人(?)をどうやって集めたのか? その辺の詳しいところまでは読みませんでしたが、この記事は当時かなりの話題になりました。イギリス人を愉快にし、同時にいわれなき汚名(?)を着せられてきたメキシコ人の名誉を救ったことだけは確かです。日本人も韓国人もこれくらいの余裕とユーモア精神をもって、隣国の民を見るくらいの成熟度がほしいものです。暑熱が襲ってくるたびに、この記事のことを思い出します。

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COMMENTS

1 : 悠々 : August 13, 2013 03:37 PM

定説とか、風説とか言うものはあまり信頼できませんね。
数学の定理というのなら数多くの人が証明して居ますから、多分信頼しても大丈夫だろうと思いますが、、、
私もイギリス人の多くは冷静沈着な人柄だと思います。
でもサッカーのファンの中の一部の人達の行動はこの定説からははみ出しています。
イエローペイパーに写真や記事を売る連中のすさまじい行動は目に余ります。これらもイギリス人なんですよね。
日本の北方にある国々の人達も昔は尊敬すべき民族でした。昔の日本人は多くの事柄を彼等から学んだのですから。
日本人も日本独特の美徳も持って居ました、江戸仕草などはその良い例だと思います。
温故知新、今の極東アジアの人達が思い出して欲しい言葉です。

2 : 湖の騎士 : August 14, 2013 10:57 AM

悠々様 貴重なコメントをありがとうございます。「国民性」というものをステレオタイプで捉えていると大きく間違えることがままあります。サッカーのフーリガンたちを見る中流クラスのイギリス人の目は冷たく、「彼らはちっともイギリス的じゃない」と思っています。お隣の国の人たちについては大方の日本人の見方はだいぶ的をはずれています。明治維新のころに李氏朝鮮にやってきたフランス人宣教師や、イギリスの外交官が残した言葉は、かなりの真相を伝えていますが、日本人のほとんどはそういう言葉を知らず、自分たちの一方的思い込みでこの国の人々を見ています。それがさまざまな軋轢のもとになっています。もっと第三者が見た冷徹な目が必要です。