View of the World - Masuhiko Hirobuchi

December 13, 2013

米のふらつき外交に激怒するサウジアラビア -

アメリカのオバマ大統領は、シリアのアサド政権が反政府勢力に向けて化学兵器を使えば「レッドラインを越えたことになる」と強く警告していました。「そんなことをすれば、アメリカは反アサドの軍事行動を起こすぞ」という脅しです。しかしアサドはオバマがそんなことをできる度胸がないと見くびって、自国民に対して化学兵器を使用し、多くの人々を虐殺しました。オバマは勇ましい言葉はどこへやら、たちまち腰くだけになり、ロシアのプーチン大統領が提案してきた妥協案に乗ってしまいました。シリアは化学兵器を廃棄し、その管理は外国の勢力が行うというものです。一件おだやかな平和的解決のように見えます。しかしこれは「化学兵器さえ用いなければ、自国の人民をいくら殺してもよい」というシグナルをアサドに送ったに等しいと見る見方も有力なのです。アメリカはずっと協力的だったイスラエル、サウジアラビア、トルコなどの安全を考えず、シリア・ロシアに屈してしまった、という見方が広まっています。いわば「仲間を裏切った」わけです。「アメリカは何にも分かっていない」「裏切られた」という気持ちを、最も強く抱いているのがサウジアラビアです。シリアの背後にはイランがいます。ロシアもいます。イランは核兵器の開発を進めていると見られ、これが完成すれば、中東の軍事情勢ひいては世界の勢力図は一変すると見られてきました。各国はなんとか核兵器の開発を阻止しようと、イランに対して厳しい経済制裁を科してきました。これが功を奏してイランの経済はガタガタになり、国力は疲弊していました。ところが、イランは核開発の現状を国際原子力機関が査察することに同意しました。これをロシア以下は歓迎し、アメリカもまたこの発表を本物と信じて経済制裁を緩和することに同調しました。サウジやイスラエルにとっては、イランはこんな協定などを守るはずがなく、アメリカはまたしても騙されている、と映ります。「歴史的な誤りだ」とまでイスラエルの首相は言っています。今までの同志を裏切ってやすやすとシリア、イランを後押しするアメリカは許せないという強い反米感情が中東に満ちています。サウジは、報復措置として、石油価格を暴落させることを考えていると見られています。自国にとって最も大切な収入源である石油を暴落させるなどとはとんでもない。一体どういうメリットがあり、それによってアメリカ、ロシア、シリア、イランはどういう打撃を蒙るというのか? とお思いでしょうが、もしこの戦略が発動されれば、石油の輸入国にとっては一大朗報となり、イラン、ロシア、アメリカにとっては大きな打撃となることは必定です。なぜなのか? この点に絞った記事をあらためて書かせていただきます。

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COMMENTS

1 : 泥田の落ち武者 : December 15, 2013 04:28 AM

湖の騎士様、

私にとって不可思議なのは、オバマ政権の第1期目、特に後半はクリントン嫁が国務長官として対外政策を取り仕切り、民主党政権としては比較的まともな対中政策を行っていたのに、2期目になってからは、内政、外交ともガタガタになったことです。

しかもオバマは内政、外交とも、表立った発言を行わない。彼にとって外交はケリー任せ、内政は予算問題も”オバマケア”以外は民主党任せ、にしか見えません。中共の防空識別圏問題も、彼自身の意見を一度も聞いた記憶がありません。全て国務省、ペンタゴン、副大統領任せです。

安部総理はASEAN各国を訪問し、昨日はASEAN10か国を日本に集め、対中政策でも、国際法・国際ルールの順守を求める、という点で合意を取り付けました。腐れメディアはこの業績は無視して、秘密保持法案にケチをつけ続けるでしょうが、国際的には日本のアジアにおけるプレゼンスは間違いなく向上しています。

まあ、オバマは黒人という”色物”という点と、喋りがうまいという点だけで大統領になったようなものですから、私は多くをそもそも期待していませんでした。しかし、中東の安定と米国のコミットメント、さらには西大平洋の覇権という、米国の国益と存在意義という、”核心的利益”に、合衆国大統領自身が積極的にコミットしないという態度を見せたことに、正直私は驚愕しました。

これで、オバマはカーター以下の大統領という評価が、歴史上定まったと思いますが、各種メディアが述べているように、彼の任期はあと3年もあります。

既にしてレームダックとなった大統領を、あと3年も面倒を見なければいけない西側諸国と米国は、とんでもない政治的負債を抱えることになったと思います。そしてこの負債は、中東の親米政権にとっても大きな課題としてのしかかってくると思います。

先生のオバマ政権への評価と、今後の国際社会への影響につきましても、ご見解を頂戴できれば幸いです。

2 : 湖の騎士 : December 15, 2013 09:37 PM

泥田の落ち武者様 大量のジャンクコメントを物ともせず、貴重なご意見をありがとうございます。たしかに仰せのとおり、ヒラリー・クリントンが国務長官の時は、アメリカの対中国政策は割とまともでした。それが2期目になってかくも無様に定見なき外交に落ちぶれたというのは、もともとオバマに外交についての定見も哲学もなかったのでしょう。アメリカの政治システムでは、いかに無能の大統領でも、よほどの失態(たとえばウォーターゲート事件のような)がないかぎり途中で取り替えることはできません。あと3年もオバマの率いるアメリカが続くというのは、本当に恐ろしいことです。これで中東や朝鮮半島で軍事的暴発が起きた場合に、アメリカはなんら有効な行動を取れないと思うと慄然とします。そういう恐怖を考えもせず、秘密保護法叩きにのみ焦点を合わせている日本のマスコミの「感度」が心配です。オバマへの評価は、政権発足時に古森義久氏が「オバマ大統領と日本沈没」(ビジネス社)という本を書いています。当時は「心配のしすぎかな?」と思った人もいたでしょうが、今では彼の先見性に共感を覚える人が多いと思います。私のオバマ観は、古森氏とほぼ同じです。