View of the World - Masuhiko Hirobuchi

February 26, 2014

『アンネの日記』攻撃者は右翼か左翼か? -

東京の図書館で、世界で広く読まれているユダヤ人少女アンネ・フランクが綴った「日記」の数ページが破かれるという忌まわしい事件が起きました。これについて、アメリカにあるユダヤ人の人権保護団体サイモン・ヴィーゼンタール・センターはさっそく「遺憾」の意を表明しました。果たしてどこの何者が、どういう目的でこのような蛮行に及んだのか、今のところまったく分かっていません。一日も早く犯人を挙げてもらいたいものですが、これに絡んで気になる報道が行われています。この暴挙は「日本の右傾化と関係がある」とにおわせる記事が、27日付け(26日発売)のタブロイド版夕刊紙に掲載されました。こういうことをするのは、ヒトラーやナチス・ドイツに共感を覚え、ユダヤ人に嫌悪感を抱く「右翼」に違いないという見方が根底にある記事です。いかにももっともらしく聞こえる見方です。無邪気な大衆は、えてしてこういう見方に乗せられるものです。しかし見る角度をちょっと変えると、まったく違った犯人像が浮かんできます。それは「犯人は左翼ではないか?」という見方です。日本のメディアの大多数は、中東紛争について「イスラエル悪玉」「アラブは善良な被害者」という姿勢を取りつづけてきました。これはバランスの取れた見方ではない、世界の常識とは違っているーーということは、有識者の間ではほぼ一致した意見です。しかし一般の読者や視聴者は、どうしても「イスラエル(ユダヤ)は暴力(軍事力)を用いてパレスティナ人を含むアラブ人を弾圧している」という見方に傾斜しがちです。こうした見方は、反米感情と結びつきます。「ユダヤ人を庇いすぎるアメリカが悪い」という感情です。冷戦のさなかには反米感情は「親ソ連・親左翼感情」とほぼ一体になっていました。日本の左翼はおおむね「反イスラエル」でした。今でもこの図式は変わっていません。こうした「メディアが作り上げた精神的環境」の中で生きる人の中に、「ユダヤ人は絶対によくない。日本人はアンネ・フランクに同情しすぎている。こういう本を多くの人に読ませるのはよくない」と思い込む人間が出てきても不思議ではありません。今回の事件の犯人は、ナチ的な(つまり劣等民族であるユダヤ人を抹消せねばならぬと思い込むような)極右なのか、それとも「極左」なのか? あるいはそのいずれでもなくて、単に失恋や失職への「腹いせ」なのか? 今のところはなにも分かっていません。ただ「日本に右傾化のムードが浸透してきているから、こういう犯行が起きたのだ」とする見方は、あまりに短絡的だとだけ申し上げたいと思います。同じ現象を見ても、まったく違う犯人像が浮かんできます。多角的に物事を見たいものです。

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