View of the World - Masuhiko Hirobuchi

August 25, 2013

イチロー 大記録の根底にある「コメント力」 -

ヤンキースのイチロー選手が日米通算で4000本安打という大記録を打ち樹てました。マスコミはこの快挙をこぞって讃えています。日本人のほとんどは老いも若きもこの記録がいかに大変なものかを知っています。ふだんは愛国心とはあまり縁がないような人までが、「日本人として誇りに思う」と言っています。学者や評論家の中には、イチロー選手の「自己管理」「プロ意識」のすばらしさに言及し、「年齢による衰えをカバーするために打法を変えた」と解説する人もいます。しかし、イチローが記録達成後に記者会見で語った言葉とこの壮挙との間に、実は切っても切れない関係があるとまで言い切った人はいないようです。私はこのとてつもない記録と、彼の卓越した「コメント力」との間には、密接な関係があると思ってきました。「4000本ヒットを打ったといっても、他のおよそ8000回は悔しい思いをしてきたのです。そういう時の自分の気持ちとどう対峙するかが問題です」「同僚やファンがあのように喜んでくれるとは想像もしていなかった。半泣きになった」「特別の経験というのは自分が作るものではなくて人が作ってくれるものだと分かった」などの言葉は視聴者を感動させました。現在、野球以外のスポーツを含め、彼ほどのコメント力を持った選手は他にいません。政治家の中にももちろんいません。人を動かすのは数字や愛嬌だけではなく、「コメント力」だという見本を見る思いです。

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COMMENTS

1 : K : August 26, 2013 11:03 PM

彼の話す言葉にはいつも感心させられます。恐らくですが、イチロー選手は言葉が持つ力も、そして怖さも分かっているのではないかと思います。
"8000回の悔しい思い"というフレーズもそうですが、彼はきれい事を余り口にしませんね。
以前彼が「プレッシャーを克服する方法なんて、結局はないんだ」という趣旨のコメントをしたことがあります。"プレッシャーを乗り越えろ"と言う人もいますが、私はイチローのこのセリフを聞いてからは、プレッシャーを感じても克服する事を考えるのではなくて、「彼ほどの人物でも克服出来ないのだし、自分はイチローじゃないのだから、こんな事でもプレッシャーを感じて当然、その中でベストを尽くせばいいのだ」と考える事が出来て随分と楽になった覚えがあります。
耳障りの良い言葉を使える人は大勢いますが、彼のような"本当の事"を話してくれる人は居ないですね。こういう人を頭のいい人と言うのだと思います。

2 : 湖の騎士 : August 27, 2013 11:11 AM

K様 コメントありがとうございます。イチロー選手の言葉の真実に共感しておられるとのこと、心強いかぎりです。ご自身の貴重な「プレッシャー体験」をうかがい、私も気が楽になりました。イチローは「既製品の言葉」を使いませんね。彼が口にするのはすべて自分自身の頭で考えた「オリジナルな言葉」です。多くの選手は「マスコミが普及させた『既成句』」を使います。まことに banal(凡庸)で退屈ですが、イチローの言葉はいつでも意外感があります。日本の子供たちも、ビジネスパーソンも教育者も官僚も政治家も、既成句を使うのをやめて、自分のオリジナル語を使うようになってほしいものです。イチローを参考にして、大勢に順応する風潮が少しでも弱まってくれればと願っています。