View of the World - Masuhiko Hirobuchi

August 17, 2013

自国の文化を知らないと通訳は務まらない -

先日ある高名な女性の評論家が、外国人記者クラブで会見しました。その中で彼女はとっさに、日本は海の神、山の神というふうにおよそ何にでも神々がいると見る文化だ。ここが中国や韓国と根本的に違うところであり、このことをよくよく相手に説明しないと今後も誤解や摩擦は起きるだろう、と延べました。政治家の靖国神社参拝が間近に迫っている時点での指摘だけに、記者たちの連想はどうしても「死者」への日中韓の理解と認識の違いへと向かったと思います。しかしここでは、そうした認識の違いの奥深さを扱うつもりはありません。「いくら英語ができても、自国の文化への知識と理解がないと通訳は務まらない」と言いたいのです。この評論家は続けて「日本にはヤオヨロズの神々が」と語ったのですが、それまで順調に英語に訳してきた通訳者にとって、この「八百万(ヤオヨロズ)の神々」という言葉は初めて聞く言葉だったようです。とっさに言葉につまり、一瞬の空白が生まれましたが、記者席および評論家自身から助け舟が出て、なんとか急場を切り抜けることができました。おそらく通訳者は学校教育で「ヤオヨロズの神」などという言葉を習わなかったのだと思います。通訳者の名誉のために、あえて会見の日時や評論家の名前はふせてあります。外国留学などでいくら「現地の人間(ネイティブ)」と同じように英語がしゃべれるようになった」と思っていても、日本文化や歴史について知らぬ人には通訳は務まりません。企業や自治体の中には「アメリカに留学した」という触れ込みだけで、「この子は英語ができる」と思い込むお偉方がいます。外国からの訪問客があった場合などには、こうした「元留学生」を通訳として用いている場合がけっこう多いです。日本のお偉方に言いたいのは、「よくよく吟味して通訳者を使うようにしましょう」ということです。場合によってはひとつの誤訳が企業や国の根本を揺るがすこともあるのです。

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COMMENTS

1 : 筆者より : August 19, 2013 11:00 AM

念のための追記です ここにご紹介した女性の評論家というのは元は外国人ですが日本文化に魅せられ、数年前に日本に帰化した人です。会見は日本語で行われました。そのことをもっとはっきりと本文の中で書くべきでした。こういう方の口から「ヤオヨロズノ神々」という言葉が出たこと、その言葉が日本人通訳には分からなかったことで、いろいろなことを考えさせられました。